農研機構が「北海道スマートフードチェーンプロジェクト事業化戦略会議2025」開催/2025春の北海道特集

農研機構は12日、北海道帯広市の帯広市民文化ホールで「北海道スマートフードチェーンプロジェクト事業化戦略会議2025」を開いた。
会の冒頭で農研機構理事長の久間和生氏が挨拶に立ち、「北海道農業の経営環境が厳しさを増す中、スマート農業による省力化と生産性の向上が強く求められている。今後、現在の開発課題の早期実用化はもちろんのこと、現場ニーズに応えるインパクトの大きな成果を出すことで北海道の農業・食品産業の競争力を強化し、地方創生に貢献していく」と決意を述べた。
続いて、来賓としてホクレン農業協同組合連合会代表理事会長の篠原末治氏の挨拶を同連合会代表理事の前本政道氏が代読、フードバレーとかち推進協議会長の米沢則寿氏(帯広市長)がビデオメッセージで祝辞を述べた。
第1部では、農研機構北海道農業研究センター所長の奈良部孝氏が「北海道スマートフードチェーンプロジェクト―農と食に関する開発技術を速やかに社会実装へ」、農研機構北海道農業研究センター寒地畑作研究領域長の辻博之氏が「高精度気象データを利用したテンサイ収量予測モデル開発とバレイショ生産の省力化」、農研機構北海道農業研究センター寒地酪農研究領域長の矢用健一氏が「大規模酪農の省力化技術と特徴ある道産牛乳生産に向けた取組み」と題して講演した。
研究トピックとして国立大学法人北海道国立大学機構帯広畜産大学環境農学研究部門准教授の川村健介氏が「牧草のスマートセンシング技術開発」についての取り組みを発表。
川村氏はリモートセンシングとIT技術を活用した草地生態学と放牧管理技術の研究に従事している。草地診断や飼料成分評価を通じてスマート農業を推進。ニュージーランドの放牧管理の研究やラオス、マダガスカルでの持続的米生産の評価技術開発などにも携わっている。
講演では、ドローンのセンシング技術により、放牧前後の草量から牛の採食量の推定や、ヨーロッパ原産のタデ科の多年生雑草エゾノギシギシを早期に発見して防除するための、雑草の検出などができるようになっていることを紹介した。
また、センシング技術を使えば牧草地の牛ふんの検出も可能になり、放牧牛がどこで糞を排泄しているのかが分かるようになるという。
生産現場への活用に向けた課題として、▽高度を上げるとドローンの飛行時間が短縮する▽高度20~40メートルで飛行時間に大きな違いが生じる▽大きな面積になるほど飛行時間の変動が大きい―ことなどをあげた。現在はドローンから、広域を定期的に観測可能な人工衛星へスケールアップする技術開発の研究も進めているところだ。
第2部では、東洋農機(株)代表取締役会長の山田政功氏が「スマート農業技術で支える持続可能な農業」と題して特別講演した。
農林水産省の「農業構造動態調査」「農林業センサス」によると、北海道の経営体数が2023年は3万2000戸あるのに対して、22年後の45年には1万戸まで減少、1戸当たりの平均経営面積は34ヘクタールから113ヘクタールに増大することが想定されている。
山田氏は、我が国有数の食糧基地である北海道農業は、生産性向上のための省力化・効率化を求めて大型機械を導入し、作物ごとの農作業に対応するトラクタ接続型の作業機が開発され、発展してきたことを説明。
家族経営での規模拡大には限界があり、解決のためにはスマート農業の導入による省力化が必要不可欠だが、農機メーカー間またはトラクタ・作業機間で通信制御方法が異なることが障壁となっている現状を解説した。
こうした背景から、国際標準規格「ISOBUS(イソバス)」を組み込んだ農機の早期開発が望まれている。ロボット農業の課題として、▽リモコンや操作タブレットのWi―Fi通信距離が短く、使用する許容量に限界がある▽国産作業機の自動化の開発が遅れている▽国産トラクタのGPS・ISOBUSの未装着―などがある。農機のメンテナンスをする高度技術人材が不足しており、大学・高専・高校での人材育成に関する仕組みも十分であるとはいえない。山田氏は「北海道農業に適したスマート農業の方向性を決定して推進していくことが求められている」と強調した。
解決のための方向性として、まずは現場を優先的に考えた圃場内の完全自動化を進め、AIデータを活用したロボット農業の実現や複数台でのロボット作業を同じ圃場内で行うことが有効だ。
オプションの統一化・共通化も必要。後付けするオプションを共通化することで開発コストを削減でき、作業機の異常を検知したら作業機からトラクタに停止指示と管理者に通知する機能を共通化することで安全性が確保される。
営農支援システムを統一化し、生産者とJAが作物ごとの生産履歴データの入力・管理、農業団体がビッグデータを管理する仕組みも必要だ。AI生産履歴データを用いた営農指導により、品質向上と生産量の増加を図り、収益向上を目指せるようになるという。また、農業技術の継承のためにも、こうした生産技術の「見える化」は重要になってくる。
山田氏の講演後、パネルディスカッションがあり、「生産現場が使いたくなるスマート農業技術」についてパネリストらが意見交換をし、会場の参加者からの質問にも応じた。
農研機構は、北海道における農業産出額の2割を占める十勝地域において、「農業・食品版のSociety5・0」の早期実現を加速させることにより、農畜産物の生産性及び収益の向上を図り、農業・食品産業の競争力強化及び産業振興を通じた地方創生に貢献するため、2022年3月から「北海道十勝発スマートフードチェーンプロジェクト」を開始。24年4月から名称を「北海道スマートフードチェーンプロジェクト」と改めて全道展開している。









