ごみ焼却灰から有価金属回収/クボタが実証実験完了

(株)クボタ(北尾裕一社長)は、廃棄物の焼却灰を溶融処理することで製造された溶融スラグに混在するメタルを高効率に回収する「メタル分離機」を新たに開発した。実証実験では、金や銅などの有価金属を含んだメタルの回収率が同社従来機比で2倍以上に向上し、また、回収したメタルは製錬メーカーの購入基準を満たす高濃度であることが確認でき、高回収率と高品質の両立に成功した。今後、溶融スラグからのメタル分離システムを全国の自治体や民間の廃棄物リサイクル事業者に提供することを通じて、有価金属の濃度が低いためにこれまで利用されていなかった領域の都市鉱山を有効活用し、サーキュラーエコノミーの実現に貢献していく。
〈背景〉
金属資源は、採掘時の環境への影響低減や経済安全保障の観点から、資源循環の取り組みが求められている。廃棄物に含まれる金属資源は「都市鉱山」として見立てられて再資源化が期待されており、小型家電などはリサイクル法の施行により活用が促進されている。 一方、産業廃棄物や家庭から排出される一般廃棄物や下水汚泥の中にも金、銀、銅、白金、パラジウムなどの有価金属が含まれているが、含有濃度が低いため従来は分離・回収が難しく、採算が合わないことから有効活用が進んでいなかった。 同社は、廃棄物を高温で溶融して、かさ(量)を減らすとともに、有害物質を分解・分離し、さらに建設用資材などに利用される溶融スラグを製造して再資源化を可能とする「回転式表面溶融炉」に加え、溶融スラグから有価金属を含むメタルを回収するための「メタル分離機」の開発にも取り組んできた。これらの技術は、「国内最大級の不法投棄事件」と言われた香川県・豊島の産業廃棄物の処理にも用いられ、廃棄物の全量資源化に貢献した。
しかし、従来のメタル分離機では溶融スラグとメタルの分離が不十分で、メタルの回収率を高めると回収したメタルに混入するスラグが増え、有価金属の濃度が低下するという課題があった。有価金属の資源循環を目指すに当たり、より高効率に溶融スラグからメタルを回収するための新たなメタル分離機の開発が不可欠だった。
〈実証実験の概要〉
同社は、長野県長野市で2025年1月から4月までの約3カ月半の間、新たに開発したメタル分離機を用いて、溶融スラグからメタルを分離・回収する実証実験を実施した。この実証実験は、同社の溶融炉が稼働しているちくま環境エネルギーセンターを管理する特別地方公共団体・長野広域連合と、同センターで製造された溶融スラグからリサイクル建設資材を製造・販売する地元企業・高沢産業(株)の協力を得て行われた。
メタル分離機は、最新のシミュレーション技術を駆使して分離機内のスラグとメタルの挙動を再現した結果をもとに内部構造を見直すことで、スラグとメタルの分離効率を格段に向上させた。
実証実験の結果、溶融スラグ約200トンから約1トンのメタルを回収し、同社従来機と比較してメタル回収率を2倍以上に大幅向上させた。同時に、メタルに含まれるスラグの混入率が10%以下となる高濃度での回収を達成し、製錬メーカーにリサイクル原料として供給可能な品質であることが確認できた。
回収したメタルの中には金、銀、銅、白金、パラジウムを含むことが確認された。特に金は約400~530ミリグラム/キロと金鉱石の約100倍相当の含有率であり、これは年間の溶融スラグ発生量約900トンから試算すると、約2700万円~3600万円の価値(2025年6月現在)に相当する。
長野市および周辺地域では、溶融スラグを建設資材として再利用してきた。この取り組みに加えて、メタル分離機の活用によって溶融スラグから価値ある金属を取り出すことが可能になり、地域のさらなる資源循環への貢献が期待される。
〈今後の展望〉
同社は、この度新たに開発したメタル分離機を2025年中に商用化することを目指し、全国の自治体や民間の廃棄物リサイクル事業者に提供していく。溶融分離技術とメタル分離回収技術を組み合わせることにより都市鉱山を有効活用し、資源循環ソリューションの提供を通じた社会課題の解決に取り組んでいく。









