関東農業食料工学会年次大会から:各地の最新研究成果を発表/関東地域特集

関東農業食料工学会(北村豊会長)が2月に千葉大学松戸キャンパスで開催した「2024年度関東農業食料工学会第60回年次大会」(既報)。同大会では、関東地区の大学や研究機関、企業など会員による最新の農・食に関する研究成果が口頭発表されたほか、学会創基60周年記念セミナーや、若手研究者向けの初学の会などが行われた。
このうち会員による口頭発表では、農業機械関連については、(1)圃場整備事業における収益拡大に向けた効率的な機械運用(宇都宮大学)(2)水稲移植作業における圃場内作業時間低減を目指した圃場条件(同)(3)ゴム履帯車両の後進畦畔乗り越え時の挙動に関する研究(同)(4)農業機械の乗降安全性向上に関する研究(同)(5)農業スマート安全のためのモデルベースアプローチ(東京農工大学)(6)アルキメディアンスクリューを用いた水陸全方位移動ロボットの開発(同)(7)自律走行型害獣追払いロボットの開発(東京大学など)(8)GTAP―BIOモデルによるバイオ燃料生産時のILUCの算出(東京大学)(9)荷馬車による発電(同)―が行われた。一部の講演概要をみる。
(1)は耕うん・収穫作業に着目して、機械の作業能力を最大限活かせる条件下での作業可能面積を算出し、適した機械クラスの提示を試みた。実証を行う対象地区は約40ヘクタールの平地農業地域で、圃場整備により整備前:圃場数543、平均圃場面積7アール/枚(農家数105戸)↓整備後:同23、1・7ヘクタール/枚(農業法人設立)となる予定である。研究では、整備前の圃場で耕うん・収穫作業の実測調査を行い、作業時間モデル式を構築した。そのうえで、整備後の面積拡大に合わせ、作業日数10日×1日5時間の合計50時間内に収まるクラス1台を選定した。
その結果、耕うん作業においては、整備前の作業時間は合計102時間で、うち旋回時間は26時間だったが、整備後は旋回時間が2時間まで低減。約40ヘクタールの対象地区において、作業可能時間50時間に対し、トラクタ100PSでロータリ2・2メートルまたは2・4メートルが最も近いクラスとなり、整備前に比べ約半分の作業時間となった。収穫作業においては、一筆の圃場面積が拡大すると往復刈りを行う回数が増加して作業時間が短縮。旋回時間は整備前の47時間から整備後は約6時間まで低減した。約40ヘクタール・作業可能時間50時間においては、6条または7条コンバインが最も近く、整備前比で約3分の1の作業時間となった。
このモデル式をもとに経営面積ごとに推奨される農業機械の組み合わせを出し、「機械選定ガイドライン」を作成。その結果、作業日数10日、圃場平均面積30アールで、耕うん作業の場合は経営面積15ヘクタールの時はトラクタ50PS、30ヘクタールは80~100PS、50ヘクタールは120PS以上が推奨された。収穫作業の場合は、15ヘクタールはコンバイン4条、30ヘクタールは6~7条、40ヘクタールは7条が推奨された。これにより、従前より低クラスで大規模面積の作業が可能と示唆された結果となった。
一方、(2)の研究では、水稲移植作業に含まれる苗を補給する時間を短縮するために、補給時間が低減する圃場の長辺長ならびに、圃場内作業時間を低減できる圃場条件を明らかにすることを試みた。これに当たっては、苗補給のプロセスをモデル化し、長辺や作業条件ごとの補給時間を算出するプログラムを作成。プログラムの精度検証を行うため田植えにおける実際の補給時間の実測調査も行ったところ、実測値と算出値との差が認められず、正確に算出できると考えられた。
結果をみると、面積3ヘクタール以下の場合は辺長比を大きくすると旋回する回数が少なくなるため作業時間が減少。3ヘクタール以上は辺長比を大きくしても作業時間はほぼ変わらなかった。また、長辺長については、120~150メートルのとき、どの作業条件でも補給時間は最大5割弱~最小2割に抑えられたが、300~400メートルではどの作業条件でも作業時間が長くなった。これにより、推奨する作業条件は、面積3ヘクタール以下の場合は辺長比は1:3に近づけ、長辺は120~150メートルに。3ヘクタール以上ではどの辺長比でもよいが長辺300~400メートルを避けることが望ましいとされた。
他方、(4)の研究発表では、昨今では農業機械乗降中に転落・転落する事故が発生しており、機械の大型化に伴い乗降部の安全性向上が必要なことから、乗降しやすく安全性の高いステップ・手すり位置の関係を明らかにした。
(1)トラクタ4台(20~100PS)の実機及び(2)ステップ高380・480・580ミリ、手すり奥行き100・280・400ミリのそれぞれを組み合わせた9条件の装置―で、男女が乗降する実験を実施。実験参加者のうち小柄な2名、大柄な2名で主観評価したほか、乗降しやすさで順位付けを行い、事故原因の1つである前向き降りが困難な条件の評価を行った。
その結果、乗降しやすいのはステップ高380~480ミリ、手すり奥行き100~280ミリとなった。対して乗降しにくいのはステップ高580ミリ、手すり奥行き400ミリの条件で、着地位置が著しくステップに近いため危険な条件と示唆された。また、様々な身長の人が使える手すり高さは1320~1660ミリに設置することを推奨した。









