農研機構:ドローン用いた技術開発/ドローン特集

【新水稲生育診断・追肥量算出システムの開発】
米の収量や品質に関して、ドローンによる上空からの生育診断が試みられているが、現行のカメラでは植物が反射した太陽光を撮影するので、太陽高度や日射量の影響を強く受け、精度が低い。一方で、自ら光を発する測定器を用いて手作業で地上データを収集する方が精度は高くなるが、その作業効率の悪さから普及が限られている。
こういった現状に対して、農研機構・九州沖縄農業研究センターでは、上空のデータを、地上数カ所のデータで補正することで精度を上げる試みが行われた。
具体的には、まずマルチスペクトラムカメラ(人の目で見えない波長を含む複数の光の波長情報を取得できる分光カメラ)を搭載したドローンで、全ての圃場を上空から撮影してデータを得る。次に、全圃場のうち3カ所(生育の良い部分・悪い部分・その中間)の地上データをハンドヘルド型測定器を使用して測定する。最後に、上空データを地上データで補正する。結果として、全圃場を地上のみで測定したデータと、同程度の高い精度になることを明らかにした。佐賀県で2021年に行った「ヒノヒカリ」の実証実験では、この補正データを基に生育診断を行い、目標とする収量に応じて追肥量を決定(基肥が時間をかけて土壌中に溶出する緩効性肥料の場合は残存量を差し引いて算出)し、施肥を実施。目標とした収量に近い結果となり、倒伏や玄米タンパクの増加もなかった。
同研究で開発された追肥量を算出するプログラム(Microsoft Excelで作成)は農研機構に問い合わせることによって利用できる。上空データと地上データさえ測定できれば独自に算出が可能だ。プログラム名は「水稲生育診断・追肥量算出システム」。APIも開発し、農業データ連携基盤「WAGRI」を介して各社の営農支援システムなどで利用できるよう、農研機構のサーバーに搭載した。実際に生産者数件から、利用に関してのアドバイスを求められたという。とはいえ、マルチスペクトラムカメラを用意したり、正確な測定を行ったりするのは、気軽にできることではないので、現在は民間企業との連携により実用化に向けた実証試験が進んでいる。また水稲だけでなく、小麦、大麦、茶に利用できるプログラムも開発中だとし、農薬散布に利用する可能性も探っている。
【農業熟練者のワザをAIに置き換え】
スマート農業の導入を推進する「ふくいスマート農業推進大会」が3月12日、福井県産業会館(福井市)で開催され、35の団体や農機メーカーがブースを出展した。ドローンのプロモーションにも力を入れており、ステージでは機体を展示しながらプレゼンテーションが行われ、屋外ではデモフライトも実施された。同イベントで農研機構が「AI画像認識技術の農業分野への応用」と題した講演を行った。その一部を紹介する。
北海道十勝地域の農業生産現場は、平均して40ヘクタールの広大な耕地で、農作物の生育状況を細かく管理できないという問題があった。これに対して、農研機構ではドローンで画像を収集し、圃場の状態を迅速に、客観的に把握する取り組みを始めた。今から15年ほど前のことで、撮影用のドローンは手に入りづらい状況だった。そこで研究者は海外で公開されていた設計図を元に自作したという。この方法を「バレイショ(ジャガイモ)疫病」(感染すると葉が褐色に変色する)の検出に応用した。まず防除をしていない試験圃場を420プロットに区切り、340品種を栽培。7月中旬~8月中旬にかけて17回空撮し、画像からAIで病害カ所を自動検出した。病徴の時系列変化から抵抗性を算出し、各品種の病害抵抗性を評価した。バレイショ疫病は感染した際の外観がわかりやすいので自動検出しやすかった。しかし種芋生産圃場で実施した「ジャガイモウイルス病」(葉巻病、モザイク病など様々な病気を引き起こす)は、感染した株の見分けが非常に難しく、ドローンを用いる検出では精度に限界があった。そこで検出精度を高めるべく、手持ちカメラに切り替えて病気の葉を撮影し、感染株の病徴を初期、中期に分類。それら膨大なデータをAIに深層学習させた。
ジャガイモウイルス病に感染した株は掘り起こし、圃場から排除しなければ、更なる感染を引き起こす。農業熟練者は、隣り合った株を見比べ、違和感のある異常な葉を見つけ出すという地道な方法で感染株を排除していた。同研究では、膨大な撮影データを使い、熟練者と同じ方法を丁寧にAIに学習させることで病気検出の精度を向上させた。ドローンによる迅速な検出や、他の作物への応用にも期待したい。









