土の健康リスク解明/関東農政局がみどり戦略勉強会

関東農政局は8日、みどりの食料システム戦略勉強会(第35回)をオンラインで開催した。これは、関東農政局が同戦略に関係するテーマについて毎月開催しているもの。今回は「土づくりと環境負荷低減」をテーマに、福島国際研究教育機構土壌ホメオスタシス研究ユニットユニットリーダーの藤井一至氏が「食料増産と環境負荷軽減を両立する土壌管理を求めて」と題し講演した。
土壌ホメオスタシス研究とは、土壌の物質生産・循環の恒常性喪失と回復の機序を解明することで、土壌の健康リスクを明らかにし、本来の機能や価値の再構築を目指す研究。土壌の物質循環機能を強化することで、肥料削減や炭素貯留にもつながるという。
藤井氏は良い土の条件として、▽通気性、排水性が高く軟らかであること▽保水性、保肥性が良いこと▽中性であること▽病気にかかりにくいこと―をあげ、肥沃な土地は地球の陸地面積の11%に過ぎず、そこで60億人分の食料生産を賄わなくてはならないことが、飢餓や貧困、ひいては戦争の原因にもなっているのではないかと指摘した。
日本の土は、火山灰由来で酸性の黒ボク土が多いため、多くの畑では、石灰や堆肥で酸性を緩和し微量元素を補給する必要があるが、このような土づくりを行うことによって畑作適地にできると説明。一方水田は、土壌の酸性を矯正しリンを溶解させる仕組みをもち、これが最大の強みであるとした。しかし、水田から地球全体の10%ものメタンが排出されていることを問題視。近年は、中干し延長や節水栽培、不耕起栽培などを実施することで、水田からのメタン排出を削減する取り組みが進んでいると述べた。なかでも節水栽培は、メタン排出を5~9割減らし、労働力や水量の削減にもつながることから、大きな期待が寄せられているとした。
ただし、乾田直播や節水栽培では稲の根が畑作向きの形状に変化するため、地域や土壌の違いによって収穫量にかなりの差が出てくる可能性があるとし、注意を促した。 また、水田では灌漑水によって多くの栄養分が供給されるが、節水栽培の場合はこれが少なくなるため施肥が一層重要になるとした。灌漑水由来のケイ素が減少すると稲の防御力が低下し、カメムシ被害等が増えることも考えられるとし、今後は、ケイ素をはじめとした栄養素の補給方法など、幅広い知見を収集する必要があると述べた。
肥沃で健康な土を維持するには土づくりと堆肥が重要だが、逆に堆肥が多過ぎると環境汚染源になってしまうため、「堆肥の上限値が必要なのではないか」と提言。そして「炭素貯留に効果がある不耕起栽培や、メタン削減につながる節水栽培など、各技術には様々なメリットがあるが、これによって農業が抜本的に変わるわけではない。これらを1つのオプションと考え、地域に合ったものを選んでほしい」と、適地選抜の重要性を強調した。









