MENU
令和7年5月5日発行 第3550号 掲載

市場の概況:農業産出額1924億円/宮城県特集

 宮城県は東北地方の東南部に位置している。奥羽山脈(西部)、北上高地(北部)、阿武隈高地(南部)から流れ出る河川によってつくられた肥沃な仙台平野は東北一の広がりを持つ豊かな穀倉地帯となっている。東北地方としては比較的温暖で降雪が少ないのが特徴だ。
 2023年の宮城県の農業産出額は1924億円(全国18位)。内訳は畜産833億円、米731億円、野菜274億円、花き25億円、果実19億円。農林水産省の地域特産野菜生産状況調査(令和4年産)によると、セリとパプリカの生産が全国1位。
 農業では全国トップクラスの大区画水田整備率や、園芸栽培に適した気候や立地条件のもとで、「ひとめぼれ」「ササニシキ」「だて正夢」「金のいぶき」などのみやぎ米の生産と販売拡大に力を入れている。
 また、「仙台いちご」や「仙台牛」をはじめとする食材王国みやぎの自慢の品々を全国に向けて発信していくとともに、競争力の高い園芸産地の確立や先進技術の導入による生産性の高い農業を推進し、多様な人材が活躍する魅力ある農業の実現を目指している。
 乾田直播栽培の普及が進んでおり、宮城県は東北地方の各県の中で最も普及面積が大きく、太平洋側を中心に年々拡大している。乾田直播栽培は高速での播種作業が可能となり、麦や大豆で使う機械を活用でき、代かきが不要で用水の確保前に播種作業が行えるといったメリットがある。今後さらに期待が高まる栽培技術として注目されている。
 また、22年度から大崎地域を中心に子実用トウモロコシの実証栽培をしており、主食用米からの新たな転換作物として産地化に向けた取り組みに期待が寄せられている。
 水田の汎用化が進む宮城県は耐湿性が低い子実用トウモロコシの栽培に最適だ。水田での子実用トウモロコシの生産は▽労働生産性が高い▽輪作作物の生産性向上に寄与する▽耕種農家の保有機械での作業が可能▽耕畜連携による地域内の資源循環につながる―といった利点がある。
 涌谷町では県農業改良普及センターをはじめとする関係機関等の普及活動により、民間飼料会社との取り引きが成立し、町内の農業生産法人等が39ヘクタールの実証栽培に取り組んだことに加え、他市町の耕種農家に波及し、各地域で子実用トウモロコシの栽培が行われた。
 また、JA古川と全農系飼料会社が連携し、大崎市の大豆生産組織が92ヘクタールの実証栽培を行ったことなどにより、県内の子実用トウモロコシの栽培面積は約160ヘクタールとなった。涌谷町や大崎市におけるこうした取り組みには22年度「畜産生産力・生産体制強化対策事業」の生産実証支援が活用されている。 
 宮城県は県内7カ所にRTK基地局を整備し、23年4月から正式運用を開始した。RTKとはReal Time Kinematic(リアルタイムキネマティック)の略で、GPSなどのGNSSの位置情報に固定基地局の補正情報を加えることで、2~3センチ程度の誤差で農業機械の正確な位置情報を取得することができる技術。
 これを利用することで直進作業の精度が向上したり、自動でトラクタやドローンを操作したりすることができるようになった。可変施肥の地図情報とともに圃場の位置に合わせた施肥量を散布機に指示することも可能。
 宮城県のRTK利用件数は24年に100経営体を目標としていたが、今年3月末時点で228経営体、利用面積は約9300ヘクタールとなっており、後付け自動操舵システムを中心にスマート農機の導入が急速に拡大している。
 地域別には、特に石巻市と登米市で自動操舵システムの導入が進んでおり、大規模の土地利用型の経営体の導入事例が増えている。
 ドローンの活用の幅も広がっている。水稲以外にも露地野菜や果樹などでの活用事例があり、大豆の殺虫・殺菌・赤カビ防除、子実用トウモロコシへの防除のほか、追肥にも対応できる。
 宮城県はRTKの利用拡大を図り、スマート農業をさらに普及させるため、農機メーカーや関係団体、農業者などで構成する「みやぎRTK利用拡大コンソーシアム」を23年9月に設立した。活用事例の把握や改善策の検討、実証モデル設置による技術実証、情報発信を強化している。
 今年1月には仙台市内でセミナーを実施。(株)西部開発農産の担当者が大規模営農におけるスマート農業技術の活用について説明したほか、県の担当者がRTKシステムを利用したモデル実証について紹介した。
 昨年9月には栗原市内でRTKシステムを活用したタマネギ機械化一貫体系の現地研修会を開催。RTK装着トラクタによる畝立て同時播種作業やRTK装着ブームスプレヤーによる除草剤散布の実演を披露した。
 「みやぎスマート農業通信」を年数回発行し、最新のスマート農業技術の紹介やセミナーの開催報告、補助事業等の各種支援メニューといったスマート農業に関する情報を提供。
 RTK利用者の中には作業負担が9割軽減したと感じている人も。県はRTK利用者の声を集めたパンフレットを作成し、導入事例や成果をアピールしている。
 宮城県農政部農業振興課先進的経営体支援班技術主任主査の齋藤達彦氏は「コスト面で導入へのハードルが高いと感じている人もいる。RTKの利用によりコストや労力がどれくらい解消されるのか、具体的な指標を示しながら、さらに訴求していきたい」と話す。

カテゴリー別最新ニュース