各社の動き:稲作関連中心に好調/2026年春北海道特集

(株)菱農(筒井鉄也社長)は、昨年の米の状況について「米の出来が良く、価格も高くて、水稲農家は実入りが良かった」と振り返った。コンバインがまとめて売れることがあり、商売への好影響もあった。稲作農家の投資意欲は旺盛だと話す。
「50万円税金が増えたくらいなら大したことはないが、おそらくトラクタ1台買えるくらい税金があがっている」と筒井社長。今までは農閑期も一生懸命営業しないといけないのが通例だったが、今年は受注をたくさん抱えた状態で年を越すことができた。成約率も高くなった。「物がなくなり、今欲しいって言わないと確保できないよなんてセールストークが昔はあったけど、今は現実の話になってしまった。他と取り合い状態」というのが現状である。近隣農協の今年の概算金も昨年同程度のようで、楽観的な農家が多いのではないかとの見方を示している。また、米価が安定していることから、面積の拡大や転作から稲作に戻す農家も出てきている。規模拡大や温暖化によって、主流だった寒さに強い成形ポット苗から本州で一般的なマット式に変える動きも出てきている。「ポット苗式田植機を使っていると、苗箱が多くなってしまう。マットにすれば育苗ハウスも少なくて済む」。一気に加速しているわけではないものの、少しずつ出てきている。「昔は3年に1度の冷害は北海道では常識だった。ここ10年くらいは冷害がない。そうなると、これまで30町やっていた農家が35町、40町と拡大していくと、全部ポット苗でやるには難しくなる」(筒井社長)。 省力化で直播を少し取り入れる動きも出ている。同社のある北空知は寒冷地のため動きとしては少ないが、それでも扱っているポット苗式田植機は一時期ほどの勢いはなくなったという。
(株)砂田興産(砂田健児社長)の昨年実績は微増。「機械の納入量はそれほど変わっていない。補助事業で上がって、翌年に戻るなどは時々ある」と話す。これまでは三菱製品の取り扱いとともに、クラースのトラクタなどの輸入製品も扱っていたが、ロシアのウクライナ侵攻以降、ユーロ高で高額化し、輸入トラクタは全く仕入れられていない。「輸入作業機はトラクタより台数は出ているが、欧州製品は前ほど出なくなった」と砂田社長。取り扱う中国製CHCNAVの自動操舵システムは、過去一番の売れ行きで、水田はもちろん、畑作でも秋口に税金対策のための駆け込み購入が目立った。「寒い時期に取り付けが殺到して大変だった」と振り返る。メーカー販社の工場で取り付けすることもあった。CHCNAVの取り扱いは、国内参入初年から。知り合いの販売店からの紹介だった。「当初、中国製と聞いて、拒否反応が出た。国内製品は高額で、なくても仕事はできる。でも、いずれスマート農業みたいな時代が来ると思って、会社で実演機を1台買ってみた。すると国内製品と遜色ない。ほどなく北海道のユーチューバーが紹介してくれて、問い合わせが増えた。これは売れると思って、ここから1時間圏内の近隣エリアの専属販売契約をした」とこれまでの経緯を明かした。
また、砂田社長は昨年、北海道農機商組の理事長に就任。「購買事業は前年比で117%。それでも、全国では一番少ない。北海道向けの商品がこれまであまりなかった。そんな慣習もあって良い製品を紹介してもなかなか浸透しない。仕組みを変えて底上げを図りたい」と意気込む。
(株)北海道クボタ(道信和彦社長)の昨年の動向は、田植機、コンバインは前年比、計画比ともに大きく伸長した。トラクタは、ほぼ計画達成となった。稲作機械を中心に関連商品も好調だった。「一昨年から『スマート農業は北海道クボタ』というスローガンを掲げている。農業現場に携わる社員の皆さんの活動のお陰もあり、メーカーから発売された製品ラインアップも揃ってきて、田植機、コンバイン、トラクタ、ドローン、ワタラス等のスマート農機の比率が高まっている」と道信社長は振り返った。
ヤンマーアグリジャパン(株)北海道支社(佐藤学支社長)の2025年度の実績は、計画を上回る見込みとなった。佐藤支社長は稲作の好調が業績を押し上げたことを明かし、昨春から需要は旺盛であった。主要3機種の出荷が堅調。その中でも省力化や低コストなど、自動化性能を高めたアシスト仕様の評判が良く、これらは今後も増加していくとの見方だ。一方で畑作地域は作物の収穫量の減少、天候不良による品質低下で農家の機械投資控えが多かった。
酪農は近年長らく厳しかったものの、ようやく底を打ち、回復傾向にある。佐藤支社長は「酪農機械は一品一品が高額。積極的に機械投資をする農家はまだ一部だが、以前に比べれば事業申請が増えてきた。農家側はまだ慎重。申請を行う農協側も慎重で、完全な回復までにはしばらく時間がかかるだろう」と話す。
主要3機種は、いずれも好調に推移。ジョンディアトラクタも水田地区を中心に伸長。「稲作地帯も転作が多い。ジョンディア製大型機械を購入するケースが増えている。また、規模拡大傾向も続いており、高馬力機械への更新需要もある」(佐藤支社長)。一方で畑作酪農地区のトラクタ需要は伸び悩んだ。
その他、ICT関連のドローンや自動操舵などは活況だった。自走フォーレージハーベスタや自走スプレヤー、モアコン、ラウンドベーラなど酪農や畑作関連の大型機械は低迷した。
実演については、道内各支店に実演機をおろし、購入目的の農家を中心に各拠点で個別に実施。稲作地帯は実演機をおろせば売れる状態が続いたが、畑作・酪農地帯の動きは鈍かった。
(株)ISEKI Japan北海道カンパニー(土屋勝社長)の昨年実績は増収増益となった。契約数はそれ以上だったが、物が揃わず受注残として持ち越した。
主要3機種の動向は、水田向けの田植機やコンバインは総じて好調ながら、トラクタは横ばい。田植機、コンバインの伸びに比べるとやや落ち着いた結果となった。輸入製品も畑作農家中心に販売する性質上、横ばいとなっている。「為替の弱含みで仕入れ価格も上がり、そのため販売価格も上げざるをえない。畑作農家さんも購入を先延ばしにしているようだ」と土屋社長は話している。
昨年の作柄は干ばつで畑作が打撃を受け、水田の方は猛暑でやや減収傾向ながら、それほど大きな影響はなかった。「道東の畑作地帯は少雨で水不足になり、ジャガイモやタマネギが小ぶり傾向だったり、少雨の後に豪雨があって奇形が出たりした。ジャガイモが最も影響が出たのではないか」とのこと。ただ、価格は良かったので、収入が大幅減となったわけではなさそうだ。畑作や酪農・畜産農家は横ばい。稲作農家は米価の上昇により農機の投資意欲も高まっており、西部の稲作地帯は前年比130~140%と大幅に回復した。土屋社長は「これまで道東の畑作、酪畜に稲作農家の低迷をカバーしている状況が続いていたが、一昨年の途中から逆転してきている」と言う。
展示会は昨秋は道内10数カ所で開催し、水田地帯、畑作酪農地帯それぞれに感触は悪くなかったという。「水田地帯では、滞在時間も長く、熱心に確認されていて、購入しようという熱気に溢れていた。道東の展示会ではそれなりに契約も取れていた」と話す。春は3月に5カ所ほどで行い、稲作地域は昨年の勢いが継続するものとの見方である。しかし、物がないことでのやりにくさは当然あるようだ。「納期が先になってしまうという話をすると、やはり動きが悪くなる。今まではこういう経験がなかった。在庫が残っているから、これを売らないといけないということが多かった。輸入作業機はリードタイムが長い分、今、契約しなければ来年分はありませんよ、ということで提案していた。国産機械も同じような状況になっている」と話す。
実演は「機械が売れてしまい少なかったので、やりたくてもできないことが多かった」と北川範高常務取締役営業本部長は振り返る。それでも、ロボットトラクタやロールベーラなど畑作、酪畜のエリアを勢いづかせるような実演を中心に実施し、成果も出すことができた。「道東は主体的に動いていかないと実績につながらなかった。ベーラはトラクタと一緒に実演をして効果もあった」と土屋社長は述べた。
エム・エス・ケー農業機械(株)(高畑年伸社長)は、米価の上昇による活況は感じつつも、水田農家の顧客が全体の1割程度のため、大きな機械需要には結びつかなかった。顧客は6割が畜産、3割が畑作、1割が水田の生産者である。同社取締役執行役員営業本部の中村洋営業本部長は「十勝を中心とした畑作作物の出来が良くなかった。酪農・畜産は乳価の上昇の影響は年度の後半に出てくるため、中盤が過ぎるまでは厳しい状況が続いた」と述べている。
しかし、今年に入りクラスター事業の要件のハードルが下がったことで、トラクタの見積もり依頼が殺到している。中村本部長は「2025年度は反映されないが、2026年にかけて大きく影響してくるだろう。トラクタだけでなく、自走式ハーベスタも同様で申し込みが増えている。投資を控えていた生産者が一気に申し込んできている状況。酪農・畜産に関わる製品は回復していくのではないか」との見方を示した。









