転炉スラグ肥料で稲の初期成育促進/農研機構

農研機構は9日、転炉スラグ肥料の利用で稲の発芽・発根・出芽が促進されることを発見したと発表した。産業振興(株)との共同研究によるもの。
稲の種もみを水に浸して水分を吸収させる浸種作業時に、転炉スラグを原料とする肥料を浸種液に混和することで初期生育の促進効果がみられた。さらに、浸種中の水の交換作業や発芽を促す催芽作業を省略しても、種子の酸欠や出芽不良を起こさずに生育することも確認した。同機構は今後、実際の育苗作業や種もみを直接まく直播栽培場面での実用性が明らかになれば、播種前に行う種子予措作業の短縮化・軽労化につながることが期待されるとしている。
転炉スラグは、製鉄所で鋼を製造するための転炉で副産物として生成され、農業現場では肥料として活用されている。今回の研究では、粉状の転炉スラグ肥料を2商品用意して、浸種液への混和に活用した。稲品種「キヌヒカリ」の種子を水の交換をせず、チューブ内で転炉スラグ懸濁液に20度Cで4日間浸種すると、蒸留水に浸種した種子と比べて発芽が促進されることを確認した(図参照)。発芽が早まることで、浸種期間を約1~2日間程度短縮できると見込まれる。
さらに、引き続きチューブ内で転炉スラグ懸濁液中に浸漬させながら30度Cで1日間催芽処理を行うと、子葉鞘が著しく伸長した。そこで、異なる溶存酸素濃度条件で浸種を行った際の影響について調べたところ、シャーレを用いた溶存酸素濃度が高い・水深が深い条件では、転炉スラグ懸濁液処理区と蒸留水処理区で大きな差は認められなかった。このことは、転炉スラグ懸濁液による生育促進効果により、酸素濃度が低く嫌気的な条件下であっても催芽が可能で、初期生育が確保されることを示している。
また、転炉スラグ懸濁液による浸種処理をした後に30度Cで2日間根出し処理を行った結果、蒸留水区と比べて種子根、冠根および側根の発根が促進されることが判明。さらに浸種処理を行った後、催芽処理を行わずにポットに播種して出芽を比較したところ、転炉スラグ懸濁液区では出芽が顕著に向上。催芽処理の工程を省略して播種しても、出芽率が向上することが明らかになった。
同機構では、今回の研究結果により、水稲の種子予措作業における水の交換と催芽処理の工程を省略し、加えて浸種期間を短くした新規の種子予措体系の開発が見込まれると言及。また、無コーティング直播栽培では、根出し処理の期間の短縮が期待できる。
今後は、育苗箱を利用した、より実際に近いスケールでの実証試験を行うことで普及に向けた研究を進めていく予定としている。









