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令和7年5月26日発行 第3553号 掲載

世界のメタン収支、産業革命前の2.6倍/東大大学院研究グループ

 東京大学大学院農学生命科学研究科・伊藤昭彦教授らによる研究グループは12日、国際研究プロジェクト「グローバル・カーボン・プロジェクト(GCP)」の一環で、世界のCH4収支「世界のメタン(CH4)収支2025」を公表した。温室効果ガスであるメタンの全ての発生源と吸収源を詳細に網羅したもので、大気中のメタン濃度が2022年までに産業革命前の約2・6倍である1912ppb(ppb=気体の10億分の1)に達し、その主要な原因が農業・畜産、化石燃料採掘、廃棄物処理に伴う排出量の増加であることを明らかにした。
 同研究グループはGCPによる世界の温室効果ガスにおける排出と吸収・消滅の状況を把握する研究活動の一環で、メタンの放出と吸収・消滅の全体像を明らかにする統合解析を実施した。大気中のメタン濃度は2020―2021年には顕著に高い濃度上昇速度が観測されており、その原因は新型コロナ感染症の蔓延時期に起こった人為排出の変化や、熱帯域での自然起源排出増加にあると考えられた。最近10年間(2010―2019年)の総メタン排出量は、大気観測に基づく推計法では年間約575テラグラム(10の12乗グラム)と推定され、地表排出を積み上げる推計法では年間約669テラグラムと推定された。総排出量のうち約65%にあたる年間約360テラグラムが人間活動によるもので、そのうちの6割程度は農畜産業(アジア地域の水田を含む)および廃棄物処理、3割程度が石炭や天然ガスなどの化石燃料採掘に伴う排出だった。これらの人為排出量は、2000年代~2020年の間に年間40~60テラグラム程度増加しており、大気中メタン濃度上昇の主要な原因となっているという。
 また、近年の大気中メタン濃度の増加は、対策をほとんど実施しない場合の予測に近いトレンドをたどっていることが示された。国際社会が掲げたメタン削減目標とは大きく離れた状況となっており、更なる排出削減努力が必要であることが示唆されている。
 同研究グループは、温室効果ガスであるとともに大気汚染にも関与しており、人為排出量の削減が強く望まれているメタンについて、同研究は最新のメタン収支を明らかにすることで、効果的な対策立案への科学的基礎を与える意義があるとしている。そのうえで、今後も観測やモデルの精度を向上させるための研究開発を進める必要があるとした。

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