MENU
令和7年6月23日発行 第3556号 掲載

厚生労働省が農機安全対策/日本農業労災学会がワークショップ

 日本農業労災学会(田島淳会長)は5月30日、第5回農業労災ワークショップをオンラインで開催した。
 今回は「農作業事故防止・安全対策・労災補償に関わる新たなトピックスや課題を探る」をテーマに掲げ、農作業事故防止や安全対策、労災補償に関わる新たなトピックスや課題について、その分野の専門家、関係者からの講演と質疑応答を行うことで、新たな動きに対する認識や知見を深め、今後の農作業安全や活動に資することを目的に開催した。
 今回のワークショップでは、(1)厚生労働省における農作業安全対策の推進(2)農業現場で注目される農作業安全への取り組み(3)外国人雇用の実態や課題、農作業安全対策―の3点に焦点をあて、それぞれ講演が行われた。
 (1)は、繁野北斗氏(厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室技術審査官)が「農機安全対策の取り組みについて―厚労省の検討会議論を中心に―」と題して講演。
 それによると、同省は農業雇用者数が年々増加し、さらに農業における労働災害が増加傾向にあり、特に労働安全衛生法令で規制されていない車両系農業機械によるものが毎年発生していることから、「農業機械の安全対策に関する検討会」にて車両系農業機械に係る安全対策等の検討を行っており、昨年2~11月に7回開催した。
 検討会での報告から一部をみると、農業の労働災害による死亡者数は年間約10人発生しており、死亡災害の約3割がトラクタ等の車両系農業機械によるものとなっている。農業の労働災害発生状況のうち、休業4日以上の死傷者数は近年増加傾向にあることから、死亡・休業4日以上の死傷による労働災害件数のうち、機種別に発生件数が多いものや、出荷台数が多いものなどを検討し、また、年間出荷台数1万台当たりの事故・再現件数の割合を算出した結果、乗用トラクタやコンバイン、草刈機、農用運搬車、農用高所作業機、スピードスプレヤーなどが上位になることが判明し、これらを対象として、その構造に関する規制(使用規制を含む)をいかに考えるか検討を行っているなどと語った。
 また、同省では7年度の新規事業として中小農業事業者の安全衛生活動支援事業に8210万円を充当。同事業は、安全衛生の専門家による指導や研修会の実施等を通じ、農業の安全衛生対策の普及・啓発等を図り、農業の安全衛生水準の向上を図るもので、中央労働災害防止協会を実施主体として、農業事業者等が集まる機会を活用し、安全衛生に関する研修を7年度に200件ほど実施する予定。同協会の全国の事業拠点12カ所に配置された専門家を事業場等に派遣して研修を進めるなどとした。
 続いて宇佐川美奈氏((株)宇佐川農園代表)が「みんなが笑顔になる農業を目指して~自主的にやりがいをもって働ける農園づくり~」を講演。宇佐川氏は平成24年に新規就農、27年にご主人も就農、30年に夫婦で認定農業者となり、令和4年に(株)宇佐川農園を設立した。福岡県久留米市にてリーフレタス10ヘクタール(年間2~3作)、トウモロコシ3ヘクタール、イチゴ600坪、その他野菜を栽培しており、農林水産省の令和3年度女性活躍表彰で若手女性チャレンジ部門農林水産大臣賞も受賞。
 同農園では子育て世代の女性を積極的に雇用し、彼女らが家事・育児を優先して働けるように作物の栽培計画を立てるなど、働きやすい環境づくりに取り組んできた。具体的には自分の働ける時間でのシフト制や、休みの取りやすい体制づくり、積極的なコミュニケーション、正社員登用、トラクタなど免許取得推進、GAP認証取得による労働安全への強化などを推進。GAP認証取得は、農業経営において持続可能で、効率的な経営を実現するために農園のルール化が必要との思いから取り組んだもの。
 GAP取得における労働安全対策としては▽機械の使用前点検、定期的なメンテナンス▽作業に応じた適切な防護具(手袋、マスク、カッパ、保護メガネなど)▽農薬散布のルール化▽作業場の整理整頓▽作業場、圃場での危険箇所の見直し、リスク管理▽作業者の健康管理(体調チェック、熱中症予防ルール化)▽事故やケガにそなえて緊急連絡先の掲示▽資材、農薬、肥料の在庫管理▽外国人実習生の教育と理解―などを徹底。圃場危険箇所の共有においては、50ほどあるすべての圃場の危険箇所などを文章化し対策。圃場以外でも、月に1回の「ヒヤリハット・ルール違反事例投稿」を定め、どんな小さな事でも必ず報告し、報告したら終わりではなく必ず改善策まで決めるようにしており、作業場や事務所、倉庫などの各箇所におけるリスクを洗い出し、対策を書き出している。
 一方、労働安全強化の課題では▽天候や気温に大きく左右されるため、勤務体制、休憩時間の見直し▽高齢化により体力、機械操作の際の事故のリスク増加▽農薬散布での健康リスク―などがあげられ、それぞれについて作業場での冷房設備や近隣農家への作業員代行、農薬散布ドローン導入など対策案を検討しているなどと紹介された。
 その他、吉満一貴氏(東京農業大学大学院)による「農業分野における特定技能2号合格者の新動向と送出国側での事前研修の実態―新制度への全体動向変化のプロセスを踏まえて―」、宮入隆氏(北海学園大学経済学部教授)による「北海道農業における外国人労働者雇用の増加と農作業安全対策等の課題」―の講演や質疑応答が行われ、理解を深めた。

カテゴリー別最新ニュース