秋田農業試験場の病害虫防除の取り組み:高温で発生状況変化/秋田県農機ショー特集

秋田県農業試験場生産環境部病害虫チームの高橋良知主任研究員に今年度の成果や取り組みについて取材した。
まず成果として、水稲の高密度播種苗におけるいもち病と紋枯病の防除効果をあげた。「箱剤は100グラムまで使える農薬登録された剤が複数ある。100グラムの使用で防除効果が安定することを各種箱剤の試験で確認し、昨年末に情報発信した」と述べた。
また、最近では100倍に希釈した液剤を、箱当たり500ミリリットル潅注する方法もあり、その処理方法でも効果を得られることがわかった。「密苗の苗箱に箱剤を100グラム施用するのは、農業現場では難しいケースも考えられる。そこで液剤を使うという選択肢もあるということを発信している」とも話す。
箱剤、液剤いずれも十分な効果が得られ、コストもそれほど変わらない。高橋氏は「農家さんにすれば液剤の方が使いやすいかもしれない」との見解である。
近年、紋枯病の発生が高温の影響で増加傾向にあるという。「従来の減農薬の栽培体系では、成分回数が限られるため、いもち病を優先させて、紋枯病の防除が選択されないことがあった。紋枯病は防除しないと圃場内の菌核が蓄積し、年々増える性質があるため、どこかで歯止めをかける必要がある」と高橋氏。これまで紋枯病は主に西日本で発生し、東北ではそれほど大きな被害が出ていなかった。近年の気候変動で発生傾向が変化しており、効果的な方法を選択してほしいと警鐘を鳴らしている。
他の成果として、大豆に液状の亜リン酸肥料を葉面散布することで、ダイズ茎疫病に対して被害軽減効果があることがわかった。青森県で他の病害への効果情報を参考に秋田で茎疫病に適用検証したところ、効果を確認した。試験は令和5年から2年間行い、その成果をまとめて発表した。今年度はドローンによる散布の可能性を検証中だ。農薬に頼らない選択肢の1つとして研究しているとのことである。
園芸分野でのドローンの活用として、高橋氏はネギの害虫であるネギハモグリバエのバイオタイプBに対し、ドローンによる薬剤防除で効果があるのかを検証している。秋田県の園芸メガ団地のような大規模圃場で効率的防除が望まれている。以前、同じ害虫のネギアザミウマについて、ドローンによる薬剤防除で十分な効果が得られることがわかり、情報発信していた。近年、農業現場でネギハモグリバエが問題になっており、現在、ネギアザミウマ同様に対応できるのかを詳しく調査している。「現状の手応えとしては、使用する剤によって防除可能ではないかというところ。あと1年の検証を踏まえて情報発信したい」と話す。
以上を踏まえ、ドローンを活用した防除について、残された課題が整理されてきているとしたうえで、高橋氏は「ドローンには得手不得手がある。上からの散布のみであるため、作物自体の構造やターゲットとする病害虫の生息場所との組み合わせで効果が左右される」とした。
野菜については、対象品目として夏ネギと秋まきタマネギの病害虫に対しての試験研究を進めている。
夏ネギはみどりの食料システム戦略を意識した環境負荷低減のため、減農薬の防除体系確立を目指す。夏場の高温や大雨の影響で軟腐病などの腐敗性病害が問題化しているため、特にその対策を重視する。腐敗性病害対策としてバイオスティミュラント資材の活用の可能性についても検証していく。
秋まきタマネギについても減農薬防除という観点から、まずどんな病気がいつ発生するかを確認しながら、試験研究を実施している。
また、新たな課題として、秋田県以外でも問題となっているタマネギのべと病は、秋田県内の古くからの産地で発生しており、来年度から新規の取り組み課題として、べと病に特化して緊急的に対策を確立するべく予定している。「佐賀県など西日本の産地で問題になっている。それら先進研究の情報を参考にして、秋田での対応を検討する。ネギ、タマネギの産地が成長しようとする中、気候変動による大雨などによって、産地拡大の障壁になっている。そこを打破したい」と話す。その他、国が主導する研究機関に参画し、大豆や花きの試験も実施している。
気象変動による高温や大雨は、病害虫発生に大きく絡む。令和8年から「気候変動」をタイトルとする新規課題をスタートする計画だ。
最後に高橋氏は、農業現場に向けたメッセージとして、「ここ数年の気候変動は著しく、病害虫の発生要素も変化している。我々は、今まで県内で発生しなかった病害虫などに対応してきた経緯がある。普段見慣れない症状、病害虫などを見つけたら、すぐにご相談いただきたい」と述べた。









