九州沖縄農研センター成果報告会:有機米を安定生産/J AGRI 九州特集

昨今行われた九州発の農業技術に関するセミナー等について概要をみる。
農研機構九州沖縄農業研究センターは2月、福岡県のレソラホール及びWebにて、戦略的スマート農業技術等の開発・改良/輸出拡大のための新技術開発「省力除草、安定生産の水田有機栽培体系の実証と支援アプリケーション開発」成果報告会を開催した(既報、戦略的スマ農プロジェクトSA2―106R「水田有機農業」コンソーシアムとの共催)。令和4~6年度に実施した戦略的スマ農プロジェクトの概要をはじめ、その成果として、有機米・有機大豆の輸出に関する需給動向、栽培技術、病害虫防除技術、現地実証試験について報告が行われた。
このうち、九州地域による発表をみると、栽培技術では、「有機水稲栽培における有機質資材肥効見える化アプリを用いた施肥量の適正化」と題して、農研機構九州沖縄農業研究センター暖地畜産研究領域飼料生産グループグループ長補佐・古賀伸久氏が講演。
有機栽培や減化学肥料栽培には、家畜糞堆肥等の有機質資材の活用が不可欠であることから、品質に応じた施用を行うために、有機質資材の肥効見える化アプリを農研機構が開発・公開した。これは有機質資材を施用した際に、有機質資材由来の肥料成分(窒素、リン酸、カリ)がどの程度供給されるのかを算出し、減肥が可能な肥料成分量を予測できるアプリとなっており、農研機構「日本土壌インベントリー」サイトで無料公開している。
同アプリを秋田県や宮城県、佐賀県、熊本県、大分県の各圃場にて有機水稲栽培試験の実証をしたところ、慣行の有機栽培区で収量が低かったところほど、アプリを活用した有機栽培により増収する傾向がみられたという。熊本県山都町の圃場では、ヒノヒカリの有機栽培実証を行い、同アプリで有機配合肥料と牛ふん堆肥の施用を計算したところ、窒素施用量が10アール当たり3キロに近く、リン酸とカリのバランスの取れる10アール当たり施用量が(1)有機配合肥料50キロ・牛ふん堆肥500キロ(2)同60キロ・同250キロの2案がオススメだと提示された。このように、同アプリを活用して施肥設計を行い、肥料コスト低減を図ることができると述べ、さらに安価な家畜ふん堆肥と油かす・魚かすなど窒素肥効の高い有機肥料を組み合わせることを提言した。
また、現地実証試験の発表では、「西南暖地の水稲における両正条移植と病害虫抵抗性品種を組み合わせた有機栽培技術」と題して佐賀県農業試験研究センター三瀬分場主査・井手洋一氏が講演。有機水稲栽培の現状と問題点として、個々の農家の熟練による部分が大きいことや、病害虫被害による収量・品質低下をあげ、この対策として雑草対策では両正条移植+直交機械除草を、病害虫対策では移植時期をずらす、抵抗性品種の導入を実証。西南暖地の新たな有機水稲栽培技術の確立を目指した。
そのうち雑草対策では(1)直交機械除草による除草体系の確立(2)両正条疎植条件での移植時期変更、抵抗性品種導入による収量性や病害虫回避効果の検討(3)(1)(2)を組み合わせた有機栽培技術の現地実証―を実施。手取り除草時間30%以上削減、除草率90%以上、収量は一般栽培比90%以上を目標に掲げたところ、両正条・直交機械除草は一年生雑草優先圃場で除草率98%、手取り除草率63%削減と高い除草効果が得られた。この場合、代かき2回や深水管理が必須となる。また、多年生雑草には効果が低かったため、多年生雑草圃場は避け、同圃場がある場合は中干し期間に手取りをすることを推奨した。
また、(2)では中山間地の有機水稲栽培で「にじのきらめき」と両正条疎植を組み合わせた結果、いもち病被害が軽減し、収量性が高く、品質が良好であった。一方、平坦部の有機水稲栽培では、「ひなたまる」「秋はるか」はいもち病につよく、収量性が高い結果がみられた。トビイロウンカ回避の植え付け時期としては、中山間地は5月上旬の早植え、平坦部は6月下旬の遅植えが推奨された。









