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令和8年3月2日発行 第3589号 掲載

スペイン・アルメリア農業:データで信頼を可視化/GAPシンポジウムから

 既報の通り、一般社団法人日本生産者GAP協会は2月16、17の両日、都内文京区の東京大学弥生講堂一条ホールおよびオンラインで、2025年度GAPシンポジウム「スマート農業×営農指導~データ駆動型で拓くGAP」を開催した。現場の生産管理や営農指導、生産者の取りまとめ、販売やマーケティングまでを含めた営農活動全体を、どのようにデータで支え、より良い農業・営農(GAP)に結びつけていくかを考える機会として企画され、農林水産省からのスマート農業の推進に関する政策説明や、高知県の営農支援クラウドサービス「SAWACHI」による取り組み、データ駆動型営農が回り始めた農業法人の事例など、2日間で9講演を実施した。
 ここでは、同協会の田上隆一理事長による基調講演「アルメリア農業の奇跡―アルメリア農業の成功要因分析と日本農業への示唆」の内容を紹介する。
 田上氏は最初に、世界のGAPステージの変遷について、▽ステージ1(1980年~)=政策・法令としての環境保全を目指し、環境負荷低減に向けて、GAPの規範・マナーを整理▽ステージ2(2000年~)=地球に害を及ぼさないことを目指し、環境・食品・労務に関する適正な管理体制構築に向けて、GAPガイドライン・規準を整備▽ステージ3(2020年~)=地球環境の修復・復元を目指し、持続可能な農業の国際戦略や気候変動への対応により、地球環境の再生(リジェネラティブ)に取り組む―と説明。その後、50年間で砂漠地帯から欧州一の野菜産地に成長したスペイン・アルメリア農業へと話題を移した。
 アルメリア農業は2020年以降、GAPステージ3に該当する、作るほどに地球環境が良くなる環境再生農業を実践している。ここに至るまでの経緯を、1980~1990年は農業協同組合の急速な成長の時代、1990~2000年はアルメリア農業スタイルの成熟の時代、2000~2010年は農民企業家の誕生と成長の時代、2010~2020年は農業クラスターによる持続可能な農業実現の時代―と振り返った。
 また、アルメリアのエル・エヒド市における農場の実に91%がグローバルGAPを取得しており、認証世界一を誇ると紹介。「GAPにはビジョンがあり、その取得は、消費者ニーズに応える価値の創造につながる」と述べ、GAP認証は、地域農業が、なりたい姿を目指すための有効なツールであり、認証取得によって農家の行動変容をもたらしたことが、アルメリア農業の今につながっているとした。
 続いて、アルメリアにおける農業協同組合の役割についてふれた。アルメリアは、農家の85%が小規模な家族経営で、農協が農業クラスターの核となっている。その役割として、(1)農家の不確実性を回避する:研究費や実験的なリスクを農協が負担(2)農家の考え方を変える:環境保護、食品安全の研究で、地域の農業発展に貢献(3)組合員の参入を促す:経営利益+意思決定プロセスに参加し、柔軟性、自主性、平等性を確保―をあげ、農家を儲けさせられない農協からは組合員が去っていく仕組みになっているなどと説明した。
 さらに、農協組織の中で特に重要な役割を果たすのが、営農指導員・テクニコであると紹介。テクニコは、単なる指導員ではなく、農家とともに農場経営を支える担い手。10日に1度は農場を巡回し、データに基づいて、今何をすべきかを処方する農場医のような存在であり、「テクニコの指示→農家での実施」のサイクルが、そのままエビデンスになっているとした。
 テクニコの具体的な役割は、(1)農業の監督:農作物の成長と発達を監視し、GAPであることを確認(2)灌漑と肥料の管理:収量最適化のため、灌漑・肥料投入を計画・監督(3)害虫と病気のコントロール:病害虫を予防し、コントロールする戦略実施(4)技術コンサルタント:GAP、機械使用、新技術に関する技術的助言(5)研究開発:新技術や方法論を開発する研究プロジェクトに参加(6)資源管理:水や投入資材・資源を、効率的で持続可能な方法で管理(7)規則の遵守:地域や国の規則や規制に準拠していることを確認―など、多岐にわたる。さらに、内部監査や書類準備といった認証の支援も実施。田上氏は「テクニコは農場の伴走者であり、医師であり、コンサルタントでもある。作物管理と農業資源管理を最適化する専門家だ」と述べ、アルメリア農業におけるテクニコの役割の重要性を強調した。
 最後に「アルメリア農業の奇跡は、データに基づき信頼を可視化する仕組みを構築した成果だ」とし、日本農業が直面する課題を解決するためのヒントとして、(1)地域農業クラスター形成に向けた関係者連携の再設計(2)農協機能の見直しと連合会による販売力の強化(3)「日本版テクニコ制度」の導入と営農指導の再構築―などの視点を示した。

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