本格的な増産体制/森林総研・材木育種センターの取り組み(下)

みどりの食料システム戦略は、森林・林業分野の目標として、山に植栽する種苗にエリートツリーが占める割合を2030年までに3割、2050年までに9割以上に拡大することに加え、2040年までに高層木造の技術の確立を目指すとともに、木材による炭素貯蔵の最大化を図ることを掲げている。林木育種センターでは、今年、大型の木製ハウスが完成、より本格的な苗木の増産体系構築へと舵を切りつつある。そこで現在のエリートツリーについての具体的な取り組みなどとともに、今年の3月末に完成した木製ハウスについて管理を担う同部原種課長の坂本庄生氏に話を聞いた。
今年、導入した木製ハウスについてみてみよう。
令和5年度に閣議決定された花粉症対策推進の一環として、苗木の増産体制を強化するため、関東、関西、九州の3拠点に合計9棟の新たなハウスが建設された。
資材価格が高騰する中、木材の方が安価であること、木材の持つ調湿機能が病害リスクを低減させること、環境への配慮、そして官公庁の方針などから同センターでは木製ハウスが採用さることとなった。施設は1棟あたり間口約12メートル、奥行き約20メートルのハウスが3棟連結した構造。理論上は約2万5000本の苗木を収容可能で、国の施設としては最大級の規模となる。令和6年9月に着工し、令和7年3月末に完成した。
現在は試験運用の段階で、順調に進めば令和9年からの本格稼働が視野に入れられている。「民間の大規模施設が主に山林に植栽する苗木を生産するのに対し、この施設は品種の元となる原種の木を育成・管理するという点で根本的な役割が異なる」と木製ハウスの管理を担当する坂本課長は述べる。より多くの苗木からより良い苗木を選抜するための環境を整えることが、この施設の宿命的な役割なのである。
将来的にはLED照明やCO2施用などの環境統合制御を活用し、屋外栽培と比較して穂木の採取量を約2倍に増やすことが可能とみている。量の増加以上に、ハウス内の環境統合制御による成長促進によって都道府県への苗木供給にかかる期間を大幅に短縮できることが最大のメリットである。現状の施設規模で当面の需要は満たせると考えられており、今後の増設は国の政策や各都道府県の受け入れ体制次第だが、現時点では一日も早い本格稼働に向け、準備を進めているところである。
新たに作られた木製ハウスでは、貯蔵した雨水を活用する。既存のハウスでは井戸水を使っていたが、井戸が枯れてしまうことがあった。雨水を緊急用として貯蔵することは苗木育成の安全管理上においても非常に有効である。
また、ハウス内の上部の遮光用パネルにはソーラーパネルが搭載されている。パネルで蓄電池を充電させ、電源不足の際に、電力供給ができるようになっており、遮光による高温対策とともに電力の確保も担う。
「温室なので夏の猛暑で高温になってしまうのが一番の問題だった。遮光カーテンの代わりにソーラーパネルが搭載された木製の板にすることで、遮光して室温上昇を抑えながら、光を電気に変えるというのは画期的」と坂本課長は話す。また、新型のUFO型LEDも準備し、来春の研究から試用していく。(終)









