秋田県農業試験場の研究シフト:リモ―トセンシング圃場データ活用など、実証進むスマート農業/秋田県農機ショー特集

秋田県農業試験場の企画経営室スマート農業チーム(3名体制)は、スマート農業関連技術の実証や新しい作業技術、機械開発を含めた試験研究を行っている。今回、同チームリーダーの三浦恒子主任研究員、齋藤雅憲主任研究員、石川祐介研究員から現在の取り組みからその先の展望まで話を聞いた。
まず、2024年に発表した成果から。2022年からの3年間、ドローンによるリモートセンシングによって得られた水稲の圃場のNDVI(窒素吸収量の植生指数)を使って、窒素吸収量を推定。圃場全体の生育状況を見える化することができ、それを成果としてまとめた。
石川氏は「実際の現場での使用はまだわずか。測定方法や取得した数値をどう利用するかは標準化されていない。水稲の窒素吸収量とNDVIがリンクすることは先行研究などからわかっていたので、今回、それを検証した」と話す。センシングにドローンを使うことで、人が圃場に入らずにデータ取得できることや圃場全体のデータを取得して、圃場内の場所による違いや圃場間の差異を把握することを目的としている。
試験した品種が「めんこいな」であったことから、今後は県の主力品種である「あきたこまちR」での実証を見据えている。また、圃場ごとの栽植密度や、移植時期の違いなど様々な条件での検証を続けていく。
次に研究中の内容。収量コンバインで取得した収量マップで圃場データを確認すると、圃場内で収量にばらつきがあることがわかる。その圃場マップを基に作成した施肥マップを田植機に読み込ませ可変施肥する。収量マップで圃場内の収量が低い箇所に肥料を増やして散布し、その効果を検証している。収量の高位安定化を狙ったものだ。「圃場の大規模化で、収量の穫れていた圃場と穫れなかった圃場が合筆された際、これまでであれば、均一散布による管理しかできなかった。可変施肥技術を活用することで、部分的な増肥などで、収量の底上げをすることで単位面積当たりの収量を向上させるのが目的」と石川氏。
これは2022年から取り組んでいるが、その年の天候によっても変化する。複数年の治験でその効果を確認してきた。こちらも「めんこいな」での検証であるため、今後は「あきたこまちR」で適切な施肥量の検証なども行っていきたいとしている。
他方で枝豆の収穫調製作業機の開発も行っている。これまで(株)クボタとの共同での実証研究で枝豆用のコンバイン、粗選別機、色彩選別機を開発してきた。今年2月に粗選別機、色彩選別機が発売されたが、現地導入に向けた作業性調査を実施した。今年度は秋田市や横手市の作業現場で実際に使用してもらい、試験場内で取得したデータと合わせて検証。今後の普及に向けた調査を継続している。
開発に携わっている齋藤氏は「大きな差異はないが、現場での使い方がこちらの想定していないものであったり、速度や処理量、精度に対する要望があったりするので、これらのバランスを含めて調査結果としてまとめ、普及を後押しする材料として提供していきたい」と述べる。機械の性能としては十分に出ていて、他県でも概ね好評と評価。秋田市での数週間の実演や鹿角市での導入など、実際の現場に普及し始めている。「粗選別機、色彩選別機を別体にしていることで、既存の機械体系にも導入できる。もちろん一貫体系としての導入も可能。各農家の今の機械体系によって選択できる。例えば、人手不足の現場に色彩選別機を導入してより高品質化を目指すなどは可能」と齋藤氏。
枝豆の生産量日本一を目指す秋田としては、それを下支えする存在にしたいところだ。また、想定していなかったこととして、大型機械の入っている共同選果施設への導入の検討もなされている。「各農家の持ち込む品質にばらつきがあり、夾雑物の量に違いが出る。大型機械に入れる前に、粗選別機で夾雑物の除去をすることで、大体このくらい除去して持ち込めば良いのかという目安を示すことができる」(齋藤氏)といった意外な活用方法も出てきている。
クボタと共同開発したえだまめコンバインについて、現行機はマルチ栽培に対応していないが、現在、マルチ栽培に対応した機械に改良すべく、実証研究を共同で進めている。
齋藤氏は今年の農業機械化ショーの秋田クボタブースにて参考出品される予定だ。今後、市販化されればマルチの有無に関わらず収穫できるようになる。「世界初の自脱型枝豆コンバインとして発売され、マルチ対応へバージョンアップされる。選別精度も従来機の同等以上」と齋藤氏は述べている。
今後に向けた課題として三浦氏は、我々の範疇を超えているとしながらも、「様々なスマート農業技術について、どのくらいの規模の農家が導入すれば最大効率化できるか、もしくは導入を思いとどまった方が良いのかなど、コストに見合う基準をどう示していくか」ということをあげた。研究者の立場としては、研究した数字やデータを示して、そういう線引きをするための技術をつまびらかにしていく。
「結局は規模に応じてメニューを提示し、使い方は現場と相談しながら一緒に模索していくしかない。農業従事者が減少していく中で、スマート農機をどう活用していけば良いか。スマート農機を使うことで機械1台当たりの能率は落ちるかもしれないが、1人で営農できることの方に価値を見出すことになっていく未来もあり得る」と齋藤氏は話す。
また、構想段階のこととしながら、スマート農機を中山間地で使うにあたって、通信用電波が届かないといった問題に対し、低軌道衛星を利用するインターネットサービスやWi―FiHaLowなどの新たなサービスや技術の活用も選択肢として模索していきたい考えだ。









