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令和7年6月16日発行 第3555号 掲載

全国自給飼料生産コンクール大臣賞にトムミルクファーム/耕畜連携特集

 一般社団法人日本草地畜産種子協会は、第11回全国自給飼料生産コンクールの表彰式を行った。農林水産大臣賞を受賞した(有)トムミルクファーム(広島県)は、自社でコントラクターを組織し、細断型飼料イネ専用収穫機を用いて、堆肥投入も含めたWCS用イネなどの栽培・収穫作業を実施している。受賞者の経営概要をみる。
 [農林水産大臣賞](飼料生産部門、畜産経営体)=トムミルクファーム
 トムミルクファームは、広島県東広島市において耕畜連携によるWCS用イネ生産を通じ、地域の農地保全に積極的に貢献する酪農経営体である。自社でコントラクター組織を所有し、耕種農家と栽培契約を結び生産する極短穂型WCS用イネ38ヘクタールに加え、イタリアンライグラス、ミレットなどの牧草23ヘクタールを生産し、細断型飼料イネ専用収穫機を用いて、堆肥投入も含めたWCS用イネなどの栽培・収穫作業を実施している。
 WCS用イネは、周辺地域の7集落法人と16個人経営体と栽培契約を結び、38ヘクタールを生産。平均圃場面積が14・4アール/枚という飼料基盤が脆弱な中山間地域でありながら、TDN(可消化養分総量)換算で粗飼料自給率は80・5%、飼料自給率は57・0%を達成している。飼養頭数は搾乳牛169頭、育成子牛56頭の計225頭程度で、搾乳牛1頭当たり年間乳量1万2000キロの高泌乳を誇る。搾乳ロボット導入に加え、広島型スマート農業推進事業により様々なスマート機器を導入し、乳量増加と労働時間削減を目指し、広島大学、畜産協会、県、企業等を含むコンソーシアムと協力して取り組んでいる。
 WCS用イネは、施肥管理と堆肥還元により平均2・3トン/10アール生産している。牧草生産を行う水田は畑地化促進事業を利用し、大区画化と排水対策で生産性向上に努めている。堆肥は自社堆肥舎4棟で堆肥化し、水田・牧草畑に散布するほか、要望に応じて配送も行う。また、東広島市中心部で生産された食品副産物もTMRとして利用するなど地域内での循環を意識している。
 栽培契約農家には定期的な研修会や個別打ち合わせを実施し、品質向上をサポートしている。中山間地域で圃場が点在し獣害も多い中、自給飼料生産利用を通じて農地保全と地域コミュニティ維持に貢献。さらに、ジェラートショップ・レストラン経営、ガソリンスタンド経営継承、牧場体験や農泊受け入れなど、消費者への理解醸成と地域活性化にも尽力している。地域商工会の副会長として農商工連携にも積極的に取り組むなど、地域全体が担い手不足という状況下で多岐にわたる活動を展開している。
 [農林水産省畜産局長賞](放牧部門、畜産経営体)=清水秀人氏、清水香理氏
 清水秀人氏は大阪府出身で1998年に酪農経営を目指し新冠町に移住し、4年間同町にて酪農ヘルパーに従事した後に2003年に夫婦で新規就農した。補助事業は用いない居ぬき継承で就農から21年目となり、就農当初から放牧飼養に取り組んでいる。小牧区編成による集約放牧方式かつ舎飼いのための成牛舎を持たない無畜舎経営であり、冬期間も野外飼養を行うなど低投入・省力性を極めた生産体系を確立している。放牧による資源循環型の経営構築を目指しており、放牧畜産実践牧場の認証を受けているほか、小規模経営だが低投入生産によって低コスト生産を確立した持続性の高い高収益経営を目指しており、無化学肥料による草地管理によって有機飼料生産認証を取得している。乳牛の飼養頭数は搾乳牛43頭、育成子牛30頭の合計73頭程度で推移。分離給与方式で濃厚飼料はパーラー内で個別給与しており、フリーバーン内でラップサイレージ主体の給与である。TDN換算で粗飼料の自給率は100%、全体の飼料自給率は65%。
 就農当初の草地面積は24ヘクタールだったがその後借地等で増加し現在は35ヘクタールとなっており、その内訳は放牧専用地16ヘクタール、兼用地3ヘクタール、採草地16ヘクタールである。放牧は4月下旬から開始して10月31日までの概ね190日間の長期間利用で、分娩は春分娩を多くして放牧利用による生乳生産を有利にするよう努めている。また、常時ペレニアルライグラスの追播種による植生改善を図っており、数十年にわたって簡易更新のみの管理で草地を維持。
 就農当初は地域に放牧経営はほとんどなかったが、放牧研究会を組織し、現在4名の会員が放牧経営を行っている。また、就農以来、地域の学校と連携し小学生を対象とした酪農体験会を21年間継続し、酪農への理解を広げる活動にも取り組んでいる。また、妻の香理氏は日々の搾乳作業を専従で行い、さらに税務申告ソフトを利用した経営管理を一手に担っていることから経営に対する貢献度は高く、女性の活躍が十分になされている。  [農林水産省畜産局長賞](飼料生産部門、飼料生産組織)=(株)グリーンネットワークとどろき
 グリーンネットワークとどろきは、鹿児島県でも有数の水田地域(水田率78%)であり中山間地域でもある伊佐市において、耕種農家と連携して栽培したイネWCS及び裏作で作付けしたイタリアンライグラスについて延べ100ヘクタール以上の収穫調製を実施し、地域内外の畜産農家へと供給する飼料生産組織である。稲わら収集を含めた作業面積は延べ123ヘクタールに達するが、小区画圃場の団地化、ドローンを利用した稲立毛間播種によって効率的な作業を行い、地域で流通する同種の粗飼料と比較して乾物単価85%以下での供給を行っている。農協の職員であった経営主が地域の求めにより平成25年に立ち上げた組織であることから需要は高く、徹底した品質管理(乳酸菌材の添加や獣害リスクの管理等)や利用者のニーズに合った生産(水分、カッティング等)により高品質な飼料生産に真摯に取り組んでいるため、生産したロールは予約時点で全て販売され、県内広域の畜産農家に供給している。
 イネWCSについては、地域でもいち早く極短穂品種を導入し、自社で作成したイネWCS栽培手引書の配布、自社で育苗した苗の供給などにより地域での極短穂品種の普及拡大と高品質なイネWCS生産に積極的に取り組んでいる。
 また、裏作のイタリアンライグラスについては全ての圃場でドローンを用いた稲立毛間播種・栽培技術を取り入れており、省力的かつ適期播種による生産拡大を実践している。施肥管理では地域内の肉用牛農家が生産した牛糞堆肥を利用して土づくりや化学肥料を削減しており、地域内の資源循環に努めている。
 6次産業化として、ジビエ料理や自社栽培米を使用した餅を提供・販売する農家レストランの運営も行っている。今後は宿泊業も計画しており、中山間地域における獣害のハンデを活かした農業の魅力発信にも取り組んでいる。

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