秋田農家ルポ:三菱一筋60年以上(簗瀬柳蔵氏・徳行氏)/秋田県農機ショー特集

三菱農機販売(株)東北支社秋田支店(秋田県男鹿市船越字根木104)からの紹介で訪れたのは、湯沢市小野町の簗瀬柳蔵さん(85歳)のご自宅。担当する三菱農機販売の菅原一人氏とともにお邪魔した。
柳蔵さんは年齢を感じさせず、かくしゃくとしており若々しい。菅原氏も「80歳の動きではない。1年前に初めてお会いした時にはびっくりした」と最初の印象を述べた。農業歴は63年。23歳で婿入りして以来、今も現役で作業にあたる。80PSのトラクタに乗り、代掻きしているという。柳蔵さんは「婿入りした頃は3町歩くらい。その後、倍ほどに増えた」と振り返る。7ヘクタールだった圃場も委託で規模を拡大。現在は息子の徳行さん(61歳)とその妻の直美さん夫婦とともに水稲17ヘクタール、枝豆3ヘクタールの計20ヘクタールを耕作している。米はすべて「あきたこまち」だ。
所有している機械はすべて三菱製で、トラクタは2台で50PSと80PS。今年購入した田植機はGPS付きの8条植えが1台。6条120PSのコンバインが1台。
「植付速度が速くて良い」と柳蔵さん。疎植仕様で爪が通常の田植機より少ないため、構造上植付けスピードが遅くなってしまいがちだが、最上級グレードのため、スピードが落ちにくいと菅原氏は説明してくれた。
柳蔵さんは63年間の農業人生を三菱製の機械一本でやってきた。そのため転勤していった担当者も含め、全員が柳蔵さんを知っているほどだ。トラクタでの作業は柳蔵さんが担当し、田植機やコンバインの運転は息子の徳行さんが中心に行うなど、役割分担している。代掻機が壊れたため、来年には410センチから450センチに更新する。やれるうちはやるという覚悟の表れだろう。
また、疎植にこだわる。種も苗箱も半分で済むから低コスト。しかも病気が少なく、日が当たって粒も大きく育ち、品質も良くなる。肥料は少し多くする程度。それで70株の田んぼよりも収量が穫れて収益も確保できるという。やはり長年丁寧に培ってきた技なのだろう。
風などに影響されることなく環境に左右されにくいペースト施肥も愛用し続けている。粒状肥料は運ぶ手間があるが、ペーストはポンプでタンクに入れるので体への負担が少なく楽だと話す。「楽に作業をするのも信条」と述べた。だからこそ、長く続けてこられている側面もあるのだろう。
悩みを聞くと、しばらく考えてこんな答えが返ってきた。「ペースト田植機へのペースト肥料の補給時に500リットルのタンクからポンプで供給しているが、満タンになった際に自動で停止する機能があれば」。現状はエンジンポンプを使ってタンクに入れており、満タン時自動停止すれば、張り付いている必要がなくなる。そうなれば、人手を違うところに回せるという。菅原氏はそれを聞いて、同意しながら「田植機の担当者に言っときます」と答えた。
前任の担当者が現在、東北支社の営業支援部に在籍しており、柳蔵さんの意見を聞いて、それを営業支援部でも活かしているという。そのため菅原氏のところにも、前任担当者から「柳蔵さんは何か言ってなかったか」と連絡が来るそうだ。
さらに菅原氏は「柳蔵さん親子はとにかく機械操作が上手。壊れるような扱いをしない」と話し、こんなエピソードを述べた。今年、GPS付きの田植機を導入した日、まずGPSで徳行さんに運転してもらった。天候は悪かったが、真っすぐ植えられているのを確認したという。菅原氏は「こんな天気なのにGPSを受信できているんだなあ」と思いながら作業を見ていた。「徳行さんにGPSどうですか?と聞くと、『切ってる』って。驚いた」という。GPS並みに正確な植え付けだったそうである。徳行さんは「真っすぐ植わっていないと気持ちがよくない」と、普段から気を付けて植えていると話す。柳蔵さんは、昔の機械は今のように便利ではなかったから、前だけ見て植えていると、振り返った時に一部植わっていないこともしばしばだったと振り返る。
2人とも機械への興味が旺盛で、新しいものはすぐに取り入れたいそうだ。菅原氏も「最新技術の中身をある程度理解した状態で問い合わせがある。そのため、こちらとしても話がしやすい」と話す。歴代担当者は全員、柳蔵さんにお世話になっており、柳蔵さんも歴代担当者を記憶している。「1ユーザーさんの面ももちろんあるが、我々が育てていただいている面も強い。柳蔵さんの家で機械を使っていただいて、ご意見を聞いて改善されたものもあっただろうと思う」と話す。
柳蔵さんに三菱の存在について聞いた。「機械はトラブルがつきもの。故障時にすぐさま対応してもらえるから心強い」と、全幅の信頼を置く。菅原氏も「一人一人のユーザー様と向き合っていくことは、社員全員心掛けていること」と述べた。
反対に菅原氏から見た柳蔵さん、徳行さんという存在は、「徳行さんは何かと話しやすい。『うちの機械どうですか?』と聞くと、機械のことも分かるし、GPSのことも分かっていて、的確な改善点が即座に返ってくる。販売側の立場では見えていない部分を、ユーザー目線で指摘していただいて、しかも操作も我々より上手なので、理解度も高いのかなと思う」と。柳蔵さんについては、「とにかく優しい。対等な立場で見ていただいていることを随所で感じる。三菱のセールスというよりは、私個人を1人の人間として見てもらっている。同じ農業従事者として尊敬できる方です」と述べた。
今年の収穫は早めに始めて、取材時点(9月24日)で半分ほどが終わっていた。収量、品質ともに良好で一等米がほとんどだそうだ。柳蔵さんは「くず米がほとんど出ていない」と話す。昨年は稲が倒伏して大変だった。機械のトラブルで2、3日作業が止まったが農協のフォローでどうにか乗り切ったという。「その時に農協から借りて、初めて他社の機械を使った。これまで他社の機械に乗ったことがなかった。三菱の良さを実感した」と徳行さんは振り返った。
柳蔵さんも「種苗交換会の農機ショーに行っても三菱以外はみない」と言い切る。60年間、三菱製の農業機械一筋。実は、家電から何から全部三菱だと明かす。「何はともあれダイヤのマーク」と柳蔵さん。三菱ブランドを心から信頼している。
これからの展望を聞くと柳蔵さんは「やりたいという若い人が集落にいない。まずはやれるところまでは働いて、地域を応援したい」と話す。徳行さんとしては、「うちの圃場を維持するだけでなく、集落くらいはやってあげられるようになりたい」と述べた。
柳蔵さんの趣味は大工仕事。自宅の縁側も、パイプで組んで増築した車庫も自作。DIYを超えた建築の域に担当の菅原氏も驚きを隠さなかった。大工仕事は独学で身につけたそうだ。ここにも仕事の丁寧さが光る。









