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令和8年3月2日発行 第3589号 掲載

国内肥料資源の利用拡大に向けたシンポジウムから:家畜ふん堆肥活用/土づくり・堆肥特集

 「国内肥料資源の利用拡大に向けたシンポジウムin九州」が2月4日、熊本県のくまもと森都心プラザホールにて開催された。これは、下水汚泥資源や畜産堆肥などの肥料原料を供給する事業者や肥料メーカー、肥料販売事業者、それら肥料を活用する耕種農家などの幅広い関係者が一堂に会し、関係事業者同士の情報交換や連携づくりの場を創出するため、農林水産省補助事業「国内肥料資源利用拡大対策事業」で各地にて実施しているもの。
 今回は九州地域における国内肥料資源の利用拡大に向けて、管内の先進事例の紹介や新たな技術・知見の提供、関係者間の情報共有を目的としたシンポジウムが開催された。講演終了後は会場内にて、参加者ならびに講師などが名刺交換や情報交換などを行い、活発な交流が行われた。
 シンポジウムでは、(1)基調講演「家畜排せつ物や汚泥などの国内肥料資源の利活用」(農研機構畜産研究部門・田中章浩氏)(2)事例発表=「豚ぷん堆肥ペレットの広域流通促進システムの開発・実証」(NPO法人九州バイオマスフォーラム)▽「再生リンを活用した下水道の資源循環」(福岡市道路下水道局)▽「南国興産株式会社における資源循環を活用した肥料事業の取組」(南国興産(株))(3)パネルディスカッション「九州地域における国内肥料資源の有効活用について」―が開催された。
 そのうち田中氏の基調講演では、家畜排せつ物や汚泥などの国内肥料資源活用について、主にこれまでの研究成果などを説明した。田中氏によると、令和4年に肥料が経済安全保障推進法に基づく特定重要物資として指定され、食料安定供給を確保するためにも、肥料原料の供給量が減少し、需給がひっ迫した場合も肥料生産を継続し得る環境を構築することが必要であることから、国内バイオマス資源の利用拡大が重要になると指摘。日本の化学肥料利用量は年間約148万トンであり、そのうち要素成分は窒素21万トン、リン酸16万トン、カリ15万トンで、その多くを海外からの輸入に頼っているとした。農林水産省は、国内肥料資源の循環利活用を最大化し、肥料自給率の目標を現状より15%向上させた40%としている。国内資源である家畜排せつ物と下水汚泥については肥料成分の回収と利用の加速化を図るなどとした。そして、国内肥料資源の利用化の技術としてメタン発酵や直接燃焼、堆肥化を提示した。
 堆肥については、石垣島におけるサトウキビ生産で堆肥施肥の実証を行った例を紹介。サトウキビ生産における課題として、生産資材費の低減と単収の向上があったことから、この課題解決を図るべく、堆肥や消化液の施肥を行った。堆肥筋蒔機による牛ふん堆肥施肥では、堆肥筋蒔機を90馬力トラクタに装着し、1立方メートルフレコンで堆肥を補充しつつ牛ふん堆肥を施肥。20アール圃場と50アール圃場で施肥効率を比べたところ、堆肥の補充を効率的に行うことで施肥時間の短縮が期待できることが判明した。また、石垣島で夏植えサトウキビを消化液区、消化液+堆肥区、化学肥料区の3地区で生産したところ、収量は化学肥料区10アール当たり14・5トンに比べて消化液+堆肥区14%増、消化液区11%減となったが、処理区間に有意差は認められなかったとした。堆肥施用で地力の維持・増進がはかられ、単収向上効果が期待できるものの、沖縄の南西諸島では堆肥価格は九州に比べて高い傾向があり、コストが問題になっている。サトウキビに投入できる安価な堆肥とそれを供給する技術が求められているとした。
 一方、農業集落排水汚泥の堆肥化については、オガクズを副資材とした農業集落排水汚泥の堆肥化では、JA全中が示した推奨基準である水分50%以下が期待できないことから、高熱量材料である豚ぷんの添加を試した。農業集落排水汚泥に豚ぷんを20、40%添加して排気二酸化炭素2・5%で通気量を制御した発酵乾燥試験を実施したところ、豚ぷん添加により発酵が促進され、通気量・材料温度が増えたという。
 さらに有機質肥料を利用した作物栽培への影響をみた栽培試験では、大根・トウモロコシとも、大根の1本重、長さ、SPAD(葉に含まれる葉緑素量)やトウモロコシの実の重量・直径及び糖度の各区間に有意差は認められなかった。どちらも汚泥堆肥、消化液添加堆肥、消化液を適正な肥効率で肥料設計することで、化学肥料と同等の収穫量が得られたなどとした。
 一方、九州バイオマスフォーラムの薬師堂謙一氏は、農林水産省のスマート農業実証プロジェクトで実施した「豚ぷん堆肥ペレットの広域流通促進システムの開発・実証」の成果を共有。豚ぷん堆肥はカリウムが少なく窒素やリン酸濃度が高いため、化学肥料の代替性が高い一方で、発酵品質の改善や仕上げ乾燥が課題となっている。そこで、豚ぷん堆肥の広域流通による有効活用に向け、今回の実証では低コストの追熟、ペレット成型処理技術を開発・実証し、化学肥料との混合物を作製して栽培試験を行った。
 豚ぷん堆肥の追熟技術の確立・実証では、縦型コンポ堆肥化装置にて豚ぷん堆肥に加水処理を行い、高温発酵と中温発酵で追熟させ、ロータリー撹拌式堆肥化施設にて悪臭が少ない熟成堆肥を作成。追熟により水分は50%以上減少した。
 また、豚ぷん堆肥ペレットの効率製造では、エアー搬送機、ハンマーミル、トロンメール、定量投入機の前処理システムを設置し、粉砕処理により成型負荷を約40%低減。さらに仕上げ乾燥がネックとなることから、薪ボイラーによる乾燥システムを導入した。
 こうして完成した豚ぷん入り複合肥料の栽培試験を行ったところ、白ネギ、甘藷、トマト、水稲、ブロッコリーとも収量・品質で慣行栽培との有意差はみられなかった。
 また、長崎県農林技術開発センターにおいて豚ぷん堆肥入りの混合堆肥複合肥料(BB肥料)及び特殊肥料入り指定混合肥料を活用した精密栽培試験を行い、豚ぷん堆肥ペレット20%混合肥料1銘柄が商品化に至ったという。その後混合率30%で栽培試験を実施しており、品質、収量とも慣行区と有意差なしとの成果が得られたなどとした。

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