防護衣着用義務化のいま/チェンソー特集

チェンソーでの切傷事故を如何に減らして、労働安全を実現、確保していくかは林業界にとって対応を迫られる、永遠の課題でもある。とりわけ、足場の良くない急傾斜地での作業を余儀なくされる我が国の林業にとっては安全向上を図っていくためにも避けられないテーマとなっている。
足場の悪い山の中で、チェンソー等を用いて、重量物である立木を伐倒する林業。労働災害の発生率が高くなっており、1年間の労働者1000人当たりに発生した死傷者数の割合を示す「年千人率」は、全産業の中で最も高い状況は変わらない。このため、チェンソーの伐倒作業時などでの的確、適切な安全対策の推進が求められている。 これまで「切れ・こすれ」に分類される事故が大きなウエートを占めてきた林業労働災害をみると、チェンソー作業にあっては下肢の切創防止対策が大きな課題であった。チェンソーを使っての伐倒作業等では、労働災害の約7割が下肢で被災している。
チェンソーによる被災部位を調べた調査・研究によると、被災位置と防護衣の防護範囲を重ねると約6割が防護範囲に入るという。災害防止に防護衣が役立つことを示すものだが、我が国においては、林業・木材製造業労働災害防止協会(林災防)が平成20年になってようやく災防規定に防護衣の着用の努力義務が盛り込まれるなど、対応・対策として決して素早いものではなかった。
しかし、平成27年の厚生労働省による「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」が作成され、平成30年12月27日の「労働安全衛生規則の一部を改正」を経て、防護衣の着用が義務化された。平成31年8月1日から施行されており、今では、チェンソー作業での防護衣着用は自然な風景、当たり前のこととなった。
この間、農林中央金庫による導入支援などもあって着実に現場に浸透。この10月に鳥取で開催される日本伐木チャンピオンシップ(JLC)の出場規定でも防護衣着用を義務化していることなども手伝って、標準化された。取り扱い企業もチェンソーメーカー、商社を中心として増えており、林業機械化協会主催による「森林・林業・環境機械展示実演会」でもすっかり定番商品の1つとなっている。
改めて、防護衣に代表される 保護具の選定のあり方を確認すると、防護性能が高いことはもちろん、作業性が良く、視認性の高い目立つ色合いのものであって、使いやすい機能を備えたものを選ぶようにする。
とりわけチェンソーを用いて伐木等作業を行う場合は、労働安全衛生規則第485条で「事業者は労働者に下肢の切創防止用保護衣を着用させること、また、労働者は下肢の切創防止用保護衣を着用すること」と定められている。
その際、「下肢の切創防止用保護衣には、前面にソーチェーンによる損傷を防ぐ保護部材が入っており、JIST8125―2に適合する防護ズボン又は同等以上の性能を有するものを使用すること」「必ずJIS適合品あるいはclass1試験に合格した製品の使用を徹底すること」を要請している。また、チャップスの着用については、「留め金具を確実に留めた上で、左右にずれないよう、適度に締め付けて着用してください」と注意を喚起している。
加えて防護衣の使用上、注意しなければならないことがある。これまでチェンソー作業での防護衣着用に取り組んできた森林総研主任研究員の鹿島潤氏は、(1)防護衣は消耗品(2)防護に限界があること(3)適した防護衣を選択すること(4)視認性(5)適切なメンテナンスを行うことを求めている。









