熊本い草の現況とこれから/熊本県特集

2025年に開催された大阪・関西万博では、農林水産省などが「RELAY THE FOOD~未来につなぐ食と風土~」を展開し、国税庁や文化庁と連携して日本の食と農林水産業の魅力を紹介した。会場ではブース展示や日替わりのステージイベントが行われ、なかでも床の間で記念撮影ができる「い草」ブースが来場者の注目を集めた。畳の床の間が会場に現れたインパクトは大きく、多くの来場者がスマートフォンを向けて撮影していた。このブースを政府委託事業として担当したのは熊本県八代市のJA、八代地域農業協同組合い業センターだ。担当者によると、国産い草と畳の魅力を伝えるプロモーションの一環として出展したという。い草の香りを体験できるコーナーも設けられ、来場者からは「畳の匂いがする」と驚きの声があがった。畳の原料であることを考えれば当然だが、生活様式の変化で和室に触れる機会が少ない若い世代にとって、原料の存在まで意識が及ばないのは無理もない。畳の原料となるい草は、1980年代には熊本のほか福岡、岡山、広島、高知などでも栽培されていたが、2023年以降は熊本県のみとなった(熊本県農林水産部生産経営局農産園芸課調べ)。ピーク時に8000ha以上あった作付面積も、2024年には319・2haまで減少している。1980年代に八代市と八代郡に計7カ所あった集荷所兼入札所は、1995年に1カ所へ統合された。また、クボタが製造していた、い草収穫機は2008年に生産終了。2017年に生産者らの要望を受けてリニューアル販売されたものの、3年間の限定販売に留まった。2025年8月10日には、熊本県を記録的な大雨が襲い、い草農家にも甚大な被害が出た。い草は収穫後、約1年かけて畳表へ加工されるが、倉庫に保管していた原料が浸水し、使用不可能となったケースが相次いだ。原料不足の影響で、畳1枚当たりの単価は前年よりおよそ300~500円上昇している。災害で被害を受けた農機の修理はほぼ終わり、今年の栽培も順調に進んでいるという。米価が上向いていることも追い風となり、生産者の間には明るさが戻りつつある。今年2月には八代地域農業協同組合と熊本県い業生産販売振興協会が主催する「第51回熊本県い業大会」が開かれ、い草・い製品の品評会での表彰式や入賞品の展示なども行われ、会場には活気があったという。い業センターの担当者は「離農や作物転換で生産者は減少しているうえ、外国産や化学繊維など新素材の畳表も増えている。だからこそ、この単価を維持しつつ、高品質で安心・安全な国産畳表の価値を発信し、未来へつなげたい。海外輸出も各団体と協力して進めている」と語る。一方で、植え付けや収穫、畳表の製造など、出荷までの各工程で必要となる機械の確保についても、行政と連携しながらメーカーへの働きかけを続けているという。国産い草をめぐる今後の動向が注目される。









