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令和7年10月13日発行 第3571号 掲載

北大教授・野口伸氏が脳のデジタルツイン展望/農業WEEK

 1~3の3日間、千葉市美浜区の幕張メッセで開催された「第15回農業WEEK(通称J―AGRI TOKYO)」では連日様々な特別講演が開催された。1日に開催された北海道大学大学院農学研究院農学研究院長・野口伸氏による「スマート農業技術の今後の展望」の概要をみる。
 野口氏は、日本がアジア・モンスーン地域に適用するスマート農業技術のトップランナーであり、日本政府は2030年までにスマート農業技術を活用した面積を50%にすることを目標に掲げていることを踏まえ、スマート農業の普及拡大に求められる技術と社会システムについて論じた。
 日本の食料自給率は2022年度にカロリーベースで38%、生産額ベースで58%となり、G7内でも最低水準。さらに日本農業は農業人口の高齢化と減少が最大の問題となっており、今後の食料安全保障の確保のためにも食料の安定供給が欠かせず、この難題に解決する術としてスマート農業が貢献すると語った。
 野口氏はスマート農業のポイントとして、圃場のフィジカル空間において農作業履歴や気温などの環境状況、農作物の生育状況などのデータを収集し、サイバー空間にデータを飛ばしてビッグデータをAIで解析、そこから有用情報を抽出してまた生産現場にフィードバックして営農に活用するというSociety5・0の実現を目指していると指摘。
 2050年におけるスマート農業の姿は、人工衛星やドローン、各種センサーで収集したフィールドデータをAIに学習させて、サイバー空間に農業現場を構築し(バーチャルファーム)、シミュレーションや生育モデルの作成を経て、現実の農地にフィードバックする「農業デジタルツイン」の構想が重要になると説明。デジタルツインによりAIとロボットを共進化させて現場適応能力を高めて、AIロボットが最適な農作業を実現するとした。
 その一例として、▽小型AIロボット群を利用して24時間作業▽リモート農業により1人で5倍の作業量▽大変な作業はAIロボットが行い、人は楽しみながら農作業を行う。将来にわたりウェルビーイングの高い社会を構築する―などを示した。
 そして、それに向かう道筋として野口氏らが取り組んでいる研究について紹介。北海道大学のスマート農業教育研究センターにロボット農機の遠隔監視システムを設置し、北大圃場にてロボットトラクタ2台、岩見沢市の水田にてロボットトラクタ1台、羅臼町のワイン用ブドウ畑にてEVロボット2台を監視・操作するリモート農業を実証。ロボットトラクタは無人作業を基本とするが状況に応じて遠隔操縦も可能。農業支援サービス事業者がロボットを所有し、レンタル・作業受託する想定で、実証の結果、生産コスト・作業時間が減少し営農利益改善の効果が見られたと述べた。昨今は複数の無人・有人ロボット農機による協調作業で何台で行うと最も効率がよいかをサイバー空間のシミュレートで検討し、岩見沢圃場においては9台が最も効率的であったと報告。
 一方、羅臼町のブドウ畑のEVロボットは電動式見回りロボとなっており、運搬・防除なども行える。LiDAR技術により周囲環境を調べてAIで精緻に認識し、障害物などを検出。8つのノズルをコントロールして可変防除ができ、夜間作業も可能という。また、野口氏らは糖度などの品質を認識し、それに基づいてAIで収穫を判断し自動収穫するブドウ収穫ロボットの開発に取り組んでいる。
 そして、こうした技術の現場実装に必要なこととして、スマートアグリシティの構想を紹介。スマート農業は自動化とデータ利用がポイントであり、特にサイバー空間の利用拡大が重要となる。スマートアグリシティの構築を通して、デジタルインフラを整え、地域内に効率的に時空間データを蓄積・分析できるデータセンターを整備することが必須であるとした。また、ロボット農機は自動化から知能化に進化し、これまで以上にAIが重要になると指摘。今後は農作業を請け負っていく農業サービス事業者が利用できる技術が必要であり、リモート農業やデジタルツインは農業に大きな変革をもたらしていくなどと展望した。

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