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令和7年6月9日発行 第3554号 掲載

新基本計画のポイント/大日本農会が農事講演会

 公益社団法人大日本農会(吉田岳志会長)は5月26日、都内千代田区のTKP新橋カンファレンスセンターで、令和7年度春期中央農事講演会を開催した(Web併催)。今回登壇したのは、新たな食料・農業・農村基本計画の策定において中心的役割を果たした農林水産省大臣官房総括審議官の山口靖氏。講演では、基本計画のうち生産性向上対策と環境対策に関連した内容を中心に取り上げ、そのポイントやねらいを解説した。
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 山口氏はまず、生産性向上を主題に同基本計画の「Ⅰ我が国の食料供給」にふれた。我が国においては、国内需要全体を賄うのに必要な農地面積の3分の1しかないことを問題視。高齢化などの影響で、今後ますます供給力が減少することが見込まれており、生産量を維持するためには、生産性の抜本的向上が不可欠であると指摘した。そのため、▽地域計画をさらに進化させ「誰に集約するか」に加え、「どの品目の産地にしていくか」の視点を加えた農地集約化と産地づくりの推進▽スマート農業技術の開発・導入と、機械の共同利用等を通じた技術導入を促進するためのサービス事業者の活動支援▽多収化や高温耐性などに資する品種の開発・導入▽大区画化などの基盤整備による良好な営農条件の確保―などにより、生産コストの低減を図り、労働生産性と、土地生産性の両方を向上させる必要があるなどとした。
 そのうえで、スマート農業技術の開発がこれまで以上に重要になると述べ、直播栽培におけるドローン等を用いた技術の改良や、複数の農機の効率的な運用を可能とするシステム等の活用を通じて、労働負担の大きい月の労働時間を61%削減する目標などを示した。
 品種開発については、多収性品種や気候変動に対応する品種の導入に加え、AIを活用した育種の効率化技術である「スマート育種基盤」を強化・拡充し、食料安全保障に貢献する画期的な新品種を迅速に育成することを目指す。そのためには、民間研究所や公設試験場などが、農研機構のスマート育種支援システムを活用することで品種開発を迅速化するとともに、生産者や実需者と連携して評価を行い、速やかな普及を実現するなど、産学官連携による品種開発体制の構築も重要であるとした。
 米の生産コストの低減については、農地の集積・集約、大区画化により、スマート農機に適した圃場整備を進めることでその効果を最大限に発揮し、労働時間の大幅な削減が見込めるとした。麦、大豆の生産性向上に向けては、排水対策など基本技術の励行に加え、多収性、耐病性等を有する新品種の普及が進むことに期待をかけた。
 また、消費者、食品事業者、農業支援サービス事業者、スマート農機のベンチャー企業など食料システム関係者との連携の下で生産性の高い生産方式への転換を図ることが不可欠であることから、新たな普及指導活動の展開がとりわけ大切になると指摘。普及指導センターがハブ機関としての役割を発揮するとともに、普及指導員のファシリテーション能力などの資質向上を組織的に進めることが求められるなどとした。普及指導員の新たな役割としては、▽地域計画や目標地図の改定作業や実現に向け、地域の関係者を巻き込んだ意見集約や調整を行う必要▽産地の潜在的なニーズを検出し、生産コストの比較などを行うことで農業支援サービス事業の活用を促す必要▽食品事業者への安定供給に向け、産地との連携により、機械収穫に向く品種の導入や鉄コンテナ輸送など物流改善を進めていく必要―などをあげた。
 続いて環境対策に関連し、同基本計画「Ⅳ環境と調和のとれた食料システムの確立・多面的機能の発揮」をみた。みどりGX推進プラン(仮称)の推進、環境負荷低減のクロスコンプライアンス(みどりチェック)の導入に続き、有機農業の推進についても解説。有機農業の技術的課題への対応として、技術の体系化や指導体制構築が求められているとし、農研機構を中心とした研究プロジェクトの実施や栽培技術マニュアルの作成、関係者のネットワークづくりによる技術の共有促進などの取り組みを紹介。
 また、農産物の環境負荷低減の「見える化」の取り組みが非常に重要だとし、「見える化」した農産物が優先的に選択されるよう、各種調達基準への位置付けや、消費者の購買意欲を高めるため民間ポイントとの連携なども検討していると述べた。
 農業分野での取り組みが拡大傾向にあるJ―クレジット制度については、仕組みやメリットの紹介や、クレジット発行量のシミュレーションができるエクセルファイル「農業J―クレシミュレーター」の公開などにより、さらなる推進を図る。山口氏は「J―クレジット制度を通じて異分野の企業と様々な形で連携する可能性が出てきており、ポジティブに取り組んでいきたいと考えている農業者が増えている印象だ」と述べ、制度のさらなる広がりに期待を寄せた。
 今回の基本計画では2030年(年度)までに達成すべき目標が30ほど、そのための関連施策の有効性を示すKPIが80ほど設定されており、毎年、目標の達成状況の調査・公表とKPIの検証を行うことで、PDCAサイクルによる施策の不断の見直しを実施することとなっている。
 講演の最後に山口氏は、「今回の基本計画がより良いものになるかどうかは、今後のKPI検証の際、知見を持った皆様から様々なアドバイスをいただき、政策のPDCAサイクルを回すことができるかどうかにかかっている。1年経ったら答え合わせをしなくてはいけない計画になっており、その際にはいろいろな形で叱咤激励していただけるとありがたい」と述べ、目標達成に向け、参加者らに広く協力を呼び掛けた。

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