MENU
令和8年3月9日発行 第3590号 掲載

創立10年、第3期始動へ/農林水産省「知」の集積と活用の場協議会の成果報告会から

 農林水産省「知」の集積と活用の場産学官連携協議会(松山旭会長)は2月12日、都内品川区の大崎ブライトコアホールにおいて、令和7年度のポスターセッション・成果報告会を開催した(既報)。
 これには60以上の団体が出展し、農・食における技術シーズや事業創出の成果を示したポスター展示を行ったほか、会場には約90名が参集した。また、同協議会の臨時総会や、オープンイノベーション大賞などの表彰、表彰者による成果報告発表なども併せて行われた。
 「知」の集積と活用の場は農・食に他分野のアイデアや技術を取り込み、オープンイノベーションの創出を促進する産学連携の事業で、その活動母体として2016年に同協議会が設立された。設立から10年が経ち、現在は5100を超える会員と約180の研究開発プラットフォームを抱える大きな組織に成長。来年度から始まる第3期より、農・食の発展に資する新たな取り組みに着手していく。
 臨時総会では同省農林水産技術会議事務局研究推進課産学連携室長・今西直人氏が第3期(令和8~12年度)の基本方針(案)を説明。3期からは協議会の定めるミッション「わが国の農林水産・食品産業の成長産業化を実現する」及び、ビジョン「農林水産・食品分野に異分野の知識・技術を導入し、研究開発・社会実装の加速化を促す土台になる」に加えて行動指針を定めて、新しい取り組みにも着手するなどとした。
 行動指針としては、(1)連携・ネットワーク化を促進するための技術シーズや有用情報の提供(2)商品化・事業化へ導く支援のノウハウ化・効率化と支援体制の強化(3)政策課題への対応強化(4)協議会の機能を補完する様々な組織との連携強化―の4点を示した。これにより、新たな価値観創出へ向けて研究開発・社会実装の加速化を促すなどとした。
 続いて、7年に優れた業績をあげた研究開発プラットフォームを表彰する表彰式を実施。オープンイノベーション大賞には「東北農業のイノベーション技術創造」研究開発プラットフォーム、協議会活動奨励賞には「次世代育種技術」研究開発プラットフォームが選出され、松山会長から表彰状が授与された。両団体はその後、受賞の取り組みについて講演した。
 そのうち「東北農業のイノベーション技術創造」研究開発プラットフォーム(統括プロデューサー:農研機構東北農業研究センター所長・若生忠幸氏)の取り組みについては、農研機構東北農業研究センター研究推進部事業化推進室産学連携コーディネーター・船附稚子氏が説明。船附氏はまず東北地域の農業について、全国の農業産出額8兆8600億円のうち東北は1兆3591億円を占め、全国第3位の地域であり、畜産、米、野菜の順に産出額が多いと指摘。また、東北農業の特徴として、水田の面積が多い(水稲生産量が全国1位の地域)、中山間地が多いため傾斜地・小区画の水田が多いことなどを示した。
 そして、東北農業のイノベーション技術創造研究開発プラットフォーム(PF)は東北農業のあるべき姿を描き必要な技術開発・普及戦略により社会実装を進めるために2018年に設立。東北6県の公設試験研究機関や東北農研に加え、農業生産者、研究・普及機関、JA全農、農機・食品メーカー、IT企業など80組織・3個人が参画し、(1)大規模高集積水田輪作イノベーション(2)寒冷地次世代園芸(3)地域資源活用型高付加価値畜産(4)復興支援技術・自然災害防止・迅速被害対応(5)高収量・高品質・高機能作物の作出(育種)(6)高収益果樹生産技術(7)中山間地地域活性化支援技術―の7分野で活動している。そのうち(1)では大規模水田作経営の持続的な営農を支える高度な土地利用技術を開発しており、具体的な技術としてNARO式の湛水直播・乾田直播、水田での子実トウモロコシ栽培体系、大豆潅水支援システムなどを示した。
 要素技術の1つであるNARO式乾田直播(プラウ耕鎮圧体系)の普及については、県普及組織、JA、全農県本部、民間企業(農機・農薬メーカー)と段階を追って連携を進めていき、それとともに栽培カルテ・地域版SOP(標準作業手順書)を発行及び発行地域を拡大。
 さらに稲出芽予測システムやノビエ葉齢判定アプリの活用も組み合わせて普及を進めていき、同技術の東北地域での普及面積は、令和2年度の1930ヘクタールから5年度に3700ヘクタール、7年度には5450ヘクタールまで拡大した。その結果、生産費23億円を削減できた試算が得られた。
 その他、(5)で育種した東北産の麦品種も順調に普及・拡大しており、例えばパン・中華麺用小麦品種「夏黄金」は令和7年度の栽培面積は774ヘクタール超となっている。
 船附氏は同PFではSOPとマニュアルをホームページで公開しているとし、今後も技術普及を図っていきたいなどとコメントした。
 その後、社会実装伴走支援制度の説明や同制度の伴走支援対象プラットフォームによる取り組み紹介、バイオエコノミー推進人材活動支援事業の紹介を経て、開会式・成果報告・臨時総会が閉会した。
 式典終了後、ポスターを出展した60以上の団体が取り組みを説明し、来場者との交流を図るポスターセッションを実施。活動を通して創出された研究開発成果や製品・サービスなどがアピールされ、活発な情報交換が行われた。
 展示の一例をみると、東北タマネギ生産促進研究開発プラットフォームによる東北地域のタマネギ安定生産に資する標準作業手順書及び玉ネギ栽培支援機能や、ヤマハ発動機(株)による森林の計測・管理に資するサービス「RINTO」など、農林水産・食に関する幅広い成果が示された。

カテゴリー別最新ニュース