コマツ事務所を訪問:ファイナンスが販売の鍵/機械で拓くアフリカ農業(10)

AFICATコートジボワール視察の連載10回目は、既に現地で事業展開している日本企業として、建設機械メーカー・コマツのアビジャン拠点を訪問したもようを報告する。視察2日目に訪問し、コートジボワールへの進出や商品の現地普及の取り組みなどをうかがい、意見交換を行った。
コマツの事務所は同社が代理店契約をしているベルギー企業・BIA社の事務所の一角にあり、コマツヨーロッパ(Komatsu Europe International N.V.、本社:ベルギー)コートジボワール事務所長・佐藤太一氏が応対してくれた。本事務所は2024年10月に新設されたコマツの西アフリカ2点目の拠点で、「コマツはアフリカでのビジネスを拡大する非常に強い意志を持って取り組んでいる」という。
佐藤氏はコマツの企業概要とコートジボワールでの取り組みについて説明。説明とプレゼン資料によると、建設・鉱山機械業界で世界第2位を誇るコマツの2024年業績は売上高4兆円超、その内訳は建設機械・鉱山機械(マイニング)の事業が9割を占める。地域別にみると、北米が27%を占め、次いでラテンアメリカ、アジア、オセアニア、欧州と続き、日本は9%だが年々比率が減少。対してアフリカは6%で、徐々に増えている。そして、建機車両における生産拠点は世界中に62拠点あり、西アフリカには主に日本から、情勢によっては中国・インドのコマツ工場から、機械を仕入れるクロスソース体制を取っているとした。
販売については、アフリカ市場はコマツの直営・直販ではなく、BIA社と代理店契約を締結。BIA社は1902年創業、欧州ほかアフリカ仏語圏など多くの国で、コマツ製品をはじめとした建設・鉱山機械代理店事業を展開するリーディングカンパニーである。
オペレーションについては、以前は東京から直轄で運営していたが、欧州の販売を統括しているコマツヨーロッパ内部に、2022年、アフリカ事業部を創設して移管した。そして、西アフリカでは2010年設立のセネガル事務所に加え、今般、新たにコートジボワール事務所を追加した形だとした。
コートジボワール事務所は、日本人3名、中国人1名の計4名のエキスパートが勤務。佐藤氏のみが新車セールス担当者であり、他は皆アフターセールスサービス事業を担当。セネガル事務所のスタッフも全員アフターセールスサービスの担当者となっており、「現地事務所の役割は基本的にアフターサービス」だと述べた。顧客が機械を購入してから、鉱山や建設の現場で起こる問題を代理店の人々と一緒にいかに解決していくかに特化しているとし、売上げについてもアフターセールスサービス事業の方が高いという。サービスの売上げについては代理店・BIA社の取り分になるが、「2台目以降の購入はアフター次第であるため、新車を売るためにアフターを充実させる」と述べ、これはアフリカに限らず世界共通の考え方になりつつあるとした。
「なぜコートジボワールなのか」の質問については、シンプルに「建機が売れるから」だとの答え。国際金価格が高止まりしている中で、マイニング事業が盛んなコートジボワールには、BIA社も大型事務所を構えるなど積極投資を図っており、それに合わせてコマツも事務所を設立。また、鉱山機械のみならず一般建設機械も一定規模の販売が確保できることも理由だとし、それを踏まえて同国事業を強化。配車台数を増やして、西アフリカにおける販売拠点にすることが重要だったと振り返った。
次に、同国に展開している具体的な製品を紹介した。ブルドーザーや油圧ショベル、ホイールローダーなどの鉱山機械・建設機械及び、それに付随した各種部品・アタッチメントのサービスが中心となる。さらにGPSや通信技術を活用した鉱山向け大型機械の管理システム「Komtrax Plus」を紹介。これは、ほぼリアルタイムに車両の位置情報や稼動状態を把握するもので、データから解析した燃費改善・作業改善・生産コスト削減等の提案ができ、こうしたソリューションビジネスも視野に入れていると述べた。
説明の後、視察団との意見交換が行われた。オフィス入口に飾られていたトプコン製品についての質問には、BIA社はトプコンの正規販売代理店を務めており、2018年からトプコンのマシンガイダンス/マシンコントロールなどの機器をモーターグレーダーなどの機械に装着して販売。欧州系の顧客を中心に、100機近くの納入事例があるという。BIA社のねらいは「中国企業との差別化」。価格優位性を持つ中国の建設会社が多く入ってきている中で、建設現場のクオリティを高めることで差別化を図ろうとする顧客のニーズに答えるべく、測量機器や3Dマシンコントロール/マシンガイダンスなどの機能を備えた建設機械が実際に売れているという。農機同様に、土木建築の現場でもスマート化した機械が使われていることを確認した。
次いでサプライチェーンの問題が話題に出た。コマツは日本・中国・インドの工場からコートジボワールに製品を輸入しているが、コマツヨーロッパ本社はベルギーにあるため、書面上はベルギーを通してBIA社に販売する形をとる。それに伴う通関手続きで非常に苦労すると語る。「ベルギーから部品1個持ってくるだけでも通関で2~3カ月と関税がかかる。さらにこの国に輸入した機械を他国に出す場合、また数カ月かかる。陸送で国をまたいで運ぶ場合も各国の通関手続きが必要になる。西アフリカ全ての国でそれぞれのルールがある」と佐藤氏。また、部品の在庫不足・供給問題については、「BIA社が国内に構えている部品倉庫頼みになっているのが現状。コマツの部品倉庫はベルギーにあり、輸入に時間がかかるため、早くしてほしいと言われる」と述べた。
同国における営業戦略については、アフリカに限らず「製品にどれだけソリューションを付帯できるかで勝負している」と語る。モノのコモディティ化が進み、中国製と日本製の油圧ショベルに大きな差がなくなったことを踏まえ、アフターサービスやスマート化などの付加価値の付与に注力しているという。コマツは東京本社にソリューション事業部を構え、「モノ+コト」のソリューションに力を入れており、アフリカにおいて何を強化していくか見極めていくのがこの事務所の役割の1つだと述べた。
さらに、同国で機械を売るのに重要なこととして、(1)ファイナンス(2)本機や部品の在庫のアベイラビリティーの2点を提示。(1)については、日米欧の市場との最大の違いは顧客の資金調達にあるとし、同国ユーザーは資金調達まで工面してくれる会社から購入すると指摘。コマツヨーロッパでは、ベルギー本社にアフリカ向けのファイナンスチームを配して対策を強化しており、ファイナンス契約を進めている。さらにBIA社は昨年5月からマイニングの大口顧客向けだけでなく、一般土木の小口顧客(建設会社)に対するファイナンスも開始した。
(2)については、新車も部品も、受注してからいかに早く顧客に納品できるかがカギになるという。そこでコマツは、今後の納品を円滑化するべく、アフリカ内での在庫ハブ拠点の設置を検討していると述べた。一方、保税倉庫を用いた周辺国への輸送については、政府関係者との調整が必要になることから、1企業のみでの対応が難しい。日本企業同士で協力し合い、日本政府や大使館、JETROなども交えてオールジャパン体制をと
り、税関手続きの簡略化等も含めて、日本全体で同国に働きかけていくことが必要などと語った。
なお、コマツは昨年9月に横浜で開催されたTICAD9(第9回アフリカ開発会議)に出展し、アフリカにおけるコマツの人材開発、先進技術とソリューション、インフラ開発への貢献やCSR活動などの取り組みを紹介した。2026年にコートジボワールに新たに建設機械のメカニックやオペレータのトレーニング施設を設立し、将来的に本体・部品の在庫機能やマーケティング機能なども備えた西アフリカの中核拠点にしていくと発表。同会議ではトレーニング施設のパネル展示や、同施設で利用予定の建設機械シミュレーターなどをPRした。









