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令和7年8月25日発行 第3565号 掲載

成長著しいコートジボワール/機械で拓くアフリカ農業(1)

 既報の通り、JICA(独立行政法人国際協力機構)はアフリカ地域に日本の先進的な技術の導入や農業機械化を推進するため、AFICAT(日・アフリカ農業イノベーションセンター)を立ち上げ、その一環でこのほど、重点支援5カ国の1つであるコートジボワールの現地視察を行った。この連載では、視察を通じて浮かび上がったコートジボワールの農業及び農業機械化の実情をみていく。
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 アフリカ54カ国のうち、なぜ今コートジボワールなのか。
 改めてAFICATの設立意図を確認すると、AFICATはJICAが推進し、アフリカ諸国における先進農業技術の導入促進を官民連携で実施する事業。2019年8月に開催されたTICAD7(第7回アフリカ開発会議)にて設立が提案されたもので、アフリカでビジネス展開を検討する日本の農業関連企業を対象にアフリカ進出を支援し、アドバイス、展示、実証等の支援を行い、アフリカ諸国における先進農業技術の導入促進を図っている。2022年2月からタンザニア・コートジボワール・ナイジェリア・ガーナ・ケニアの5カ国で順次稼働し、昨年2月より新フェーズとして引き続き活動している。
 AFICAT対象5カ国のうち、東アフリカに位置するケニア・タンザニアに比べて、西アフリカのコートジボワールをはじめとした3カ国は未だに日本企業において進出先としての関心が低いことなどを踏まえ、前回(2022年)のタンザニア視察に続き、今回はコートジボワール視察を実施する運びとなった。
 この関心の違いについては、ケニア・タンザニアは、英語圏であることや、既に多くの日本企業が進出済であること、農業機械化がある程度進んでいることなどの要因から、両国は日本の農業関連企業等にとってアフリカの中でも比較的進出しやすく、関心が高いとみられている。それに対してコートジボワールは、フランス語圏であり、東アフリカに比べ地理的に距離があること、現地の農業事情に関する情報が乏しく未知の領域が大きいなどの背景から、先の2カ国に比べ進出におけるハードルが高く感じられ、日本企業の関心も低いのではとみられる。
 しかし、見方を変えれば、コートジボワールはまさにこれから本格的な農業機械化が始まる地であり、今後の伸びしろが大きいフロンティアだとも言えよう。同国は西アフリカ地域を牽引する経済大国であることから、地域発展に与える影響が非常に大きく、西アフリカ展開の拠点やハブとしての機能をもつ期待が高まっている。また、米生産においても国内米需要に対して供給が足りず、輸入に頼っている現状を解決するため、官民挙げての米増産が図られており、米生産における機械化ニーズは非常に高い。
 そうしたポテンシャルを裏付けるべく、同国の基本情報及び農業の概況データをみる。
 コートジボワールは、人口2887万人(2023年)、面積32・2万平方キロで、GDPは787・9億ドル(同)、経済成長率は6・4%(同)を誇る。これはUEMOA(西アフリカ経済通貨同盟)8カ国のGDP合計の4割を占め、西アフリカ地域を牽引する経済大国である。同国は1960年に旧宗主国のフランスから独立して以来、カカオやコーヒー等の生産・輸出拡大を推進し、安定した高い経済成長率を誇り、特に1960~70年代に年平均8%もの経済成長を遂げたことから「イボワール(象牙)の奇跡」「西アフリカの優等生」と呼ばれた。その後、2000年代~2011年までに2度の内戦が勃発。その爪痕は今も施設・道路の破損やインフラ不足の街並みなどに色濃く残っているものの、内戦やコロナ禍による経済停滞を乗り越え、今再び力強い経済成長を見せている同国に、世界からの関心が集まっている。
 同国の基幹産業は農業及び農産品加工で、GDPの約2割を占め、就業人口の45%が農業に従事。なかでもカカオ・カシューナッツは生産量世界一を誇り、換金作物として両品目をはじめ、綿花、コーヒー、天然ゴム等が生産・輸出されている。農作物の輸出額はコートジボワールの全輸出額の40%を占め、カカオ調製品等の加工品を含めると約6割を占める。
 さらに米については、都市部を中心とした需要増に伴い消費量が増加。需給のギャップが大きく、消費量の約半分を輸入に依存しているため、同国政府は2030年までに米の自給達成と輸出への転換を目指している。肥沃な低地が多く、温暖な気候及び豊富な水資源(年間平均降水量1200~1400ミリ)に恵まれ、引水の容易さなども揃った同国の農業ポテンシャルと、米生産の成長可能性は非常に高いといえる。さらに稲作の収穫面積が広く、収穫量が少ないため、機械化による生産量増加の大きな可能性を秘めている。
 同国における米の生産性は1ヘクタール当たり2・9トンとなり、世界平均の4・7トンに比べ約6割に留まっている。これは、農林水産省やJICAによると、▽資金調達の困難・金融アクセスの制限▽農業機械化の遅れによる耕作面積拡大や収穫作業の効率化が困難▽肥料、高収量品種の低普及率▽灌漑システムを含む施設の未整備などインフラの不足▽バリューチェーンの段階ごとの連携不足▽収穫後の加工品質の低さ・ロスの発生―などが要因としてあげられている。 金融アクセスについては、農業セクターへの銀行融資は全体の6・0%と限定的であり、農家及び関連零細企業に対する生産投資不足が顕著。農業者や農機サービスプロバイダーは機械を導入したくても資金が足りない状況に陥っている。
 こうした状況を受けて、コートジボワール政府は農業政策として第二次国家農業投資計画(2018―2025)や国家稲作振興戦略2(2020―2030)、国家農業機械化戦略(2015―2020)を推進。国家稲作振興戦略2では2025年までの高品質米による自給達成と、2030年までの米の大規模輸出国化を目標に据え、新たな戦略の柱として灌漑水田の振興や整備による効率的な稲作開発、高収量品種の導入、稲作バリューチェーンの機械化促進を通じて米の生産性を高めていくとしている。また、国家農業機械化戦略では機械化サービスを提供する農機サービスプロバイダーと連携して農業機械化を進め、農機サービスプロバイダーが農民への賃耕を行う形態を推進している。
 これに対応して、日本政府はコートジボワールを西アフリカにおける重要国の1つに位置付けて、様々な支援を行っている。その一環としてJICAが実施しているコートジボワールに対する農業分野の取り組みでは、同国が2008年のCARD(アフリカ稲作振興のための共同体)フェーズ1から参加し、技術協力プロジェクトPRORIL2(国産米振興プロジェクトフェーズ2、2021―2026)や、無償資金協力「稲作分野における機械化サービス向上計画」、AFICATなどの事業を推進。PRORIL2では日本の農業機械を導入し、賃耕など各種農作業を請け負うサービスプロバイダーへの操作・メンテナンスおよびマネージメントのための研修や、政府職員に対して収穫後処理に関する技術指導などを実施しており、今回の現地視察では、PRORIL2で導入した農業機械の稼働状況や、PRORIL2事務所なども確認した。
 農業機械化のポテンシャルが非常に高い同国において、当局も機械化を積極的に進めており、日本としてもこれに協力を惜しまず、PRORIL2やAFICAT事業を通じて日本の農業機械技術の導入を進めている状況がみてとれる。

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