MENU
令和7年6月9日発行 第3554号 掲載

国産野菜シェア奪還プロジェクト/野菜・畑作関連機器特集

 国産野菜シェア奪還プロジェクト推進協議会は5月13日、都内港区のAP新橋(オンライン併用)にて、令和7年度シンポジウムを開催した(5月19日号既報)。これには、国産野菜の活用拡大のための情報収集やネットワークづくりを目的に、同会員をはじめとした関係者ら260名以上が参集。その中で、国産加工・業務用野菜の生産者と実需者が、それぞれの立場からシェア拡大に向けた取り組みや課題などを紹介した2つの講演内容をみる。
     ◇
 国産加工・業務用野菜における生産者の取り組みについて講演したのは、JA全農園芸部加工業務直販課課長の坂本和士氏。坂本氏はまず加工・業務用野菜の現状について、(1)生産に取り組むきっかけ(2)生産に取り組むメリット(3)どのような産地が生産しているか(4)年間でみた場合の供給状況や端境期の状況(5)加工・業務用野菜としての栽培状況(6)出荷方法―の6点を説明した。このうち(2)のメリットについては、大規模栽培に適していることや、企業・団体との契約栽培によって経営が安定し、資金調達が可能になることなどをあげた。(4)の供給状況では、昨今の異常気象による生産の不安定化を問題視。保管施設を活用し原料確保に努めていかないと、安定供給が難しくなると指摘した。(6)については、川上・川下の需要に応えるためコンテナ出荷が主流になっている一方、品質の劣化防止に効果のあるコールドチェーンについては、産地のインフラ整備などの問題から、思うように進んでいないのが実情だと述べ、今後、実証試験などに取り組む必要性を訴えた。
 続いて、産地の課題として、供給量の不足・安定供給の確保・収益の確保の3点をあげた。異常気象や夏場の高温、さらには高齢化などによる農家の減少により、供給量の不足および不安定化が生じていると指摘。単収向上、安定生産、コスト低減に向けた対策として、労働力の確保が非常に重要だとし、機械技術などを活用するのはもちろん、農家の収益を確保するための法整備なども必要ではないかとの考えを示した。さらに、従来のマーケットインに準じた品種・栽培から、産地の気候に適し安定生産が見込める品種・栽培へと移行するなど、新品種の導入や栽培方法の見直しにも取り組む必要があると述べ、今後、これらの課題解決に向けて、関係機関との協力を強化していきたいとした。異常気象など天候に関連したリスクを回避し安定供給を確保するためには、他産地との広域連携を強め、産地リレーなどの出荷体制を構築することも不可欠であるとしたうえで、「これこそが、全農としての使命ではないかと思っている」と述べた。
 また、リードタイムの解消や流通コスト低減のため、全国本部として中継物流拠点の取り組みを強化していくことや、国外産地との競争に備えた広域でのデータ連携に取り組んでいくことが必要であるとした。
 最後に、その他の取り組みとして、(1)国産青果物の生産量確保に向けた生産振興(冷凍加工品目と、従来の加工業務品目のタマネギ、キャベツ、ニンジンなど)(2)川上から川下までの青果物インフラの整備(3)直接販売の拡大(一元販売整備、リレー出荷・年間供給)(4)青果物業界全体の業務効率向上(システム整備)(5)適正価格形成・消費拡大等に向けた取り組み―をあげ、国産加工・業務用野菜の生産振興と消費拡大に向け、さらなる取り組みに意欲を示した。
 続いて、国産加工野菜を活用する実需者の立場から、(株)旭物産代表取締役会長の林正二氏が登壇した。同社は茨城県内の3工場で、モヤシの生産や野菜加工品の製造を行い、関東圏の大手量販店などに出荷。2024年9月期の売上高は170億8000万円にのぼる。取り扱い商品の44・5%を野菜サラダが占め、次いで薬味ネギ14・3%、セット商品12・9%などとなっている。もともとはモヤシの生産から始まった同社だが、現在、その取り扱いは全体の6%程度。商品比率が変化した背景には、20年間で10倍という、カット野菜の売上げ急増がある。
 原料野菜は、やむを得ない場合を除いてほぼ国産。全て、全国の契約生産者(個人113人、団体52社)から仕入れている。2024年度の年間総仕入れ量は4万4170トン、年間総仕入額は44億7800万円。冷蔵倉庫を3カ所(延べ面積約3500平方メートル)保有し、キャベツやダイコンなど野菜原料約1カ月分の保存が可能となっている。
 林氏は以前、外食チェーンからの依頼を受け、業務用加工野菜への参入を検討したことがあったとし、その結果「薄利多売の業務用は当社に適さない。きちんとした商品を、妥当な価格で納められる商売をしよう」との結論に至ったことを振り返った。そして、一般小売りを主力とするのであれば、商品開発力が不可欠であり、有名飲食店とのコラボ商品など、年間70以上の新商品を発売しているとした。中でも、JAをはじめ生産者と連携した「群馬県嬬恋キャベツを使った千切りキャベツ」や「雪の下で眠るみどりの宝石・雪下キャベツを使った千切りキャベツ」が好評だといい、「千切りキャベツは当社の主力商品だが、生産者と連携することで、ただの千切りキャベツに付加価値が付き、こだわりの商品になる。そういったものを供給することによって、お客様のさらなる期待に応えたい」と、商品の価値創造へ強いこだわりをのぞかせた。
 この春、工場の敷地内に野菜研究室を新設。液体クロマトグラフ質量分析装置を導入し、野菜の成分分析や農薬検査などを開始したという。「この装置を使うと『当社の野菜は普通の野菜とここが違う』という点を、わかりやすく数値化できる。そのデータを生産農家にフィードバックするなど、生産者と一体になって、良い野菜作りを進めていきたい」と林氏。
 「野菜を通じてしあわせを」をミッションとする同社だが、その根底には「消費者だけでなく、生産者、取引先、社員など、当社に関わるすべての人にしあわせになってほしいという思いがある」と述べ、「売上げや利益は目標ではなく、全ての人たちのしあわせを実現したとき、結果として後からついてくるもの」という考え方を基本に、生産者とのWin―Winの関係を目指していきたいと、講演を締めくくった。

カテゴリー別最新ニュース