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令和8年3月9日発行 第3590号 掲載

都市近郊園芸を視察/全国野菜園芸技術研究会がトマト・キュウリサミット開催

 全国野菜園芸技術研究会(渋谷忠宏会長)とトマト・キュウリサミット実行委員会は2月27日、神奈川県下で、6年ぶりに「トマト・キュウリサミット9・5」を開催した。「いろいろな経験談と失敗談の中から夢を叶えるヒントを見つけよう」をテーマに、午前中は県内の施設園芸農家のハウスをめぐり、栽培手法や営農方針を直接見聞きし、午後はJA全農営農・技術センターでハウス栽培における悩みや技術課題について話し合った。
 午前の視察会では、井出農園(藤沢市)、(株)湘南きゅうり園(平塚市)、臼井園芸(同)を回り、その実態を見学。JA全農営農・技術センターで行った車座会では、JA全農耕種資材部園芸資材課グリーンハウス推進室の野尻重利上席技術主管を司会進行役とし、大山寛(栃木県・トマト農家)、山口仁司(佐賀県・キュウリ農家)の2氏をコメンテーターに、視察会でめぐった農園の代表者、井出康平、古川貴博、臼井智貴の3氏をプレゼンターに迎え、将来の夢・目標、乗り越えるべき課題、農業経営の要点などについて会場参加者とともに話し合った。
 車座会の前には、同センターの関係者が施設園芸関連で進めている研究概要を紹介し、キュウリのLED補光試験、バイオスティミュラントの取り組み、植物由来の新規殺菌剤「プロブラッド液剤」を説明、同会でそれぞれの普及浸透に注力しているとアピールした。
 車座会では、自己紹介を兼ね、各々の営農概要を紹介した。大山氏は、サンファーム・オオヤマ(有)の取締役で、現在は子息が代表者。2004年から平均収量の2倍となる25トンを目指すドリーム25プロジェクトを開始し高軒高ハウス、ハイワイヤー誘引栽培、長期多段どり栽培、セル成形苗直接定植、肥効調節管理、ヒートポンプ、CO2施用、統合環境制御、細霧装置などの技術導入によって2012年産で単収30トンをクリア。また、大山氏自身、ゆめファーム全農とちぎの技術主管を務め、可販果量40トンを達成。これまでの経験を踏まえ、仲間との切磋琢磨、地域との一体感が成長のキーポイントになることを強調した。
 山口氏は、ハウス4棟、総面積86アールでキュウリ栽培を進めており、単収は40トン。キュウリに適した環境づくりとして、統合環境制御によるハウス内環境管理、管理の自動化、日射比例養液土耕栽培、株元CO2施用、外気導入暖房機によるCO2ロスの少ない環境コントロール、太陽熱による土壌消毒、定植床への生モミガラ散布などの技術を導入してきた。同氏は、地元・佐賀は地域的条件が悪い分、環境制御の技術は進んでいると指摘した。
 視察会で訪ねた各プレゼンターの経営概要は次の通り。
 ▽井出農園(井出康平氏)=約70アールの施設でトマト50アール、イチゴ20アールを栽培。ほかに約2・5ヘクタールの露地栽培。直売、体験農場を組み合わせた経営で、市場出荷・量販店への供給が50~60%、収穫体験や直売、マルシェで消費者直接供給が40~50%のミックス型。行きつけよりも近い存在の「かかりつけ農家」をコンセプトに地域密着型農業を展開。今後は、現在の組み合わせを継続し、観光農園、企業との連携、インバウンド対応などで存在する価値のある都市農業を目指す。
 ▽(株)湘南きゅうり園(吉川貴博氏)=80アールの施設キュウリ専作で、作型は半促成(1月中旬定植~7月上旬)および抑制(8月盆明け定植~12月中旬)。生産技術に注力し多数の栽培表彰を受けた前代表(父)の栽培姿勢(現場第一・基本に忠実)は継承しつつ、仕事量を減らし、家庭を大切にしたいと考えている。今後は、販売・事務の改革を進めて、仲良しグループ(父がパート従業員をこのように表現)から考え行動するチームをつくりたい。経営理念は「誇れるチームでお客様に誇れるキュウリを提供する」。代表の仕事は再現情報の収集・分析・反映、仕組みと流れ作り、予備戦力と考えている。
 ▽臼井園芸(臼井智貴氏)=1月末~6月の半促成作(春作)、7月~9月末の抑制作(夏作)、8月末~12月の抑制作(秋作)で、合計1275坪のハウス栽培。ほかに義父母がマンゴー、トマト栽培も行っている。目標は現状年間約26トン(21アール)を5年以内に42トン、単収20トン以上を目指し、直売所売上げを2025年の水準から5年以内に1・3倍にすること。家族経営としてのしなやかさを大切にしながら、雇用やパートの可能性を含め、30年後も持続可能な農業経営を模索していく。マンゴー栽培に手を染めたのは、労働力との兼ね合いをみつつ単価アップを図る目的があった。
 車座会の第2部は、高温対策、品種の問題、経営、地域資源活用をキーワードに意見を交換し、都市型農業の場合は労働力が比較的調達しやすく、人材、ヒト、仲間の力を活かして1チームの強みを発揮すべき、地元ゆえに地域資源に気づかない場合がままあるのでその掘り起こしに目を向けたいなどの声が出た。
 その後、野尻氏がとりまとめ的に総括し、▽収量を最大化する地域資源=自然環境資源(高日射量、良質な水、近隣工場などのCO2供給資源)、知財・人的資源(地域独自の栽培マニュアル、営農指導体制)▽単価を向上させる地域資源=社会インフラ資源(消費地近接性、産地ブランド)、気象・歴史資源(標高・気候差、伝統・文化、景観)▽費用を圧縮させる地域資源=未利用エネルギー資源(工場排熱、ゴミ処理場熱、木質バイオマス)、共同利用・インフラ資源(共同選果場、共同配送網、中古ハウス・空き施設)、人的ネットワーク(農副連携、シルバー人材、地域内メンテナンス網)―とまとめた。
 その上で、他国に負けない我が国の環境資源を活かすことが重要と指摘。エネルギーに課題はあるものの、ほかの条件を活かすことによる日本独自の施設園芸を発達させることができると、さらなる成長、展開に期待を向けた。

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