循環型農業を実践/日本有機資源協会・国内肥料資源利用拡大アワードから

一般社団法人日本有機資源協会(芋生憲司会長)は1月21日、都内の全国町村会館にて、令和7年度第2回国内肥料資源利用拡大アワードの表彰式・事例発表会・交流会を開催した(既報)。
これは堆肥や下水汚泥資源等の国内資源を活用した肥料へ積極的に転換を図る取り組みや、地域で効率的に資源循環を推進する取り組みを通して顕著な実績をあげている団体を広く表彰し、国内資源肥料の全国普及、生産性の向上を進めるもの。農林水産省補助事業「国内肥料資源利用拡大対策事業のうち国内肥料資源活用総合支援事業のうち国内肥料資源流通促進支援」の一環で同協会が事務局として実施しているもので、昨年度に続き2回目。今回は応募総数34件の中から次の12件の受賞者を選出した。
【農林水産省農産局長賞】三興(株)/有機物と微生物を活用し、日本の農業と環境をクリエイトする
【農林水産省畜産局長賞】十勝清水町農業協同組合/堆肥ペレット「しみず有機」と「とれたんと」の取組について
【国土交通省上下水道審議官賞】特定非営利活動法人循環型環境・農業の会/下水道肥料と未利用資源によるコスト削減と高品質、高収量への取組
【国内肥料資源の利用拡大に向けた全国推進協議会奨励賞】▽ENEGGO(株)/廃棄卵殻の肥料としての活用及び、ビジネスモデルの構築▽興部町/地域のバイオマス資源をフル活用!バイオガスプラントによる資源循環▽県南環境保全センター(株)/季節の花や野菜作りに最適な汚泥発酵肥料「アースライフ」の製造販売▽(有)山陰ネッカリッチ/「地域資源を活かすあれあれ肥料の循環型供給」▽バイオ液肥研究コンソーシアム/新時代の循環の輪 豊富な地域資源を活かして▽ヒガシマル醤油(株)/醤油醸造工程で発生する副産物を利用した資源循環型農業の取組▽富士見工業(株)/広域流通可能な高品質豚ぷん堆肥供給体制の構築▽真庭市・真庭広域廃棄物リサイクル事業協同組合/くらしのなかから始める循環 生ごみ等の資源化で循環型のくらしへ▽大和フロンティア(株)/豊富な地域資源「竹」をパウダー化し、独自技術で製造した高機能有機肥料
表彰式では農林水産省農産局長賞、同畜産局長賞ならびに国土交通省上下水道審議官賞の3件に表彰状が授与され、受賞者3名による事例発表が行われた。
審査員委員長として総評を行った芋生会長は、「前回の第1回で複数見られた、国内肥料の原料供給、製造、利用を直接的に行う事業者ではないが、それら事業者を束ねて全体的に取り組みに関与している旨を記載している応募に対応するべく、取組区分として新たに事業者間連携支援者を加え、審査基準を新設した」と説明。そのうえで、今回の受賞取り組みについて、「国内資源を最大限に活用した有機肥料の生産と地域循環型農業の実践が高く評価される。家畜ふん尿や食品副産物、下水汚泥、メタン発酵消化液など、多様な未利用資源を有効に再生し、肥料の品質向上やコスト削減、環境負荷の低減を実現。さらに、JAや行政、企業、農家が一体となった連携体制のもと、地域内利用やブランド化、環境教育の推進など、持続可能な農業モデルとしての広がりも顕著であり、資源循環と農業振興を両立させた先進的な取り組みとして、今後の発展が大いに期待される」などと高く評価した。
ここで一部受賞者の取り組み発表概要をみる。
「有機物と微生物を活用し、日本の農業と環境をクリエイトする」で農林水産省農産局長賞を受賞した三興は、代表取締役社長の荻野隆氏が取り組みを発表した。兵庫県赤穂郡上郡町に本社を構え、肥料の製造販売を手掛けている同社は、NPK肥料、土壌改良材、微生物資材、活力剤など多様な商品をそろえ、全国に肥料を展開している。有機質など国内肥料資源の総販売量は累計18万トンを超え、全肥料の年間製造量8125トンのうち、国内資源肥料の年間製造量は6500トンと約8割を占める。地域周辺の家畜糞などを原料とした肥料を30年以上にわたり製造販売しており、また、微生物を活用した残渣・残根の分解促進肥料を日本で初めて量産化した。農家を対象とした現場での勉強会や営農を実践し、地域特色を考慮した肥料設計を繰り返し検証しているほか、企業や自治体と連携し、当時未利用資源であった再生回収リンを農業者ニーズに合わせて肥効・配合した肥料を製造。一部の設計事例として岡山県向けの混合堆肥複合肥料の設計として「キャベツ一発」「エコペレ中早生水稲一発」などを示した。同社はさらに国内未利用資源拡大に向けて、複数の自治体や企業と連携し社会実装を支援していくとした。
十勝清水町農業協同組合は、JA十勝清水町営業部経営指導課・後藤聖奈氏が堆肥ペレット「しみず有機」と「とれたんと」の取り組みについて紹介。資源の国際価格急騰により化学肥料の入手利用が困難になる場合が出てきたことから、原料輸入に依存する化学肥料からの脱却を進めるべく、肥料の自給率向上を図る目的で、平成21年よりJA十勝清水町家畜排泄物堆肥化施設を設立・稼働。清水町内で発生する乳牛ふんと採卵鶏ふんを主原料とし、北海道内の伐採木から出る天然木質チップを添加した堆肥ペレット「しみず有機」の製造・販売を開始した。現在は年間4600トンの原料を受け入れているという。
一方で、堆肥類が豊富に存在する地域で選ばれるための差別化として、機械散布しやすいようにペレットの小粒化を進め、有効成分や肥効について帯広畜産大学や農研機構と共同研究。有効成分や肥効を明らかにし、畑作4品(小麦・テンサイ・マメ類・バレイショ)やニンニクで収量アップする結果を得るなどしたほか、「しみず有機」施用時の施肥設計を提案。さらにペレットサイズを一回り小さく改良し、機械散布しやすくしたほか、JAコントラクターで散布作業を受託し、春・秋の農繁期の労働負担低減を図りながら利用促進活動を推進。「しみず有機」を使用した元気な土で育てる取り組みブランドを「とれたんと」として、小豆、アスパラ、ニンニク等を付加価値販売している。しみず有機の9割以上は地域内の農家が利用し、地域循環型農業を展開しているほか、畑作物への利用だけでなく、牧草地にも積極的に利用され、牧草の嗜好性が上がったと高い評価を得ているなどとした。
特定非営利活動法人循環型環境・農業の会は、前田順二理事長が登壇。佐賀市で活用されていなかった下水道肥料(2円/キロ)と木質バイオマスを含む地域の未利用資源を組み合わせることで、カリ分や炭素を補完する施肥設計を地域に展開している。年3回の勉強会や施設栽培に特化した専門講座を通じて、施肥設計や栽培管理の改善を継続的に支援し、実践者のスキル向上と地域全体への技術波及を促しており、併せて、実践事例を参加者間で共有することで、栽培技術の向上と普及につなげた。
この取り組みにより、地域における化学肥料の代替率は50~100%に達し、従来比で5~9割という大幅なコスト削減を実現している。これにより、近年の肥料価格高騰の影響をほとんど受けずに営農を継続できている農家が多く、地域農業の経済的安定に大きく寄与しているほか、生産者同士の学び合いを育み、総合的な農業技術の向上と持続可能な循環型農業の基盤づくりにもつながっている。
さらに、佐賀市業務委託事業である「生ゴミ減量化事業」では、下水汚泥肥料の600グラムサンプルを家庭向けに配布し、家庭菜園での小口利用を促進。市民レベルでの資源循環の理解促進と需要拡大にもつなげている。市民の資源循環への理解促進と家庭菜園への普及を進めることで、農業者と市民が一体となって循環型農業を支える地域基盤の形成につながっているなどと高く評価された。









