各社の対応:営農全体をサポート/栃木県特集

㈱関東甲信クボタ(冠康夫社長)の2025年は、過去最高だった前年をさらに上回る売上げを更新した。「トラクタ、コンバイン、田植機をはじめ、インプルメントなどの関連商品も売上げを増やし、全体的にバランスよく伸長した」と長嶋純第1営業部長は振り返った。
現在、同社栃木管内では、社内の構造改革が進んでいる。昨年11月に、県内の3営業所(黒磯、大田原、西那須野)を統合する形で那須野営業所が誕生した。冠社長が進める「整備文化の深化」を実践するべく、大型農機対応の那須サービスセンターも併設。11月14日にはオープン記念展示会を開催し、担い手農家を中心に、シーズン前の先行受注に拍車をかけた。
今年1月に長嶋部長の後任として就任した鵜澤宗隆第2営業部長は「那須野営業所の開設を機にチーム営業制を進めている。これまでは、営業担当者が個人としてお客様との関係をつくってきたが、これからは営業所全体で、全てのお客様に対応していく」と説明。全国のクボタ販売店の中でも先行した取り組みだという。「今年に入って本格的にチーム営業制がスタートした。長年のやり方を変えて軌道に乗せるまでには1年くらいかかるだろう。今は皆で試行錯誤しながら取り組んでいるところ」と鵜澤部長。これにより、顧客の要望へのより高度な対応と社員の負担軽減の両立を目指す。
チーム営業制と併せて今年の重点方針にあげるのが、顧客への適正な商品提案の強化だ。顧客データと現地訪問を組み合わせて情報を収集し、顧客それぞれの営農状況や将来意向を把握。ソフト面も含め、ニーズに沿った提案を進めていく。
これに伴い、展示会やイベントの内容も変化している。スマート農業セミナーやKSASを中心とした展示会など、農機販売に留まらない営農提案型のイベントを増やしていく方向。経営全体を視野に入れたサポートを進めることで、顧客とのさらなる関係強化を図り、最終的には農機販売へとつなげていきたいという。
ヤンマーアグリジャパン㈱関東甲信越支社(杉山靖彦支社長)栃木ブロックの昨年の状況について、黒内裕規エリアマネージャーは「2024年からの米価高騰の影響もあり、売上げは計画を達成した。特に大型機が好調だった」と振り返った。2025年は前年の反動を懸念したが、米価の見通しが出て以降は引き合いが増え、主要機であるトラクタ、コンバイン、田植機ともに、大型農機が需要を集めた。
田植機は8条、コンバインは6条が順調に推移。3条以下の小型機は少なくなっている。一方で、トラクタは50PS前後が好調だった。「管理用トラクタの中小型レンジのトレンドが、従来の20~30PSから50PSに変わった」とみる。
現在、力を入れているのが直播栽培技術の提案だ。「県内で直播栽培を行っている農家は少ないが、省力化への関心は高い」と黒内マネージャー。昨年7月に開催した展示会「スマートアグリフェアin栃木」では、初となる直播栽培の講演会を実施。多くの来場者で賑わい、新たな技術への関心の高さをうかがわせた。今後は、直進アシスト仕様のトラクタにスリップローラーシーダーなどの直播関連機器を装着した実演を積極的に行い、さらなるアピールに力を入れる。
自動操舵や直進アシストは、ここ数年で急速に標準化が進んでいる。「大型機に関しては、特に増加傾向にある。以前に比べ、導入しやすい価格帯となり、農機の更新と同時に購入する農家が増えたことが普及に弾みをつけている」と黒内マネージャー。従来機に後付けで導入する農家も増えてきているという。
営業活動については引き続き訪問に力を入れ、サービス事業の受注拡大を図る。「米価高騰の影響はメンテナンスにも及んでいる。これまであまり関心がなかったお客様も、整備点検に前向きになっている」という。
また同社では、スタッフの知識や経験で顧客対応に差が出ないよう、社内でのコミュニケーションを重視。支店長がスタッフらと対話し、早期の提案ができるよう体制づくりを行っている。
農業人口の減少、農家の大規模化、農業のスマート化、受託事業者の増加など、農業を巡る状況は変化の時代に突入している。「我々もその変化についていけるよう、日々、学ぶ姿勢を持ち続ける必要がある」と黒内マネージャーはいう。先を見据えた取り組みを通じて、地域農業を支えていきたい考えだ。
㈱ISEKI Japan関東甲信越カンパニー(瀧澤雅彦社長)栃木営業部の2025年度の動向は、ほとんどの機種で前年を超える販売台数を記録。農家の設備投資意欲に支えられ、金額的にも同様に、前年を超える伸長となった。
このうち主要3機種ではトラクタとコンバインが好調で、販売台数は想定を超える実績となった。今井哲朗理事栃木営業部部長は「昨年は、価格訴求型の低コスト農業応援機種が売上げ台数の半分以上を占めた。その一方で、高機能型のBFトラクタやFMコンバインなども大きく伸びて、全体の金額を押し上げた。これまで、訪問活動や実演推進を愚直に徹底してきた結果、投資意欲が高まったお客様の心をつかむことができたのではないか」と振り返った。
今年は、6月にトラクタBJシリーズ、12月にコンバインHJシリーズの新型機が発売される。これを受け、長年モデルチェンジを待ちわびていた顧客からの受注が順調に進んでいる。「特にBJシリーズは、従来のTJVシリーズと比べて乗り心地が大幅に改善されている。製品が入荷してくる下期に向けて各馬力の試乗機をそろえ、できるだけ多くのお客様に試乗していただけるよう、キャラバン隊の編成を検討したい」と力を込める。
さらに、スマート農機による省力化をねらい、ドローンの販売も強化していく構えだ。3月に栃木事務所で開催した大規模展示会では、㈱NTT e―Drone Technologyによるデモ飛行を行い、好評を博した。そこで同社でも使用者免許を取得し、春の繁忙期に向けて実演を推進していく。
アフターサービスにおいても、定期整備を隔年から毎年に増やす顧客が出てくるなど、米価上昇の恩恵が及んでいる。「資金的に余裕が出てきた大規模農家は、今後のコスト削減に向けて、ロボットトラクタなどの高機能スマート農機の導入を検討し始めているようだ」と今井部長。このチャンスを逃さぬよう、栃木営業部一丸となって、さらなる営業活動を進めていく。
高田酪農機㈱(高田浩一社長)の2025年度実績は、概ね前年比120%程度と好調に推移した。顧客の中心は畜産農家だが、稲作との兼業農家も多いため、米価上昇の影響が少なからずあったという。
3月13、14日に宇都宮本社で開催した恒例の春展示会では、値上げ前に購入し在庫していたトラクタやトレーラを超特価の目玉商品として出品し、開催前に完売。展示会当日は、社員との交流や情報を求め、予想以上の来場者が詰めかけた。
一方で、畜産業は厳しい状況が続いている。牛は繁殖から生産までに長い時間を要するため、3年前の政策等が現在の市場に影響する。その流れから2026年をみると、国策で乳牛への種付けを減らし和牛交配を促す補助が行われた結果、乳牛の親牛が減少し、酪農の収益環境は厳しくなることが予想される。
そのため、高田社長も相応の覚悟をしていたが、令和7年度補正予算による畜産クラスター事業の発表で状況が変わってきた。同事業の中で注目しているのが、従来とは別に新しく設けられた持続性・社会的価値向上対策。成果目標の要件が緩められ、増産ではなく経営維持や社会的価値の向上に向けた支援がなされる。「新しい事業なので、情報をいち早くつかんだ地域や事業者が有利になる可能性が高い。付き合いのあるメーカーや団体など業界ネットワークを駆使して制度の細部を把握し、顧客に情報提供することで、販売機会を広げたい」と、新たな商機に期待をかける。2月上旬から3月中旬にかけて行われた同事業の公募に絡み、同社では作業機など78台を販売。事業関連の受注としては、過去最高を記録した。
「畜産は10年前後の周期で好不況を繰り返す産業」と高田社長。厳しい時期を乗り切り、次の好況期まで生き残ることが経営の要となる。そのために、市場や政策の動きを読み、他社より少しでも先んじて行動することが同社の戦略だ。今後も、高い感度と広い業界ネットワークで得た「生の情報」を武器に、販売シェアの拡大をねらう。









