ゴルフ場ルポ:芝管理にバロネス無人機導入/芝管理・緑化資機材特集

ベアズパウジャパンカントリークラブ(滋賀県甲賀市)は、ジャック・ニクラウス氏が設計した18ホールのゴルフ場で、2000年にオープンした。コースは約7000ヤード、高低差が最大15m、フェアウエイ幅は平均50ヤードと広く、池とバンカーを巧みに配置した戦略的なレイアウトが特徴。豪快さと正確で緻密なプレーが求められるコースで、県外からも京都や大阪を中心に多くのゴルファーが訪れる。(【ゴルフ場データ】▽総面積=127万3300平方m▽グリーン=1万3000平方m▽ティーイングエリア=1万平方m▽フェアウエイ=14万平方m▽ラフ=33万3000平方m▽バンカー=55カ所〈7600平方m〉)
同クラブは、旧琵琶湖層に位置し、掘れば水が湧く特性があり、造成時には防水シートを使わずに池を形成できた。一方で排水には課題が多く、開業当初は乗用草刈機が芝の上に乗れないほど軟弱な場所もあったという。現在の良好な水はけは、ヘッドグリーンキーパーの熊倉興和氏が考案した特許工法「壁面暗渠排水TPドレーン」を長年にわたり施してきた成果だ。
このコースを日々支えているのが、熊倉氏を中心とした管理スタッフである。正・契約合わせて9人の社員に加え、パートタイマーは、早朝のグリーン刈りやバンカー均しを担う4人、獣害柵周辺の刈込スタッフが1人だ。ちなみに堆肥を使用している兼ね合いで、獣害柵の周辺はミミズが多く、それを餌にするイノシシがしばしば侵入する。そこで獣害柵内外に各50cm幅の防草シートを展張し、雑草の繁茂を抑えることでイノシシの侵入を防いでいる。
早朝6~9時のオープン前作業は、グリーン刈りとバンカー均しが中心だ。午前中はプレーが混み合うため、作業は9時までに終える必要がある。午後は14時半から18時までが通常の管理作業の時間帯で、プレーの状況を見ながら作業に入る。限られた時間の中で18ホールを維持するには、効率的なシフト運用が求められる。
各エリアの管理には、それぞれに適した機械と手法がある。グリーンとグリーンカラーの境界はエッジカッターで整え、ティーイングエリアはリールモアで均一に刈り込む。フェアウエイは芝刈機による細かな刈り込みが中心。ラフはロータリーモアや刈払機で刈り込み、切り株は破砕して機械の損傷を防ぐ。バンカーは平面をレーキ、斜面を手均しで仕上げ、排水マットで雨裂を防ぐ。どれも地道な作業だがコースを安定して維持するためには欠かせない。そして、これらの作業を限られた人員でこなすのは容易ではない。
18時から翌6時までの12時間は就業時間外だ。夜間にスタッフを配置すれば時間外手当が発生し、労働基準法上の制約や労災リスクも避けられない。熊倉氏は「芝管理には、この空白時間をどう活用するかが課題だった」と話す。芝生は日々成長し、管理の手を止めればすぐに品質に影響が出る。限られた時間の中で、どこに人の力を集中させるかが常に問われてきた。その解決策として、同クラブは2025年3月に無人芝刈機(バロネス・無人5連リールモアULM272)2台を導入した。そのことにより、作業効率と芝の品質が大きく向上した。従来は有人芝刈機による作業が中心で、各ホール週1回の刈り込みを基本として実施していたという。しかし、無人機を活用することで、これまで手つかずだった1日12時間の空白時間を作業時間として有効に使えるようになり、フェアウエイの刈り込み回数は週2~3回増加した。熊倉氏は「刈り込みの回数を増やすことで、芝のクオリティーが向上した」と述べ、無人化による作業頻度の向上が芝の状態安定に直結していると強調する。無人機は決められた時間に確実に稼働できるため、安定した管理が可能になった。刈り込み頻度が増えたことで芝の生育が均一になり、フェアウエイ全体のコンディションが整いやすくなった点も大きな成果だという。
バロネスを選んだ理由について、同氏は刃の固さと切れ味の良さをあげた。芝草は切れ味の良い刃で刈るほど品質が高まり、スポーツターフとしての仕上がりにも大きく影響するため、刃の性能は機械選びの重要な要素だという。
高い切断性能を持つ刃を備えた同機を選ぶことで、無人化による作業効率の向上と、芝そのものの品質向上を同時に実現した。加えて、環境負荷の低減にもつながったという。熊倉氏は「持続可能な芝管理は、自然に逆らわないことが基本」だと話す。「米ぬかなどを使用し、細かく破砕された芝草が土壌微生物によって分解され、再び肥料として循環することで、品質の良い芝生に仕上がる。必要以上の化学肥料や農薬使用を控えるよう気を付けている」。
無人機を導入してから、来場者からは「いつ行っても芝生はいいし、綺麗だ」「パブリックコースなのにメンバーシップの名門コース並みのメンテナンスの良さが魅力的」などの声が寄せられ、入場者数は増加したという。フェアウエイの品質向上は、プレー料金の値上げにもつながり、経営面でも好影響が出ている。無人機による細かな刈り込みは、芝の生育リズムに合わせた管理を可能にし、コース全体の質を底上げした。
また、練習場などの余剰地にはロボット芝刈機を配置した。日中のスタッフはより専門性の高い作業に集中できるようになった。人が担うべき繊細な工程と、機械が得意とする反復作業を分担することで、限られた人員でも効率的にコースを維持できる体制が整った。
今年3月、クラブの立ち上げからコース管理全般を担ってきた熊倉氏は退職した。「ゴルフ場はアンフラット(傾斜)とライン(曲線)で構成されている。その品質は頻繁な刈り込みでしか保たれない」。淡々とした言葉だが、その考え方は今後も現場の基準として受け継がれていく。
【主な使用機械】
▽バロネス12台▽SHIBAURA10台―など









