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令和7年4月14日発行 第3547号 掲載

九州沖縄農研センターなど:大豆多収の研究発表会/野菜・畑作関連機器特集

 農研機構九州沖縄農業研究センター、九州農政局、全国農業改良普及支援協会は2月18日、福岡県福岡市のレソラホール及びWebにて「大豆多収研究発表会―農研機構発!多収新品種、新技術で目指す大豆単収350kg!―」を開催した。同機構が大豆単収向上に貢献するべく開発した、多収新品種「そらみのり」、新播種技術「ディスク式高速一工程播種」、排水改善に有効な「カットブレーカー」について発表した他、パネルディスカッションを行った。
 開会にあたり挨拶した九州沖縄農研センター所長の澁谷美紀氏は、国産大豆に対する実需・消費者の期待は非常に高いものがあるものの、近年、特に九州地域では大豆の単収低下が著しく、令和4年は10アール当たり132キロと低迷しており、その背景の1つに異常気象があると説明。そこで、気象変動へ対応する栽培技術と、規模拡大や労働力不足を踏まえた省力化に資する技術・品種の開発が求められていると語り、今回は農研機構が開発した新品種と新技術を紹介し、パネルディスカッションで地域を代表する生産者・実需者にも加わってもらい議論すると開催趣旨を述べた。
 次いで、▽九州地域の大豆をめぐる事情(農林水産省九州農政局生産部生産振興課課長補佐・庭瀬功氏)▽収量が高く豆腐に利用できる新品種「そらみのり」(農研機構九州沖縄農業研究センター暖地水田輪作研究領域作物育種グループ上級研究員・大木信彦氏)▽高能率と排水性を両立する新播種技術「ディスク式高速一工程播種」(同センター暖地水田輪作研究領域スマート水田輪作グループ上級研究員・松尾直樹氏)▽水田転換畑での排水改善に有効な「カットブレーカー」(同センター研究推進部事業化推進室室長・高橋将一氏)―の4講演が行われた。
 庭瀬氏は九州地域の大豆生産について、作付面積は横ばい、収穫量及び単収は令和に入り右肩下がりになっている状況を示し、九州大豆作の課題として、(1)産地が有明海沿岸に集中しており1つの自然災害で大きな被害(2)品種切り替えが遅れていることなどを指摘。今後の方向として、安定供給を目指すための方策として、主産地以外でも早期水稲の後作などによる作付面積の拡大を図ることや、近年新たに開発された極多収品種「そらみのり」への切り替えにより単収向上を進めることなどをあげた。
 一方、大木氏は農研機構が開発した大豆の多収新品種「そらみのり」を紹介した。九州の主力品種「フクユタカ」は80年に育成され、温暖化に伴う気象の変化で裂莢による収量ロスや葉焼病の発生等が顕著になっていると課題を示したうえで、そらみのりの主な特性を説明。そらみのりは、フクユタカに比べて(1)植物体が大きく、分枝数・さや数が多くて多収(2)成熟期が1週間程度遅い(3)難裂莢性、葉焼病抵抗性を有する(4)立枯性病害に弱い(5)百粒重がやや小さい(6)粗タンパク含有率がやや低い(7)へその色が黄色で外観品質に優れる―などの特性をもつ。2023年に普及を開始し、同年の10アール当たり収量は282キロとなり、フクユタカ167キロに比べ約7割増となった。また、製品化率や豆腐・納豆への加工適性も評価が高く、今後は普及地域・面積の拡大並びに種苗確保、乾燥調製・流通の対応が課題になる等と語った。
 他方、松尾氏は同機構が開発した、逆転ロータリと大型サイドディスクを利用したムギ類収穫後の未耕起圃場における大豆の画期的な播種技術「ディスク式高速一工程播種法」について紹介した。畝の両側に排水溝が形成可能で湿害による減収を軽減する上、一工程播種のため前起こしなどが省略でき、高能率化・高速播種・安定生産を実現できるもの。専用サイドディスクアタッチメント「溝付ディスク(BUR10―MD)」は松山(株)が昨年10月より販売。なお、農研機構は3月末、同機構ホームページにて当該技術の概要及び作業機の設定方法などを解説した標準作業手順書と動画を公開した(既報)。
 また、高橋氏は、九州の大豆作は本暗渠が施行された水田を用いた転換畑の割合が高いことから、畑作物の栽培に必要な湿害回避・排水改善策として、農研機構が提案しているカットブレーカーによる排水対策を紹介。同機構は農家がトラクタで施工できる排水改良機「カットシリーズ」と施工方法を紹介しており、V字状の刃を持つ全層心土破砕機カットブレーカーはその1つ。V字状の刃で土塊を切断・持ち上げ、土塊の重さで深層に挿入して心土を破砕し、50~70センチの幅広でV字状の膨軟な破砕溝を構築して透水性と通気性を改善、根域として活用する。1度施工することで3年程度は排水効果が期待できるという。秋田・熊本で現地実証を行ったところ、秋田ではカットブレーカー施工により排水が促され、湿害が軽減し、施工区の収量は10アール当たり241キロとなり、無施工区に比べて32%増収した。熊本でも同様に、施工後1作目の小麦は同594キロ(無施工区比36%増)、2作目の大豆は同285キロ(同16%増)となったとして、水稲後のカット施工で麦・大豆の収量向上が期待できると述べた。
 その後、新品種・新技術を導入した生産者や流通業者を交えてパネルディスカッション「大豆単収350kgへのロードマップ 新品種・新技術の導入効果と課題」を行い、新品種・新技術の導入効果と大豆増収に向けた課題等について議論した。

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