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令和7年5月12日発行 第3551号 掲載

JA帯広かわにしの取り組み:ロボトラ活用を主導/北海道畑作酪農特集

 JA帯広かわにし(足助博郁組合長・帯広市川西町西2線61の1)は昨年7月、国の「デジタル田園都市国家構想交付金」と帯広市の補助金を活用し、ロボットトラクタ18台、農薬散布ドローン25台を導入し、記念式典を行った。導入に至った経緯やその意図、今後の展望などについて、同組合営農振興部営農振興課の幸村大輔課長と同課の黒田紘平営農広報係長に取材した。
 同組合の特産品である長芋は、病害に冒された罹病株を抜き取る必要があり、これまでそれを目視し、人力で行ってきた。長芋の圃場は長い畝で300軒(540メートル)。それが10~20もある。幸村課長は「行って帰ってくるだけで1キロ。生産者はそれを6~9月の間、定期的に行う。非常に大変な作業。その作業をドローンなどのスマート農業の力でどうにかならないかといった声が発端だった」と言う。総務省からの紹介で、日本電気(株)(NEC)、(株)ズコーシャ、帯広畜産大学、ヤンマーアグリ(株)、ヤンマーアグリジャパン(株)、東洋農機(株)などと令和5年にコンソーシアムを組織することとなった。総務省の「地域デジタル基盤活用推進事業」の令和6年4月の事業申請に向け、準備を進めていった。
 ただ、この実証事業のための補助事業では、物品の購入には活用できないため、内閣府の「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用することとなった。デジタル実装に必要な経費などを支援するもので、これを「帯広市スマート農業推進事業補助金」として生産者に募集した結果、ロボットトラクタ18台、ドローン25台を組合員で導入することとなり、昨年7月に同組合の敷地内に導入した機械を並べ、盛大なオープニングセレモニーを実施するに至った。
 ロボットトラクタはヤンマーのYT5114R(114PS)。ドローンはDJIのT25。2分の1が国と帯広市の補助で、2分の1が組合員の自己資金。生産者自身が所有する。「地域のトラクタは200~300PSだが、今回の実証でロボットトラクタによってロータリやプランター、プラウまで牽引できることがわかった。今後は高馬力のトラクタで作業するだけでなく、複数台のロボットトラクタで、より少ない人数でも作業できるという経営にシフトしていくかもしれない」と幸村課長は述べる。
 ドローンは、ドローンの映像解析による長芋の罹病株の判定の他、小麦の登熟・倒伏判定などに活用。長芋の罹病株の位置を圃場マップ上で把握し、全ての株を見て回る必要がなくなり、省力化につながる。 これまでドローンは畑作地帯ではほとんど活用されてこなかった。圃場規模に見合わないことや畑作作物の登録農薬が少ないことに起因する。幸村課長は「スプレヤーは高額で、大型化している。圃場の条件が良くないとはまってしまうこともある。農業人口が減っていく中で、ドローンも活用すべきと考えた。今回導入された25台は、麦だけでなく、粒剤散布や丈の出るデントコーンの防除などで、皆さん活用されている」と話す。特産品である長芋の防除や秋まき小麦の防除への活用にも期待できるとのことであった。
 導入したロボットトラクタやドローンはWi―Fi HaLowという新しい通信規格を使って動作させる。Wi―Fi HaLow(IEEE802・11ah)はWi―Fi規格の1つで、920メガヘルツ帯を利用したIoT向けの規格。比較的低い周波数を使って、1キロ程度の長距離をカバーすることに主眼を置く。そのため、広大な圃場が多い十勝帯広地域でも充分に利用できる。プラウ耕から整地、播種、早期培土、収穫まで一連の作業に無人のロボットトラクタを活用し、この新規格通信を使って、4枚の隣接する圃場の中心から操作する。この複数台同時制御の実証実験を昨年8月、総務省の認可を受けて開始した。黒田係長は「ロボットトラクタは道内でも稲作農家で普及してきているが、十勝のロボットトラクタの所有率が低い理由に広大な畑作地域では通信範囲が狭いという問題があった。通信範囲が狭ければ結局、トラクタに乗っているか、近くにいる必要がある。それでは省力化にはつながらない。Wi―Fi HaLowはその点を解決できる」と話す。
 長芋や小麦、馬鈴薯は農家所得向上のため規模拡大したいものの、人手不足のため作付面積が年々減少傾向であった。そこでロボットトラクタやドローン導入に向けた募集を行うにあたり、地域の特産で、人手のかかる加工用馬鈴薯の生産者を中心にロボットトラクタの購入希望を募った。特に人手のかかる春作業と収穫作業の省力化に向け、協力することを募集の条件とした。道内でもロボットトラクタに作業機を装着した実証や北海道大学と岩見沢市の圃場を遠隔操作で作業する実証などはこれまでも行われていた。今回、帯広畜産大学の佐藤禎稔特任教授からアドバイスを受けながら、複数台のロボットトラクタによる同時制御による馬鈴薯栽培を世界で初めて行うこととなった。幸村課長は「この実証は農家の目の前の問題解決や社会実装に近いイメージ。当地域としては地域に還元できるような、近いうちに社会実装できるような技術に重きを置いて取り組んでいる」と述べている。
 また、先進的な農家の要望として多いのは5Gのアンテナ設置だと言うが、アンテナ設置には数千万円の導入コストに加えて、ランニングコストも高額になる。その点、Wi―Fi HaLowは安価で使いやすい。一方で、ローカル5Gほどの大容量データの送信には向かない。それでも、あらかじめ登録された圃場の情報を基に、ロボットトラクタのスタート・ストップや作業機の上げ下げ、障害物を感知しての停止や作業機の異常アラート発信、画像の転送など、農作業で使用するには充分な通信量を保持するため、ローカル5Gほどのデータ容量は必要ないともいえる。実証の中で、通信部分の改善が見えた部分もあり、それは今年度以降の課題として検討していく。
 昨年度は、秋口にロボットトラクタをデモ的に空いている圃場で動かすのみだった。所有する農家も導入したロボットトラクタを使用してはいるが、圃場登録をして試しに緑肥のすき込みに使ったなど、本格稼働というより、まずはロボットトラクタを使うための準備や機械に慣れるといった段階のようだ。「まだ皆さん、ロボットトラクタを1台しか持っていない。所有機械の償却年数が終わって、更新ごとにロボットトラクタを購入して、数年後に通信規格が整って複数台制御ができれば良い、と佐藤教授からはアドバイスされている。段階を追ってノウハウを積み上げ、生産者が使い慣れて、利用価値が可視化されれば爆発的に広がっていくのではないか」と黒田係長は話す。
 今年1月に逝去した同組合の有塚利宣前組合長は、スマート農業を十勝に広めなければいけないと、常々言っていたと幸村課長は振り返る。今年の4月から十勝地区農業協同組合会と帯広畜産大学が同大次世代農畜産技術実証センター内にデジタル農学寄附講座を開設。農畜産業に係る最先端の研究成果を教育・人材育成につなげていく新たな動きとしてスタートしている。「十勝の各農協から職員1名と生産者1~2名を募って、スマート農業の現状や展望を学んでいく。それにより横展開も図られるのではないかと期待するところだ」と黒田係長。
 今回、活用した総務省の「地域デジタル基盤活用推進事業」は、社会実装になかなか結びついていないのが実状のようで、横展開による技術の実装は、同組合に期待される部分でもある。また今回のようなスマート農業の普及推進は自治体が関わるケースが多く、農協で進めるケースは非常に珍しい。「生産者と最も近い我々が社会実装に一番近いところにいるという自負はある」と黒田係長は言う。今回の補助事業でロボットトラクタやドローンを導入したのが、募集に応じた生産者であるというのも、社会実装により近づいている要因なのかもしれない。
 今後の補助事業は未定であるが、広めていきたいという思いは強いと幸村課長は話す。「今回の実証事業でコンソーシアムを組織するにあたって、ロボットトラクタの供給を1社にお願いする方が進めやすいこともあって、ヤンマーさんにお願いしたが、今後、横展開するにあたって、井関さんやクボタさんのロボットトラクタも広めていかなければならない。しかし、十勝管内のトラクタは4000~5000台あって、ロボットトラクタはほとんど使われていない。メーカーの協力も得ながら、まずは慣れるところから。また通信環境をしっかり整備していきたい。各メーカーさんとも、十勝の畑作地帯でのロボットトラクタの活用を想定されていないと思うので、これを契機に各メーカーさんの技術の力もお借りしていきたい」と述べている。

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