現地の話題:新潟農業GPSコンソーシアム/新潟県特集

県内の農機販売店や農業関連企業によって組織される「新潟農業GPSコンソーシアム」は、農業用の低価格RTK基地局を運用している。事務局代表を務める(株)カトウAM(新潟県見附市)の加藤卓将氏に、RTK基地局の現状やGPSの活用などについて話を聞いた。
ロボット農機や自動操舵システムなどを用いた、いわゆるスマート農業による自動運転には、農機本体に搭載されるGPSなどのGNSS装置に加えて、作業によっては地上に設置したRTK基地局を利用した高精度な測位が必要だ。しかし、基地局設置は高額で、アンテナの持ち運びや設置の煩雑さ、設定に専門的な知識が必要となるなど、普及に向けた課題も多い。近年、スマート農機の普及促進に向け、各地でRTK基地局の運用が広がりを見せ、県内では新潟クボタが基地局を設置し、運用している。当然、基地局設置の初期コストに1基当たり数百万円を投じ、運用にも相応のコストが生じる。一般的には、それなりの事業規模がないと設置・運用は難しいのが実情だ。
一方、「新潟農業GPSコンソーシアム」参加企業は、地域の農機販売店、農業関連会社がメーン。にもかかわらず、県内に9基の基地局を設置、運用する。利用料は年間契約で7590円(税込み・以下同)である。安価な理由は、基地局に必要なGPSモジュールが低価格であることと、世界中で利用されている(株)農業情報設計社(北海道帯広市)の共通システムを活用し、システム運用が低コストで済むこと。そのため、運用側は基地局の設置初期コスト数十万円と年間管理費数万円。農家は少ない負担でRTKのサービスが受けられ、利用該当地域の基地局を持つ参加企業に連絡して申し込みをすれば、利用IDが発行され、利用できるようになる。
同コンソーシアムは2019年にトラクタに取り付けたGPS装置の単独測位による農業ナビの試験導入からスタートし、大規模生産法人向けの組合占有利用のRTK基地局導入支援を経て、見附市でのシェア型基地局の試験稼働を開始。2021年の春に実質的なコンソーシアムとして本格的な運用をスタートした。現在、コンソーシアム参加企業はガイダンス、自動操舵など、メーカーの垣根を超えて様々な製品を扱っている。参加企業は、(株)カトウAMの他に、(株)冨山、(株)キヨヅカ、(有)ナカノサービス、(株)コーポレーション森の5社で、県内9カ所に基地局を設置。基地局から20キロの圏内で利用できる体制を整えている。現在の契約件数は80軒ほど。主な利用者は5~10ヘクタール規模の農家だ。
加藤代表は「中国製自動操舵システムの台頭とともに、それらの企業が様々なところに基地局を建て、基地局自体は珍しいものではなくなった。例えば、当コンソーシアムの基地局を使っていた方でも、新潟クボタさんの拠点の基地局に移る方もいれば、新たに加入される方もいて、利用数としては横ばい。RTKではないVRS方式のサービスも利用料が下がって選択肢が増えた。必要な生産者には行き渡っている。自動操舵自体の認知も浸透し、播種作業での活用も増えている」と話す。
また、GPS関連製品に関しては、「今年4月、田植え前後にRTKを使ったレベリング、均平作業の問い合わせが急増した印象」という。田植えが終わって一息ついた農家が、YouTubeにあがっているRTKレベラーの情報を観て、利用の検討を始めたということのようだ。「県内の先進的な水田農家は、安価なリアレベラーでの均平化が実現するか注目している。これまでのレベラーは高額。最安でも4、500万円。それだと農家は手が出ない。中国製では制御ユニットだけで100万円を切るものもある。ただ土を引っ張って来るだけ、多少上下があっても土寄せできれば、先ずは十分ということで、それをやりたいという農家は増えた。ただ、現状それができるのはヰセキ製のBFトラクタのみ。30PS以上のトラクタに搭載されたレーザーポートにコネクタさせれば、後ろの作業機の上げ下げ作業ができる。トラクタメーカー側で、BFトラクタのように、レーザーポートを付けてくるか、または自動操舵メーカーがレーザーポートが付いていないところでも、アナログの入出力信号で上下を制御するようなオプションを出すか。実際問題、水田は平らになればなるほど除草剤の効きが良くなったり、収量に直結する。自動運転はいらないけど、均平はやってみたいという農家さんが結構いらっしゃる」と加藤氏。
米価の上昇による農家の影響を尋ねると「カトウAMの顧客の雰囲気だが、これまで相当収入が低い中で我慢してなんとかやってきて、ようやく人並みの収入になって一息ついたという印象。更新すべき機械を無理やり騙し騙し使ってきて、ようやく更新できた方は多い。景気が良くて嬉しいというより、一息つけて安心したみたいな雰囲気」と話す。7月のメーカーの価格改定で多少の駆け込み需要はあり、昨年、一昨年に比べれば新しい機械の購入も増えているものの、年間を通じてみた際には増加するまでには至らないのではないかとの見方を示す。大規模農家は主要機の更新を思い切って行う、10ヘクタール程度の中規模農家は作業機を更新する、といった農家が多い様子であった。
修理整備については、昨年、稲刈りで倒伏が目立ったこともあり、コンバインの整備台数は手が回らないほどだった。件数としては若干減っているものの、機械の大型化により、1件当たりにかかる修理時間が増え、忙しさも比例して増えたという状況だ。
GPSコンソーシアムとしての今後について加藤氏は「繰り返しになるが、RTK基地局も自動操舵も珍しいものではなくなった。各地域のトレンドによって、当地域では均平化があるし、大豆が多い地域ならISOBUS対応の自動操舵を活用した管理機のセクションコントロールなどがある。そういった技術の導入支援やそれぞれの農家に合わせた新技術の紹介または提供が今後しばらく続くように思われる。これまで高額でとても手が出なかった技術も全体的に価格が下がってきて、その価格だったらやってみたいという農家は出てきている。ザルビオの可変施肥ももう少し価格が落ち着いてくれば、使いたい方もいるだろう。そういった方をサポートしていきたい」と述べた。









