MENU
令和7年5月12日発行 第3551号 掲載

十勝農機協の取り組み:北海道型スマ農の道筋示す/北海道畑作酪農特集

 十勝農業機械協議会(山田政功会長)は、2027年開催予定の第36回国際農業機械展について、帯広市に会場使用許可のための依頼書を提出し、開催に向けた準備に入ったことを明かした。今年1月、十勝農業界でリーダーシップを発揮してきたJA帯広かわにしの有塚利宣組合長が逝去。有塚組合長が長らく務めてきた農機展の開催委員会会長の後任は来年の改選で決まる。「有塚組合長は様々な役職を引き受けて来られた。穴を埋めるリーダーがいない。正直なところ危機感がないと言えば嘘になる」と山田会長は心中を語った。
 山田会長は、今の日本の農業界についても危機感を抱くと語る。3月に開催された「北海道スマートフードチェーンプロジェクト事業化戦略会議2025」で、特別講演「スマート農業技術で支える持続可能な農業」と題してその危機感を具体的な言葉で述べている。「人口減少を上回るほどの農家戸数減少に加えて、若い後継者の農協離れが増えてきている。農業界が抱える危機感は今回の米騒動でいよいよ国民にも伝わったのではないか」と話す。農林中金の米国債の含み損で出た1兆9000億円の赤字やトランプ関税による打撃なども不安要素としてあげる。「米の流通が崩壊しているような状態。問屋が米を買えない時代になってきている。力のある農家は生き残っていけるだろうが、力のない農家はやはり農協に頼るしかない。農協にはそのあたりの危機意識を持ってリーダーシップを発揮していただきたい」とも。
 1月に(株)尾藤農産(芽室町)など全国14の篤農家が発起人となって設立した日本農業技術経営会議に触れ、「今のままではいけないという農家の危機感の現れだろう。発起人の尾藤さんも大野さんも飛びぬけた大規模農家。土壌検査から土作り、施肥設計から全部自分でやって、良いものを作っている。独立独歩でやる力が備わっている。そういう農家も徐々に増えていくだろう。ホクレンさんも地域に合った施肥設計の取り組みを行っているが、まだまだ浸透の余地がある。3月の講演でも話したが、リーダーシップを発揮する人が不在。有塚組合長は将来を見ていた人だった。農協の合併やスマート農業活用などを先に進めていかないとまずい、維持できないという話はよくされていた」と話す。
 山田会長は、講演会で説いた北海道型スマート農業を全道、全国に展開することを掲げる。「北海道の圃場規模は20年後に平均100ヘクタールを超える予測だ。家族労働でロボットを監視しながらの作業でやれるかといえば、現状は難しい。ロボットに作業をさせながら、ロボットが作業しやすいように段取りをすることが大事。ロボットは肥料や種が切れたら自動で戻ってくる。段取りをきちんとして、すぐに補充し、またすぐロボットに作業させる。そうやって100ヘクタールを家族労働でもできるような仕組みを作る。監視に人が取られたら何もできない。圃場は完全にロボット化して、3台、4台と走っていても、監視が不要なら作業を止めないための段取りができる」と構想を話す。
 また、規格の共通化についても言及する。「必要な技術はオープン化、共通化してコスト削減する方向に主導していく必要がある。そこは国が具体的な方向性を示して欲しい。農林水産省も農研機構も具体的な部分をメーカーに丸投げせず方向性を打ち出す気概を持っていただきたい。ISOBUSの意味を知らない人も多い。共通化は農家のため、ひいては公のためになる」と訴える。
 自動操舵技術についても「私も勉強中だが、26年度までに準天頂衛星システムみちびきが7機体制となる。そうなれば国内全体でGNSS受信精度が安定し、将来的にはRTK基地局も不要になり、無駄なコストを掛ける必要もなくなる。現状分析すると道内の生産者は自動操舵で満足している。もっと先を見据える必要がある」と述べた。
 また、ロボットの完全無人化についても、法整備の必要性を訴える。「現在は監視が必要。省人化を謳っているのに、圃場でロボットを監視する人がいなくてはならないというのは、逆行していると言わざるを得ない。圃場内では完全無人化で作業し、作業が終われば人が移動して次の圃場でスイッチを入れればまたロボットで作業できる。今は監視が必要でそれができない。まずは圃場を完全ロボット化できるような仕組みを作る。次に農道や一般道のロボットの走行。それができるようになることを見据えて開発すべきだ。北海道は農道がほとんどない。コンバインやポテトハーベスタ、牽引式スプレヤーなど大型機械が多い。それを無人で走らせるのは相当ハードな面もあるので、そこは人力で動かす必要もある。十勝の輪作体系だと5年でようやくひと回り。5年に1度しかデータが取れない。早くデータを取って仕組み化していかないと後手後手になる」と危機感をにじませる。
 ビッグデータについても「農家の持つ栽培記録をビッグデータ化して栽培や生産過程を見える化して、他の農家のやり方を学ぶ。データを見ながらどう改善するか考える。そういったデータは北海道ならホクレンが集約するのが望ましいだろう。そのためにもデータの共通化が必要。全国でも同様だ。メーカーは独自のシステムでデータ管理をしているが、現場で従事するメーカーの末端の方々の中には、農業団体がやると言えば協力すると言ってくれている方もおられると聞く」と話している。
 最後に北海道型スマート農業の展望について、「北海道農業はトラクタと作業機の連携、無人化のための仕組み、大規模農業でも十分データをベースにしてロボットが動く、そのためのビッグデータを早く作るなどが重要。地域のデータが誰でも閲覧できるようになり、そこから改善につなげていくことができれば、その地域の生産性や品質の向上につなげていける。その情報蓄積によって、新規就農者も即ハイレベルな仕事ができるようになる。これがデータを活用した持続的農業の実現だ。農業への参入障壁も下がり、若い人も入りやすくなる。競争する時代は終わりにして、これからは一緒に生産性を上げる仕組み作りが必要。競争して足を引っ張り合って、有力な農家を囲って自分たちだけが生き残ろうという時代は終わりにしたい。『競争』から『共創』に切り替えて持続的農業を実現していくこと。それが私の願い」と述べた。

カテゴリー別最新ニュース