各社の対応:大型機の需要増/埼玉県特集

(株)関東甲信クボタ(冠康夫社長)の長嶋純第1営業部長兼第2営業部長は最近の販売動向について「管内は小型・中型機が主流だが、担い手農家や法人化による規模拡大により、大型トラクタやコンバインの需要が目立ってきている」と述べた。 2024年は前年に比べ販売台数、売上げともに好調だった。今年に入ってからは、7月の価格改定前の駆け込み需要もあり、ここまで順調に売上げをキープ。近年は毎年のように価格改定が行われており、農家の間でも「またか」との反応が多いが、社会全体の物価上昇を背景に、ある程度は受け入れざるを得ないという雰囲気もあるという。
サービス事業は引き続き「修理文化から整備文化へ」の転換を進めており、壊れる前の点検・整備を促し、更新需要の前倒しにもつなげていきたい考えだ。
年内のイベントとしては、11月に県内2拠点(鴻巣・川越)での実演会、12月に「クボタスマート施設園芸展」を予定。実演会では、自社製品のトラクタや自動操舵などのスマート農機をはじめ、各メーカーとのつながりを活かしインプルメントなども幅広く揃える。見込み客に絞り込んだ集客で、実機を体験してもらいながら販売効率を上げる戦略だ。
「クボタスマート施設園芸展」は今年で3年目。異常気象による野菜価格の変動が続く中、環境を制御する栽培手法への関心が高まっており、施設園芸の将来性は高い。首都圏に近い立地を活かし、農作物の埼玉ブランド推進や農業への企業参入の動きも重なり、今後の成長分野として注目している。
長嶋部長は最後に「米価や需給動向に一喜一憂することなく、イベントやサービス事業を通じ、計画的な販売活動を進めていくことが重要だ」と語り、来春に向けてスピード感をもった営業活動を展開していく方針を示した。
ヤンマーアグリジャパン(株)関東甲信越支社(杉山靖彦支社長)関東営業部埼玉ブロックの2024年の実績について、右島保エリアマネージャーは「昨年は米価高騰の影響で全国的には農機需要の高まりがあったが、埼玉県については作況指数が振るわず、その恩恵を受けることができなかった。4月の価格改定の駆け込み需要に助けられた」と述べた。
主要機の中ではコンバインが特に好調で、機能を集約した「YH448A,EJU」が全体を牽引。米価高止まりへの期待感とあいまって、この流れは今年も続く。
2025年は、顧客が購入する際の選択肢として、常にヤンマー商品を選んでもらえる関係性を築けるよう、日ごろからの提案活動を欠かさないようにしたいとし、日々の訪問の中で、顧客情報を見直し提案活動を行うなど、サービスの向上につなげていく。
また、社内で営業担当者の取り組みを共有。成功だけでなく失敗についても情報共有することで、ブロック内に限らず社内の営業担当者にも気づきを与えている。特に力を入れている実演の共有は、トレンドを取り入れた実演・提案のアイデアにつながっている。
サービス事業では、点検受注による仕事量の確保が欠かせない。各拠点の増員が難しい中、急な修理対応を避けるべく、時期前点検の重要性は一層増している。整備担当者からの提案は、顧客にとってもより受け入れやすいため、提案の際には営業担当者と整備担当者がペアで推進することを心掛けている。
今期はプラントなど大きな案件が数字を引き上げているが、基本である「担い手への訪問活動の徹底」に徹することで、顧客の需要に1つ1つ応えていきたい考えだ。
(株)ISEKI Japan関東甲信越カンパニー(瀧澤雅彦社長)の2024年の状況は、台数ベースで田植機が弱含みだったものの、トラクタとコンバインは大きく伸びた。特に、管内で主流の30馬力クラスのトラクタが売上げを牽引し、全体的には前年を超える結果となった。
今年に入ってからも好調が続き、トラクタ、田植機、コンバインの全てが前年より伸長。台数ベースで田植機・コンバインともに順調な伸びとなり、8月までの売上げは、好調だった昨年以上の実績を確保できた。
好調の波は恒例の展示会にも如実に現れ、昨年を大幅に超える台数・売上げを記録。価格改定前の駆け込み需要を見込み、例年より1カ月前倒して6月に開催したことが奏功した。「購入を前提に来場する人が増えた印象だ」と広瀬三喜男埼玉営業部部長は振り返る。会場では、新型トラクタ「BFREX(BF)」や新型コンバイン「フロンティアマスター(FM)」の実演にも力を入れた。
昨年から続く好調の要因の1つとして「誠実に実演を続けてきた結果」をあげる通り、展示会以外の営業活動でも実演は欠かせない。ユーザーを訪問して商品を提案し、個別実演につなげていく戦略をとる。そのためには、とにかく営業担当の訪問件数を増やすこと。年末に向けて税金対策を考えるユーザーが増えるので、この時期の活動は特に重要だという。「ユーザーが機械投資に意欲的なタイミングで訪問し、良い商品提案ができれば、実績につながる。作業機も含め、提案強化を図っていく」と広瀬部長は力を込めた。
下期は、Chervon社・EGOシリーズのバッテリー式電動芝刈機にも注力する。草刈り関連機の需要増を背景に、社員一丸で本格的な販促活動を展開していく。
三菱農機販売(株)関東甲信越支社(平木郁夫支社長)南関東支店の角田富穂支店長は、今年の状況について「トラクタは昨年に比べてやや減少しているが、コンバインは米価の上昇を背景に需要が高まっている。田植機は6条、8条タイプが主力。最近は、価格の手ごろさもあり、色彩選別機の引き合いが強い」と述べた。
一方、ディスクハロー「KUSANAGI」の需要は落ちている。この要因について「管内に多い70馬力クラスのトラクタ所有者にはマッチしづらい点があった」とし、今年8月に発売された、60~105馬力向けの新型「KUSANAGI Plus MDH2022」を重点的に推進していく方針だ。
有機農業関連では、今年2月に、三菱マヒンドラ農機(株)と埼玉県幸手市が有機米の産地作りに関する連携協定を締結したニュースが記憶に新しい。これにより、紙マルチ田植機の導入・普及が進められており、同支店は地域の拠点として、農機のメンテナンスを中心に担当する。
これ以外でも、整備・修理事業の需要は拡大している。農家の高齢化に伴い、新機購入より修理を選択する農家が増えているといい、特にコンバインの修理件数が多い。農家が「あと数年使えればよい」と考えるケースや、農機への投資を控える傾向が背景にあるが、結果として、同支店の整備・修理事業の比重は高まっており、高賃作業による収益確保を目指している。
(株)トミタモータース(桑波田信久社長)の最近の状況を聞くと、桑波田社長は「2024年後半は好調で、特にトラクタの動きが目立った。しかしその後、農機の品薄状態が続き、今年の売上げは前年並みに留まっている」と述べた。「受注の手応えはあるのに、物がない」というジレンマに悩まされている。
新車の品薄状態に引きずられるように、中古市場も逼迫している。数年前は売れなかったような型落ち機種が高値で取り引きされている状況だといい、良質な在庫確保が大きな課題だ。
品薄状態の影響で実演会が中止になるなど厳しい状況が続く中で、着実に成果を上げているのがYouTubeによるPR活動だ。同社のチャンネルでは、農機の紹介や実演などの動画が500本以上あげられ、登録者数は5000人超。最近は草刈機の反響が大きく、動画をみた人の来店・購入が増加するなど、新たな販促手段として定着しつつある。
また、以前から小規模で実施していたドローン農薬散布請負事業が、近年急速に拡大している。農薬販売と合わせて高収益事業となっており、専任社員を配置するなど本格的な事業化を進めている。
今後の方向性について桑波田社長は「物販依存からの脱却」をあげた。前年比130%と好調の整備事業をはじめ、請負サービスやレンタル事業の拡充に力を入れるとともに、法人向け展示会やスマート農業関連商品の販促にも注力していく。
(株)ホソダ(河口淳子社長)は、2024年の経常利益が前年比4~5%上昇し、過去最高の水準となった。これについて河口拓也専務取締役は、「補助金の活用で、大型農機が出るようになってきている。台数的には、田植機とコンバインが減少、トラクタは前年並みだったが、1台当たりの価格が上昇しているため利益を維持できた」と述べた。今年に入ってからも売上げが10%近く上昇。農機への追加投資への気運の高まりを感じるという。
以前から、社内のICT化を推進してきた河口専務。最近は、LINEを使った顧客対応や動画送信による故障診断などで、作業の効率化に取り組んでいる。さらに、FAXや電話での受注方法にもICTを活用できないか検討中。その視点は社内だけに留まらず、顧客である農家や販売店のデジタル対応への支援にまで向き始めている。
AIの積極利用にも前向きで、既に社内業務の効率化に向けChatGPTを導入済み。社員には「まず、AIに聞いてから上司に聞く」という文化を推奨しており、将来的には修理相談や部品判別など農機サービスの領域でもAIの活用を構想している。
ただし、AIやDXの導入は営業マンと顧客の関係性を希薄にする恐れがある。そのため「時代の変化に適応しつつも、人間的な部分と効率化を両立させることがカギ」と強調した。
来年70周年を迎える同社。最新技術を採り入れながら、これまで培ってきたブランド力や信頼関係を強みに、地域での存在感を高めていく。









