若い世代が真剣にスマ農や持続可能性を考える/第36回ヤンマー学生懸賞論文・作文入選発表

入選発表会の冒頭では、ヤンマーアグリの所司社長が登壇し、参加者や関係者に向けて感謝の言葉を述べた。同事業が1990年に若い世代へ農業や農村の未来を自由に語り合う場を提供する目的で始まり、後援団体や学校関係者、そして毎年挑戦する学生たちの支えによって長年続いてきたと振り返った。続いて、近年の農業を取り巻く環境の変化について触れた。スマート農業の普及や新技術の導入により可能性が広がる一方、米価の高騰、生産資材の高止まり、気候変動による災害、人手不足など、現場には多くの課題が押し寄せていると指摘。米政策が増産から需要に応じた生産へと転換する中で、安定供給と食料安全保障、持続可能な経営の両立が求められていると述べた。そのうえで、今年の入賞作品にはスマート農業や経営、持続可能性など、現場の課題に向き合った提案が多く、若い世代が真剣に未来を考えている姿勢が心強いと評価した。更に、発表されたアイデアを一歩ずつ形にしていくことが農業の未来を切り開く力になるとして、挑戦を続けるよう呼びかけた。
来賓の挨拶では、後援団体である農林水産省から中国四国農政局・古賀徹次長、一般財団法人都市農山漁村交流活性化機構から須藤徳之理事長、公益社団法人大日本農会から吉田岳志会長が登壇。須藤理事長は入賞作品を一通り読んだ感想として、「荒削りながらも強い熱意があり、その中に皆さんの苦労がにじんでいた」と述べ、学生たちの努力をねぎらった。作品の中には、社会で活躍する人々の話を聞きに行き、自らの視点として取り込んだものも多く、若い世代の積極的な姿勢を高く評価した。
来賓挨拶の後には、過去の受賞者から寄せられたビデオメッセージが上映され、会場は和やかな雰囲気に包まれた。休憩を挟み、作文の部、論文の部の順に表彰式が行われた。作文の部は、銅賞10編、銀賞2編、金賞1編を発表。論文の部では優秀賞10編、特別優秀賞2編、大賞1編が発表された。入賞者全員に所司社長から賞状と目録の授与が行われた。
作文金賞には千葉県立農業大学校農学科・佐野叶芽氏の「脱 農業初心者」が選ばれた。審査員の生源寺氏は同作に対して、祖父との畑仕事をきっかけに農業への関心を深め、農大での学びやアルバイト先の先輩から得た経験を丁寧に描いた点を高く評価した。文章表現も巧みで、祖父や先輩の言葉がそのまま聞こえてくるように再現されていると指摘。また、海外で農業に挑戦する準備を進める姿が描かれており、「初心者を卒業した後の姿」が明確に示されている点が印象的だったと述べた。
論文大賞に輝いたのは、明治大学農学部食料環境政策学科・太田空良氏、板橋遼介氏、宮野雄太氏の「持続可能な農地利用をデザインする~柳原地区のフューチャー・デザイン・ワークショップを事例として~」。審査委員からは、農業分野で、フューチャー・デザイン(様々な課題に対し、現役世代だけでなく、その課題の影響が及ぶ将来世代の立場も踏まえて議論しようという取り組み)という手法を取り入れた点が斬新だと高く評価された。また、長野県飯山市柳原地区に足しげく通い、現場の人々との濃密な交流を持った点も高い評価を得た。審査員の大杉氏は講評で「フューチャーデザインという手法については名前だけ聞いたことはあったが、実際にそれを使った論文が出てきたのには驚いた。とても新しい発想で、『未来から今を見直す』という視点は本当に大切だと感じた。この手法を使ったことで、地域の将来像を、未来も含めて共有できたという点も、非常に良い成果だった」と述べた。一方で圃場整備の課題が予定調和的な結論に落ち着いた点に触れ、より幅広い議論の可能性を指摘した。
審査員からの講評後、ヤンマーアグリ取締役経営企画部・保田快部長が閉会の挨拶を行った。学生らに対し「皆様もこれから様々な道に進まれると思うが、今回の作品に込められた情熱や想いを、自らの夢や目標に向かって発揮し、果敢にチャレンジいただきたい」とエールを送り、各関係者に対する感謝を述べて、閉会となった。









