資材費高騰対策を/JA全中・農業構造転換への重点要請(1)

JA全中(山野徹会長)がこのほどまとめた「農業構造転換集中対策の具体化等に向けた重点要請」を連載する。
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わが国農業・農村においては、生産者の高齢化や担い手不足をはじめとした歯止めのかからない生産基盤の弱体化、生産資材価格の高騰・高止まり、気候変動に伴う高温障害の拡大・自然災害の多発化など、様々な課題に直面している。
他方、緊迫する国際情勢もふまえ、食料安全保障の重要性が広く認識される中で、食料・農業・農村基本法の改正や新たな食料・農業・農村基本計画の策定など、食料安全保障の確保に向けた取り組みが大きく前進し始めたところである。加えて、今後、農業構造転換集中対策の具体化や水田農業政策の見直しなど、重要な政策の確立に向けた大事な局面を迎えている。
ついては、新たな経済対策の裏付けとなる令和7年度補正予算や令和8年度当初予算等において、下記の事項の実現を強く要請する。
記
1 農業関連予算総額の拡大と人件費・物価高騰をふまえた対応
①改正基本法及び新たな基本計画の実効性を確保し、食料安全保障の確保をはかるため、8年度当初予算に加え、「農業構造転換集中対策」の実施に必要な予算の別枠確保をはじめ、「食料安全保障強化政策大綱」や「総合的なTPP等関連政策大綱」にかかる十分な予算の確保等により、農業関連予算総額の抜本的な拡大を実現すること。
②人件費・資材価格・物流費の高騰等の影響をふまえつつ、各種施策における補助率や支援単価、上限事業費等の必要な見直しを実施するとともに、当面の物価高騰に対する「重点支援地方交付金」等を活用した生産者・消費者への支援について、予算を増額した上で、万全な対策を措置すること。
2 農業構造転換集中対策の具体化等と強力な推進
(1)農業者・農地の確保と生産性の向上・低コスト化の強力な推進
①生産基盤の核となる農業者や農地の減少に歯止めをかけるため、将来を見据えた地域計画のブラッシュアップを進めつつ、親元就農を含む新規就農者の育成・確保、教育環境・研修農場の整備、経営継承の推進、雇用就農の拡大、サービス事業体の育成・労働力の確保、地域計画に基づく農地の確保と適正利用の推進、農地中間管理機構の機能・体制強化による農地の集積・集約化等に対する支援を拡充すること。
②生産性の向上が喫緊の課題となる中、新規就農者を含む地域計画に位置付けられた多様な農業者や農作業受託に取り組むサービス事業体等に対し、直播栽培や作期分散等の新たな営農体系の確立、各種栽培情報の分析、草刈りや水管理、防除等の省力化など、生産性向上等に資する幅広い農業機械や施設、システム等の導入支援等を講じるとともに、堆肥舎等の家畜排せつ物処理施設やTMRセンター等を含め、畜産分野における合理化・高度化された施設への転換等にかかる支援を講じること。
③あわせて、農地の大区画化や水利施設の整備、スマート農業技術や新品種の開発・普及など、生産現場の生産性向上や省力化、低コスト化に向けた施策を抜本的に拡充すること。
(2)農業生産・流通を支える共同利用施設の再編集約・合理化、物流効率化
①全国的に老朽化している共同利用施設等の再編集約・合理化に向け、新基本計画実装・農業構造転換支援事業等にかかる必要かつ十分な予算を確保するとともに、都道府県負担のない補助率の引き上げや手厚い地方財政措置、要件の見直しなど、産地で事業を広く活用できるよう、これまでとは別次元の対策として措置すること。また、共同利用施設の再編・合理化を核とした産地の構造転換に向けた検討が進むよう支援すること。
②強い農業づくり総合支援交付金や産地生産基盤パワーアップ事業については、ソフト・ハード一体的な取り組みや新設等の取り組みを強化するとともに、補助率の引き上げなど事業内容を拡充すること。
③畜産生産基盤の抜本的強化をはかるため、食肉・食鳥処理施設や乳業基幹施設、家畜市場、飼料関連施設の再編・整備等に加え、附帯施設・機械の導入・補改修・機能強化等について、補助率の引き上げや地方財政措置を含め、思い切った対策を措置すること。
④物流効率化に対応し、農畜産物の万全な供給体制を構築するため、関係省庁が連携し、集出荷施設の改修やストックポイント等の整備、モーダルシフトの促進、品質保持対策、標準パレットの推進、トラック予約システム等の導入など、サプライチェーン全体の物流効率化を促進するための支援を講じること。
(3)農業生産の拡大に向けた輸出拡大の促進等
①今後日本国内の人口減少が見込まれる中、海外需要の確保が農業生産の拡大に不可欠であることから、輸出産地形成に向けた栽培体制の転換や国内外の流通体制の構築など、輸出に取り組む産地や事業者への支援を拡充するとともに、輸出先国における検疫条件等の規制緩和や事務手続きの簡素化、知的財産の保護など、輸出拡大に向けた環境整備を行うこと。
②海外におけるわが国優良品種のライセンス生産については、政府は産地への丁寧な説明・懸念払しょく等を行いつつ、苗・苗木等の流出防止、生産された農産物の日本への輸出禁止、国産輸出品と競合する海外市場への輸出の制限等の徹底をはじめ、国内農業振興及び国産農産品の付加価値の維持・向上を最優先とした基本ルール・枠組みを確立するなど、万全の対策を講じること。また、同ルール・枠組みの下での具体的な取り組みの検討にあたっては、生産現場の意見を十分にふまえるとともに、産地に対する迅速かつ丁寧な情報共有を徹底すること。
3 持続可能な水田・畑作農業対策の早急な確立
(1)当面の需給及び令和8年産対策
①国の需給見通しにおいて民間在庫の大幅な増加が見込まれている中、食料安全保障の確保等の観点から、政府備蓄米の買戻し・買入れ方針を早期に示すとともに、適正備蓄水準への回復を機動的かつ計画的にすすめること。あわせて、令和8年産の買入れについて、産地で作付け見通しが立てられるよう具体的な入札方針等を早期に示すこと。
②米の需給安定に向け、農業者・団体による長期計画的販売の取り組み等を後押しする必要な対策(「米穀周年供給・需要拡大支援事業」の拡充等)を講じること。
③産地の需要に応じた米の生産や各戦略作物の定着・拡大及び安定供給をはかるため、水田活用の直接支払交付金等の十分な予算を確保するとともに、必要な支援を措置すること。
④畑作物の直接支払交付金(ゲタ対策)の単価見直しにあたっては、畑作物の生産性向上・増産に向け農業者が意欲をもって生産に取り組めるよう、生産費の高騰などの状況を十分考慮するとともに、産地が活用しやすい関連対策の拡充により、農業者への支援水準を維持・強化すること。また、令和9年度以降の水田・畑作政策の見直し(統計の精度向上を含む)とあわせ、ゲタ対策の算定根拠となる統計等について、現場実態をふまえた検証等をすすめること。
⑤新たな基本計画における数値目標の達成など自給率向上に向けて、麦・大豆等の増産に向けた必要な支援を講じるとともに、民間調整保管への支援の拡充など、円滑な輸送・保管等の取り組みへの支援を講じること。
(2)令和9年度以降の水田・畑作政策
①水田活用の直接支払交付金等の現行予算の単なる組み替えとすることなく、「農業構造転換集中対策期間」にふさわしい水田・畑作関連予算の増額とその安定的な確保をはかること。
②新たな基本計画の数値目標をふまえ、生産現場が各戦略作物の生産の維持・拡大に意欲をもって取り組めるような政策の構築や支援水準の設定を行うこと。
③新たな政策への移行にあたり、作付け判断や営農準備の期間を十分に確保するとともに、生産現場や関係者が取り組みやすく、都道府県・市町村や関係団体等の事務負担にも配慮した簡潔な制度及び運用とすること。
④水田活用の直接支払交付金の見直しにあたっては、今後農業者数の急減等が見込まれる中でも、持続的に需要に応じた米や各戦略作物の生産・安定供給がはかれるよう、生産性の向上による水田生産基盤の維持を後押しする支援に見直すこと。
⑤米の輸出や加工用米・米粉用米・飼料用米等について、幅広い米需要への安定的な供給が可能となるよう十分な支援を行うこと。
⑥現行の産地交付金制度について、地域計画の実現及び産地形成に向けた幅広い取り組みを支援する制度に拡充すること。
⑦麦・大豆等の輸入依存穀物については、持続的な増産や生産性向上(排水対策、品種転換、ブロックローテーション・輪作・二毛作等)に資するよう十分な支援を措置すること。
⑧米の安定供給に向け、需要に応じた生産に取り組む意欲ある農業者の経営安定に万全を期すため、生産費高止まりの状況などコストに着目した新たな経営安定対策を構築すること。
(3)米の安定供給体制の確立
①需要に応じた米の生産の着実な実施に向け、国や地方公共団体の役割や産地における推進のあり方等を整理するとともに、生産目安の設定後も、生産現場が需要動向等の変化にも柔軟かつ機動的に対応できる仕組み等を構築すること。
②消費者への米の安定供給をはかるため、事前契約等の長期安定取引や出荷契約の確実な履行を促進する支援・仕組みを構築するとともに、農業者・団体による通年安定販売の取り組みへの支援を拡充すること。
③新たな基本計画に盛り込まれた「官民合わせた総合的な備蓄」のあり方を検討するにあたっては、食料安全保障や不測時における流通の安定に向け、現在の備蓄水準(100万トン)以上を確保するとともに、政府備蓄については価格急騰への対応とせず、大きな不作等への備えとして目的を明確化するなど、必要な法改正とあわせ制度全体を強化すること。また、下記の点を含め、十分に関係者の意見をふまえ、制度検討を行うこと。 〈主な検討課題〉
・政府備蓄関係:棚上備蓄方式を堅持したうえで、主食用米等の需給や価格に影響を与えないような「運用・放出ルール」、需給変動リスクの高まりをふまえた「備蓄期間の短縮」、適正な価格形成を実現する観点で「買入・買戻し価格の設定」など。
・民間備蓄関係:国の役割が後退しないことを前提に供給不足時に機動的に供給確保をはかるものとして位置付けたうえで、流通実態をふまえつつ、民間事業者が不利益を被らないような「支援(保管経費や販売差損への十分な補填等)」、「運用方法」、「制度具体化に向けた円滑なすすめ方」など。









