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令和8年2月9日発行 第3586号 掲載

東アジアに広がる有機市場、フードシステム形成/農林水産政策研究所がシンポジウム

 農林水産政策研究所(倉重泰彦所長)は昨年12月、都内千代田区の農林水産政策研究所セミナー室及びWebにてシンポジウム「東アジアにおける有機農産物フードシステムの現状と展望」を開催した。国内外の有機農産物の研究者を招き、有機農産物フードシステムの最新の取り組みや課題を紹介した。
 開会挨拶した倉重所長は、同シンポジウムについて「東アジアにおける有機農産物をめぐる最新の動向を共有し今後の政策や研究の方向性を考える場として企画した」と述べ、「東アジア地域は文化や市場特性こそ異なるものの、持続可能な農業の確立に向け共通の課題を抱えており、国際的な知見の共有は極めて重要だ」と評価。そのうえで、議論を通じて有機農産物フードシステムの将来像に関する新たな示唆が得られ、東アジア地域の未来に関心を持つ人々の連携が深まることを期待するなどと語った。
 続いて、4名の専門家から報告が行われた。佐藤奨平氏(日本大学生物資源科学部准教授)は「台湾における多様な流通主体による有機食品のフードシステム形成と課題」について発表した。台湾では、安全・安心・健康志向や食品の安全性などへの関心の高まりなどを受けオーガニック市場が急速に成長。2021年の台湾における有機農地面積は1万1765ヘクタール(国内農地の1・5%)で有機農家は4436戸となっており、台湾政府も国内の有機農産物・食品の生産・流通・販売・消費に関する積極的な推進を政策的に位置付けている。
 台湾国内の有機農産物・食品の購入先はスーパーマーケットが約4割を占めるが、有機専門小売店や量販店も各2割あり、流通経路が多様化。佐藤氏は台湾における有機農産物・食品のフードシステム形成について企業形態論的な観点からみると、量的な拡大はスーパーや量販店などの株式会社が担うと指摘。一方、エシカル・サステナブルなどの社会的ニーズに応えるべく、質的に高めていくのは、台湾最大の(1)有機専門小売チェーン(2)生協組織といった非営利的な組織がきめ細かい対応を行い、先導的・中心的な役割を果たせると説明。例えば(1)の取り組みとして、事業理念・目的の実現に向けて販売だけではなく、生産から加工・流通を含め組織化することで生産者と消費者を結びつけ、農家・食品メーカーとの関係を深めており、有機食品のフードシステム形成に大きな役割を果たしていると述べた。
 一方、松本賢英氏(農林水産省農産局農業環境対策課課長)は「日本の有機農業の現状と課題」を説明。みどりの食料システム戦略にて有機農業の取組面積拡大に向けたKPIを設定しており、2030年目標6・3万ヘクタールの達成に向けて有機農業の取り組み面積は増加傾向にある。品目別にみると、有機米は堅調な需要を背景に全国的に増加傾向となっており、栽培技術も概ね確立。乗用除草機や自動抑草ロボット等の除草・抑草機械をはじめ、水管理システム等の技術の導入・普及が進みつつあるものの、課題として▽さらなる省力化に向けた技術の開発・普及▽温暖化に伴いカメムシ等の防除が難しい病害虫の被害拡大▽大豆等との輪作体系確立▽需要や販路の拡大(特に生産・販売の両面でJAによる取り組みは重要)とした。
 また、技術の体系化や横展開については、▽地域や品目の特性に応じた栽培技術体系の確立と技術普及体制の整備▽温暖化対策として、カメムシ防除技術の開発や高温耐性・病害虫抵抗性を持つ品種の開発▽自動抑草ロボットなどのスマート農業技術の活用、農業支援サービス事業者の利用拡大▽農業者、農研機構、公設試、民間指導団体等による技術的課題と対応方策に向けた情報交換の場が必要―などを課題として示した。

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