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令和8年2月23日発行 第3588号 掲載

AFICAT視察まとめ:日本の技術をアフリカへ/機械で拓くアフリカ農業(12)

 AFICATコートジボワール視察の連載最終回は、これまでの話を踏まえて、同国の農業機械化の課題や実情を改めて振り返り、日本の農機関連企業が進出するにはどんな手段があるのか、JICAの取り組みと絡めて紹介する(データはすべて取材当時のもの)。
 今回の視察を振り返ると、2025年7月28~8月1日に現地をまわった。AFICATを推進する同国農業省、コメ政策の実施機関であるコメセクター開発機構(ADERIZ)、民間セクターの代表としてコートジボワール商工会議所を表敬。生産現場視察では、首都ヤムスクロ近郊にある灌漑水田圃場にて中国製(東風井関農業機械)の歩行型耕うん機による耕うん作業の様子を視察。ヤムスクロ北のサカスにあるCORISAK(サカスコメ農家組合)視察では、ヤンマーの小型コンバインハーベスタによる刈取り風景や、圃場で壊れて作業が中断しているコンバイン、また、中国製の精米プラントを確認した。アビジャンにあるコートジボワール・コメ流通協会では、JICAが進める技術協力プロジェクトPRORIL2(国産米振興プロジェクトフェーズ2)で導入したサタケ製の光選別機、カンリウ工業製の石抜機の稼働状況を確認。そしてクボタ・ヤンマーの農機販売代理店並びに、コマツ・伊藤忠商事のアビジャン事務所を訪問し、本邦企業の進出の状況などを見て回った。その他、PRORIL2事務所なども訪問した。これらを通してみえてきた同国の稲作農業機械化における実情と課題を以下にまとめる。
 ▽生産性の低い稲作=経済発展途上の同国では米需要が増えているものの、生産量が追い付いておらず、国内消費量の約半分を輸入に頼る。生産量が伸び悩む要因は、圃場及び灌漑施設の未整備等といったインフラ面の問題や、農業機械化の遅れなどによる生産性の低い粗放的農業、農機オペレータが定着せず熟練度が低い、農業機械が故障した際に部品がすぐに届かず作業が中断してしまう、収穫後の乾燥・調製時の品質の低さ・ロスの発生―などがあげられる。農機ニーズは非常に高い▽農業機械サービスプロバイダーによる農業機械化が進み長時間稼働=小中規模農家自らが農機を所有する段階に至っておらず、必要な時だけ機械所有者に作業を委託する形が主流。農業機械サービスプロバイダーによって農業機械化が進展し、中には日本製コンバインを年間700~800時間使うなど、長時間稼働が行われ、機械は従来以上の耐久性が必要▽ファイナンス問題=生産者側の問題として重労働や低収入、資金不足などがある。農村に使いやすい金融商品が少ないため、資金調達や事前融資の活用が困難。民間における農業への投資・関心が低いことも聞かれた▽迅速な部品供給など盤石なアフターサービス体制構築が必須=スペアパーツ不足は生産から加工に至る現場で課題にあげられた。農機販売代理店は部品在庫を保有しているが、十分な数と種類の部品を有しておらず、かつ地方の圃場で故障した場合に即座に手に入りづらい。さらに、オペレータの経験不足により適切な操作・整備ができず、無理な使い方や直し方をしてしまい頻繁に作業が停止▽海外ビジネス環境の未整備=海外からの部品取り寄せは通関を含めて数カ月かかるなど、通関手続きの煩雑さや契約上のトラブルリスクなどが散見。周辺国への展開も見据えた税関手続きの簡略化・保税倉庫の活用などについてはオールジャパン体制で同国政府関係者と調整が必要▽中国・インドなどの機械との競合=中国製機械の価格優位性が高く、日本製農機は性能が高い分単価が高いことがネック―など。
 これらの課題について、現在進められている対策をみると、コートジボワール政府は農業政策として国家稲作振興戦略2などを進め、高品質米による自給達成と米の大規模輸出国化を目標に据え、灌漑水田の振興や整備による効率的な稲作開発、高収量品種の導入、機械化促進を通じて稲作バリューチェーンにおける米の生産性を高めていくとしている。また、日本政府も様々な支援を行っており、その一環でJICAが実施している同国に対する農業分野の取り組みでは、技術協力プロジェクトPRORIL2(2021―2026)や、無償資金協力「稲作分野における機械化サービス向上計画」、AFICATなどの事業を推進。
 PRORIL2は国産米の販売量と質の向上を目指し、サプライチェーンの強化(農業金融サービス・農業機械サービスの供給体制の拡充、種子・収穫後処理の改善による米品質の向上)に取り組んできた。そのうち農業機械に関しては、日本の農業機械を導入し、賃耕など各種農作業を請け負うサービスプロバイダーへの操作・メンテナンスおよびマネージメントのための研修や、コメ生産者・精米業者などに対して収穫後処理に関する技術指導などを実施している。今回の視察では、先述した通り、PRORIL2で導入した農業機械の稼働状況や、PRORIL2事務所なども確認した。
 ヤムスクロ近郊にあるPRORIL2事務所(ADERIZの施設)の視察では、コートジボワール農業省からPRORIL2プロジェクト(PJ)に出向しているエンジニアのクワク・クワク・ランシナ氏らが応対してくれた。同事務所には米の品質検査が可能な品質検査室「LABORIZ」があり、サタケやケツト科学研究所による検査機器として、米の硬度計や白度計、水分計などを設置していた。ラボでは、PJパートナーである国内精米所から米サンプルを受け取って、品質分析を行い、無料でデータを提供するサービスを実施している。2期作が行われている同国では半年に一度分析を行い、年間40~50サンプルを検査しているという。例えば同じ精米所から送られてくる籾と白米の両方で検査し、データを比較して白米の方が割れ米が多い場合、精米プロセスで割れ米が多く発生していることがわかる。こうしたデータをもとに改善を進めるにあたり、PRORIL2では収穫後の処理行程の研修も精米所などに行っており、実際に割れ米や着色米の発生率が低下したという。同国ではPJ終了後も同ラボによる品質検査を続けていくべく、ADERIZで品質検査スタッフを継続雇用し、有償で検査サービスを行うことを検討している。その他、同事務所ではPJで導入したヤンマーの耕うん機・ミニコンバイン・脱穀機など、IRRI(国際稲研究所)から導入した平型乾燥機などを確認した。PRORIL2は今年最終年を迎えるにあたり、第3期以降をどうするかは、2期までの評価結果を踏まえて検討される。
 連載で示した通り、コートジボワールの農業機械化はまさにこれからであり、ポテンシャルは大いにある。そこで、これから同国をはじめアフリカに進出しビジネス展開したい日本の農機関連企業は、どのような手段があるだろうか。JICA国際協力専門員・大石常夫氏によると、JICAを活用した進出手段として、(1)JICA農業共創セミナー(2)JICA Biz(中小企業・SDGsビジネス支援事業)(3)AFICAT事業(4)JICA海外協力隊―に参加する方法があるという。
 具体的にみると、(1)はJICA筑波が開発途上国から受け入れている研修員と、日本の民間企業等の交流・学びを目的としているイベント。昨年5月に行われた2025年度同セミナーではカンリウ工業、ケツト科学研究所、山本製作所など6社の企業がブースを出展し、海外への拡大を図る農業技術をアピール。アフリカから来日しているJICA研修員や留学生、AFICAT各国の関係者らと活発な交流を行っていた。
 (2)は開発途上国の課題解決に貢献する日本の民間企業等のビジネスづくりを支援するJICAの事業。企業の規模やビジネスの検討段階に応じてニーズ確認調査とビジネス化実証事業の2つの支援メニューがあり、前者は対象国の基礎情報をもとにニーズと自社サービスの適合性を分析し、初期的なビジネスモデルを検証。後者は実際に機材も持ち込んで顧客の受容性を確認したうえで現地パートナーを確保しビジネスモデル・ビジネスプランを策定する。
 (3)はアフリカ諸国における先進農業技術の導入促進を官民連携で実施する事業。日本の農業資機材メーカーのアフリカ進出を支援しており、2022年2月からタンザニア・コートジボワール・ナイジェリア・ガーナ・ケニアの重点対象5カ国にて順次稼働し、2024年2月より新フェーズが始動。今回の視察も本事業の一環で実施したものである。国内でアフリカ諸国に関する情報交換会などを企業向けに実施しているほか、AFICAT各国における農業状況の情報提供、面談の調整、現地展示会への参加並びにデモ・実証実施の支援などを行っている。これらの情報が定期的に発信されるメーリングリストへの登録はJICAのAFICAT事務局(aficat@jica.go.jp)まで。
 (4)はJICAボランティア派遣事業の一環で、国際協力の志を持った人々を派遣し、現地の人々とともに生活して、異なる文化・習慣に溶け込みながら、草の根レベルで途上国が抱える課題の解決に貢献するもの。JICAでは協力隊における所属先の雇用継続を支援するため、所属先に支給する「現職参加促進費」などの制度を設置。企業・団体においても職員が開発途上国に赴任することで、現地の生の事情を得られるなど途上国進出の足掛かりを作り得るほか、CSRや、職員の成長・意欲を後押しするチャンスにもつながる。
 いずれも中小企業でも参加することができ、JICAが長年積み重ねてきた知見や支援の提供を受けながら、アフリカへのビジネス展開の足掛かりを作ることができると見込まれる。
 その他、情報収集・交流の場として「JICA食と農の協働プラットフォーム(JiPFA)」に登録することもおすすめしたい。JICAがSDGs達成に向け、国内の産官学関係者が途上国及び日本の課題解決のための活動を促進するべく設置したもので、情報や経験の共有等を通じて様々な共同活動を産み出すことを目標としている。
 日本が誇る技術がアフリカの大地に広がり、現地農業を発展させる未来へ向けて、ぜひ一歩を踏み出してほしい。

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