地域の話題:八代地域農協・い業センター 畳を未来へ継承/九州特集

今年開催された大阪・関西万博において、農林水産省などが「RELAY THE FOOD~未来につなぐ食と風土~」を開催した。国税庁や文化庁とも協力し、日本の食と農林水産業の魅力を発信するブース展示と日替わりのステージイベントなどが行われた。会場は「伝統をつなぐ」「多様性をつなぐ」「未来へつなぐ」の3つのゾーンに分かれ、食にまつわる各種展示や試飲、試食、食品のサンプリング配布などを実施し、農林水産業の最先端技術を体感できる内容だった。
「多様性をつなぐ」では日本酒、和牛、和菓子、茶などが展示され、床の間の中で記念撮影ができる「い草」ブースが来場者たちから人気を集めていた。会場に現れた畳の床の間はインパクトが強く、多くの人たちがスマホで撮影していた。
同ブースを政府委託事業として担当したのは熊本県八代市のJA、八代地域農業協同組合・い業センターだ。ブースの担当者に聞くと、国産い草と畳のプロモーション活動の一環として出展したという。い草の匂いをかぐ体験もあり、来場者は「畳の匂いがする」と驚きの表情を浮かべていた。畳の原料なので当然なのだが、生活習慣の変化により、和室への親しみが少ない若者たちにとっては、その原料にまで思いが及ばないのは仕方のないことかもしれない。
畳の原料となるい草は、1980年代には熊本だけでなく福岡、岡山、広島、高知などでも栽培されていたが、2023年からは熊本県のみとなった(熊本県農林水産部生産経営局農産園芸課調べ)。また、ピーク時には8000ヘクタール以上にも及んだ作付面積も、24年には319・2ヘクタールに減少。同担当者によれば、1980年代に八代市と八代郡、合わせて7カ所あった集荷所兼入札所も、95年に1カ所に統合されたという。また、クボタから発売されたいぐさ収穫機の生産は2008年に終了。17年に生産者や関係者などの要望を受けリニューアル発売されたが、3年間の限定販売であった。
今年8月10日、熊本県に記録的な大雨(令和7年8月豪雨)が発生。い草農家にも甚大な被害が出た。い草は収穫してから約1年かけて畳表に加工するが、倉庫などに保管していたものが、浸水により使い物にならなくなった。
い草が不足し、その影響で今年は畳1枚の単価が24年より約200円上昇した。また、米価も上昇を続けており、そういった状況を受け、生産者たちは前向きで明るいムードを少しずつ取り戻しているという。
同担当者は「離農や作物転換により、生産農家の数は減少している。外国産や化学繊維などの新素材で作った畳表など、ライバルも多い。だからこそ単価を維持し、高品質で安心、安全な国産の畳表をアピールして未来へと継承したい。また、海外への輸出に関しても、各団体などと共同で進めている」と意気込む。 一方で、い草の植え付けや収穫、畳表の製造など、農家が出荷するまでの工程で様々な機械が必要となるが、メーカーへの働きかけなども行政と共同で取り組んでいるとした。今後の動向に注目したい。









