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令和7年8月25日発行 第3565号 掲載

農家ルポ:米米飯㈱(酒田市)/山形農機展特集

 酒田市熊手島の米米飯(株)の阿部恒基社長(74歳)は、江戸時代から続く農家で育ち、昭和44年から就農している。当初は「農家をやりたくなかった」ため、自ら鉄工所を興し、関東地方をはじめとした全国で仕事をしてきた。これまで、羽田空港、TBSの放送センターに使用された鉄骨を製作し、施工してきた。しかし子供の頃から農作業を手伝ってきたため、結局就農することになり、以来鉄工所と農家の二刀流で働いてきた。
 当初の作付面積は3ヘクタールだった。
 現在の面積は80ヘクタール。品種ははえぬきが45ヘクタールとホールクロップを35ヘクタール栽培している。その他、ホールクロップの刈取りからラッピングまでを10ヘクタールほど、田起こしから播種、除草剤散布までを1・3ヘクタール請負っている。
 従業員は5名で50代が2人、30代が3人(うち2名が女性)だ。50代の1人を除いて、農業未経験者だという。
 同社はスマート農業を推進しており、ドローン、自動操舵システム、GPSレーザーレベラーなどを導入し、経験が浅い人でも作業ができるように、また、省力化により従業員の身体に負担が掛からないようにしながら経営面積を毎年増やしている。来年も7ヘクタールほど増える予定だ。
 「現場に行くと、近隣の人が請負作業を依頼してくるから、現場には行かないようにしている」と、阿部社長は笑う。
 「周りから見れば、もっとできるだろうと思われている。圃場の条件により請負えないところもある。まずは100ヘクタールを目指す」とした。
 水稲は全て乾田直播を導入している。
 鉄工所を経営しながら慣行の移植は難しいと考え、13年ほど前から導入した。「地域では誰もやっていなかったが、幼稚園から一緒の同級生と共に我流で進めてきた」と、一気に乾田直播に切り替えた。その結果、1年目は大失敗。除草のタイミング、適切な資材など、確立するのに5~6年かかったという。今では、他県から見学者も来るほどになった。
 それでも今年は例年になく苦労した。4~6月まで雨が続き、播種できず、終わったのは6月半ばだった。「サブソイラーで田を壊して穴をあけ、水を抜くようにしてとりあえず田を乾かした。それが功を奏し、播種できるようになった。普通はやらないやり方だ」と阿部社長。
 その方法を提案したのは、同社の担当である(株)ISEKI Japan東北カンパニー山形営業部庄内中央営業所の菅原信幸所長だ。春先は連日2人でどうするか議論したという。
 同社が所有する井関の農機は、トラクタが4台(TJV703・TJV985・TJV68・TJ75)と、コンバインHJ6130、汎用コンバインHC320。その他、ドローンや自動操舵システムも井関から購入してしている。井関はこれまで機械と技術、情報で阿部社長を支えてきた。
 今回菅原所長は、田を壊して乾かす方法の他に、(株)冨山の水稲直播種用のカルブレンドでコーティングした種籾を播種する方法を提案した。寒冷地でも発芽率95%を誇る同剤は、新潟県内で300ヘクタール以上の圃場で使用されている。そのため通常10アール当たり8キロだった播種量が、3・5キロで済み、コストを大幅に下げることができた。現段階でこれまでと遜色なく生育している。
 「今年のような天候の時に、どうやって前に進んでいけばよいか、今後のために考えていかねばならない。今回菅原さんの提案で大変助かった。この方法でやれば100ヘクタールにも広げられる」と、期待する。新しい技術や資材を使用することはなかなか慎重になるものだが、阿部社長は常に前向きに進むために様々なものを吸収し続け、柔軟に対応している。
 阿部社長は鉄工所の仕事で全国を回ってきた。そこで気になるのが、その土地土地の農業のやり方だ。「全国の稼いでいる農家のやり方を見ると、稲作一本だけでなく、麦や大豆など2~3の仕事をしている。そうしないと儲からない。気候の変動でこれまでできなかったこともできるようになっている」と語り、いかにして農業で儲けるか、全国の農家を参考に、自分ができる方法を探している。
 阿部社長は鉄工所を後進に譲り、これからは農業に専念する考えだ。まずは管理圃場を100ヘクタールに広げる。これは2~3年で実行できるだろうとみている。
 今後の目標を伺うと「乾田直播を極めていきたい。乾田直播を13年やってきたが、今回のようなことは初めてだった。今後変わってくる気候への対応、省力化、低コスト化の面からも、まだまだ良くしていく余地はある」とした。
 阿部社長は今後も、前へ前へと進み続ける。そしてその傍らには、井関の農機と菅原所長が寄り添い、サポートしていくだろう。

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