MENU
令和8年2月2日発行 第3585号 掲載

下水汚泥肥料、小規模での開始がポイント/関東農政局がみどり戦略勉強会

 関東農政局は1月23日、みどりの食料システム戦略勉強会(第39回)をオンラインで開催した。これは関東農政局が同戦略に関係するテーマについて毎月開催しているもので、今回は「下水汚泥由来肥料の活用事例と普及方策」をテーマに、東京大学大学院工学系研究科・都市工学専攻下水道システムイノベーション研究室特任准教授の加藤裕之氏が講演した。
 加藤氏は、1日当たり5~6万トンの下水汚泥が発生しているが、その半分はセメントなどの建設資材に使われ、肥料としての活用は14%に過ぎないといった現状を説明。新たな食料・農業・農村基本法では、化学肥料原料のほとんどを輸入に依存している状況を踏まえ、下水汚泥資源をはじめとした国内資源の利用割合を2030年までに4割に拡大することを目標に掲げており、下水汚泥由来肥料の普及に大きな期待が寄せられていることを示した。
 また、最近の動きとして、2023年10月に農林水産省が創設した公定規格「菌体りん酸肥料」について説明。▽重金属が基準値を超えていない、植物への害が認められない等の公定規格に適合したもののみを登録し、流通を認める▽流通後も立入検査によって、公定規格への適合性等を確認―という従来の汚泥肥料の要件に加え、原料の管理、年4回以上の肥料の分析、教育訓練等を位置付けた「品質管理計画」に基づいた製造が求められていることから、適切な品質管理が行われ、品質保証および安全性のさらなる向上につながる規格であるとした。
 続いて、下水汚泥由来肥料の普及について言及。使用開始に当たってはたいていの地域で、利用者側からは「どんな肥料か分からず、使用に踏み切れない」、供給者側からは「利用者ニーズが分からないので、事業を本格的にスタートできない」という声があがるとし、そうした状況を打開するためには、「小さく試行し、利用者側と供給者側が一緒に結果を見ていくというのが、最も合理的な方法だ」とアドバイスした。
 実際に下水汚泥由来肥料を利用している人に使い始めの動機を聞いたところ▽地域資源循環や土作りに興味▽有機農業に興味▽連作障害等で苦労▽化学肥料が高値―などの声が多いため、そのような理由で「農薬・化学肥料に頼らず栽培したい」と考えている人を見つけてまずは試験栽培から始めてみることが普及の第一歩であるとした。
 また、地域に普及させる際のポイントとして、(1)比較優位性:収量や経費のバランス(2)試行性:小規模での試用(3)観察性:うま味や甘味成分の数値化や味見(4)両立性の確保:慣行方法からの変更のハードルを下げる―をあげるとともに、信頼できる人に勧められると安全性などへの不安なく始められることから、地域農業の中心者などの協力も有効であるとした。
 最後に、化学肥料など慣行農法から下水汚泥由来肥料に切り替える際は、▽価格▽肥料の受け取りやすさ▽散布手間と施肥方法▽試験栽培の実績・農作物▽安全性・透明性・公定規格―が検討材料にあがることが多いとし、「全ての条件を満たすのは難しいが、ぜひ、小規模で試すことから始めてほしい」と述べて講演を締めくくった。

カテゴリー別最新ニュース