MENU
令和7年5月5日発行 第3550号 掲載

令和5年度スマート農業実証プロジェクト成果から/トラクタ・作業機特集

 農林水産省農林水産技術会議は、スマート農業実証プロジェクトの成果について取りまとめ、ホームページに掲載している。ここでは、令和5年度のスマート農業実証プロジェクトにおける採択実証課題の成果報告から、トラクタ・作業機を活用したスマート農業事例をみる。
    ◇
 【令和5年度スマート農業実証プロジェクト初年度実証成果】
 畑作〈西谷内農場ほか(北海道岩見沢市)〉
 ▽実証課題名=土壌診断(化学性・物理性)及びリモートセンシング活用による化学肥料削減プロジェクト
 ▽経営概要=24・97ヘクタール(実証区12・71ヘクタール、慣行区12・26ヘクタール)
 ▽導入技術=(1)センシングドローン(2)メッシュマップ食味・収量コンバイン(3)施肥・スポット散布ドローン(4)堆肥散布・自動操舵システム
 ▽目標=化学肥料使用量削減(窒素換算)/水稲30%、タマネギ7%、小麦11%、大豆50%。農家収益(売上げ)向上/水稲直播5%、タマネギ2・3%、小麦4・5%、大豆5%。追肥時間の削減/20%。経営収支(利益)向上/水稲直播55%、タマネギ5%、小麦5%、大豆5%。
 ▽目標に対する達成状況=堆肥成分散布による化学肥料削減効果(窒素換算)について、本年度は土壌物理性の不良が多く一様散布となったことから、タマネギ以外の作物については目標未達であった。次年度は、可変堆肥散布を行い、さらなる効果の向上を目指す(水稲移植20・9%減、水稲直播23・0%減、タマネギ7・7%減、秋まき小麦5・1%減、大豆14・2%減)。また、追肥作業は機材導入の遅れのため未実施。しかし、類似作業(防除)の実績から、液剤散布で約8割、粒剤散布で約2割の削減効果を得、次年度での達成見込みを得た。利益改善については、堆肥の一様散布実施、追肥可変散布未実施のため、目標未達だが、次年度は堆肥・追肥可変散布による労働時間削減からさらなる効果の向上を目指す(水稲移植1・3%減、水稲直播7・8%減、タマネギ1・1%減、秋まき小麦19・6%減、大豆6・6%減)。
 ▽導入技術の効果
 化学肥料の削減=本年度は10アール当たり堆肥1トンの一様散布を行った。この場合の化学肥料削減効果(窒素換算)は、タマネギ以外、目標達成には至らなかった。
 労働時間削減=農業用ドローン作業による労働時間削減効果は、地上散布と比べ、約8割の削減となった(液剤散布の場合)。
 収益向上効果=堆肥の一様散布実施、追肥可変散布未実施のため、目標達成には至らなかった。
 施肥設計・施肥マップの作成=土壌分析結果より施肥設計を行い、容積密度マップと腐植含有率マップから作成した堆肥マップ、堆肥投入による窒素成分を引いた基肥可変施肥マップを作成。
 ▽今後の展望・課題
 土壌診断結果から腐植含有率マップ、排水性マップを作成、収量、生育状況から堆肥マップを作成し、堆肥撒布を実施する。堆肥マップを基にした基肥施肥マップによる、可変施肥または農業用ドローンでのスポット散布を実施する。生育状況(NDVI値)を衛星及びセンシングドローン画像データから取得し、可変施肥または農業用ドローンでのスポット散布による追肥作業を実施する。JAいわみざわを中心とした市内での堆肥製造、販売、他地域からの堆肥購入、堆肥散布における地域運営体制の構築について検討する。
 畑作〈(有)フロンティアはら(石川県羽咋市)〉
 ▽実証課題名=大麦の生産拡大と低コスト化を目指したデータ駆動型水田収益向上モデルの実証
 ▽経営概要=140ヘクタール(水稲87ヘクタール、大麦25ヘクタール、ソバ25ヘクタール、園芸3ヘクタール)うち実証面積=大麦25ヘクタール
 ▽導入技術=(1)無人トラクタ(2)衛星センシング+可変施肥ハイクリブーム(3)収量コンバイン+可変施肥対応ブロードキャスタ(4)営農管理システム
 ▽目標=無人トラクタ等の導入により大麦の播種能力を倍増。可変施肥システム等の活用により化学肥料使用量10%低減。大麦の収量10%向上。生産者利益10%向上。
 ▽目標に対する達成状況=無人トラクタを導入し、作業者や農機及び圃場の配置を工夫した「スマート播種体系」を確立。スマート播種体系により、慣行の体系と同人数・同作業時間で1日当たりの播種面積が倍増(2・0ヘクタール/日↓4・3ヘクタール/日)。衛星センシングシステムを活用し、生育診断マップを作成して追肥の可否判断を実施。
 ▽導入技術の効果
 スマート播種体系=播種面積を倍増した「スマート播種体系」は、種子や肥料の補充作業のみを行っていた補助者が、無人トラクタの監視も行うことで、慣行と同人数で有人・無人トラクタの2台を同時稼働させた。
 播種面積の倍増=無人トラクタを活用したスマート播種体系により、慣行播種、前年産実績のどちらと比較しても日当たり最大播種面積の実績値を2倍以上上回った。
 新規就農者でも作業可能=実証では、新規就農1年目の従業員が無人トラクタのオペレータを十分に果たし、経験の少ない従業員でも熟練技術者並みの精度・時間で作業が可能になることを確認できた。
 衛星センシングシステムを活用=衛星センシングシステムで作成した生育診断マップと地上調査結果から追肥の可否判断を実施した。
 ▽今後の展望・課題
 播種面積倍増を達成した際の運用体制・運用方法については、マニュアル化や積極的なアウトリーチ活動により、技術の横展開を進める。大麦の栽培が終了する次年度にかけて、さらに可変施肥等によるスマート施肥体系を確立し、化学肥料使用量の10%低減や大麦の収量10%向上等の目標達成に向けた実証を行うとともに、実証経営体における経営収支の改善効果を検証する予定。

カテゴリー別最新ニュース