インタビューケース2:美味しい野菜追求(大平やさい・香川)/クボタ・GROUNDBREAKERS2026

先進農業経営者へのインタビューケース2では、大平やさい(株)代表取締役・大平尚志氏のインタビューを配信した。香川県観音寺市に拠点を置く大平やさいは、見た目重視の市場規格に左右されず、「本当に美味しい野菜」を追求し続けてきた生産法人だ。代表取締役の大平氏は、味へのこだわりを武器に国内外へ販路を広げ、独自の経営スタイルで成長を続けている。
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大平氏が農業に抱いた最初の違和感は、「値決めを他人に委ねる構造」だった。農家は生産者であるにもかかわらず、価格は市場が決めるのが当たり前。そこに疑問を持ち、「原価を把握し、自分で値段をつけ、納得して買ってもらう農業」を目指したという。就農後、知人に贈ったレタスやスイートコーンが「驚くほど美味しい」と評判になったことが、味への探究心に火をつけた。
転機となったのは、味に強いこだわりを持つ肥料会社の社長との出会いだ。土地に合わない肥料成分を見直すため、種苗メーカーも巻き込み、三者で試行錯誤を重ねて独自の肥料を開発。こうした積み重ねが、現在の「大平やさい」の味づくりの基盤となった。
2014年の法人化以降は、「果物より美味しい野菜をつくる会社」を掲げ、付加価値の高い野菜づくりに注力。特にスイートコーンは糖度18度超えのものもあり、アミノ酸量などの数値を測定して品質を見える化することで、胸を張って売れる商品に育てた。現在、売上げの約9割が契約取引で、コンビニバイヤーが試食をきっかけに取引が始まるなど、味が商談の入口になっている。
更に大平氏は早くから海外輸出にも挑戦。輸送に耐える鮮度保持力が評価され、取引先の担当者は「40日かかって届いたレタスがほぼ無傷だった」と驚きを語る。無理難題にも「できない」と言わず挑戦し続ける姿勢が信頼につながっている。
鮮度保持のための設備投資にも余念がない。レタスの硝酸態窒素を抑え「アスリート体質」に育てる栽培法に加え、温度管理を徹底するためのコールドチェーン施設を自ら設計。物流会社で働いた経験を活かし、冷凍食品会社と同レベルの温度管理ができる車両を導入するなど、品質を守る仕組みを整えてきた。
経営管理では、16年から「KSAS」を導入し、現在は原価計算の精度向上に活用。人件費を含めた細かなデータを蓄積し、毎年の作業時間の差などを検証することで、経営判断の根拠を強化している。
一方で、大平氏が最近強く意識しているのが「人材育成」だ。気候変動による猛暑や豪雨、病害虫の増加に対応するには、全社員が栽培の意味を理解し、自立して動ける組織が必要だと考える。外国人スタッフや新人のために動画マニュアルを制作し、「作業のイメージがつかみやすい」と好評だ。現場では若手リーダーが育ち、後輩指導に力を入れる姿も見られる。スタッフの1人は「この会社で働けて幸せ。自分で作ったロメインレタスを初めて食べた時は衝撃だった」と語り、仕事への誇りをにじませた。
大平氏は「農業者の人口を増やし、地域の農地を守りたい」と話す。会社は自分のものではなく「社員のもの」。社員一人ひとりが自分が会社を動かしているという意識を持つことが、農業の未来を支えると信じている。味を追求し、仕組みを整え、人を育てる。大平やさいの挑戦は農業法人が世界へ羽ばたく可能性を示す、1つのモデルケースとなりつつある。









