県の取り組み:農家減少に危機感/熊本県特集

熊本県におけるスマート農業の取り組みを、農林水産部生産経営局農業技術課普及振興企画班の楠田倫主幹、香月みなみ主任技師、同課農業革新支援センター産地づくり支援班の山並篤史主幹に取材した。
まず、2021年2月、県の食料・農業・農村基本計画でのスマート農業の取組方針に、4年計画として「ロボット技術やICT技術に加え、栽培環境や農作物の生育状況など多種多様なデータを見える化し、スマート農業をフル活用することで、大幅な省力化や生産性の飛躍的向上、高品質な農作物の安定生産を実現する」と記載。指標としてドローンを活用した土地利用型農業防除面積の割合を2019年の5%から2023年目標13%と設定し、その結果、実績14%と目標を達成。着実に農業のスマート化を前進させている。取材時点(2月末)は、来年度より始まる新たな取り組みを策定中であった。
スマート農業の取り組み事例としては、(1)農作業の効率化(2)収量・品質の向上(3)技術の見える化―の3点をあげた。
(1)は、ドローンを用いた農薬散布が、水稲で増加してきている。これを果樹でも応用できないかということで、柑橘やクリなどで検討した。また、自動操舵システムやロボット農機の実証なども水稲栽培において行った。(2)では、環境モニタリング装置を活用した若手農業者の栽培技術の向上を図るべく、イチゴハウス内の環境データを見える化し、ベテラン農家のデータを新規就農者と共有することで、技術向上に役立てる。(3)は、ベテラン農家の管理作業を動画で紹介し、管理のポイントを見える化、マニュアル化。これは昨年3月、大玉スイカの栽培マニュアルとして冊子にまとめ、農業者を含む県内関係者限定で配布した。普及指導員からは、新規就農者への教育ツールとして、非常に使いやすいとの評価を得ており、今後の活用が期待される。 また、スマート農業推進に向けた県の新たな取り組みとして、(1)農業者と企業のマッチング(2)指導者向け研修会の開催(3)アドバイザー派遣の3つを令和6年度に行った。(1)は、農業者の要望や課題等を事前調査した上で、それに合致する企業を選定し、県から呼びかける形で参加企業を募り、農家と企業をマッチングするというイベントを実施。ありそうでなかったコンセプトだったこともあり、参加企業や参加できなかった農家からはまたやってほしいという声も聞かれた。
(2)は、市町村の職員や普及指導員、農協職員など指導する側で、現場に即したスマート農業を推進できる人材を育成する目的で大規模な研修会を10月と2月に開催した。10月は全般的なスマート農業の導入事例について、実証プロジェクトに関わった担当者を招いて講義をした。2月は、モニタリングデータの読み取り方として、実際の数値をどう読み取って、どう指導につなげるかをレクチャー。いずれの回も実習の時間を設け、10月は生成AIの使い方、2月はデータ分析を行った。(3)は、現場で困っている人に専門家を派遣し、アドバイスをするという取り組み。初回は、スマート農業全般に詳しい専門家を招いてレクチャーした。
楠田主幹は「熊本に限った話ではないが、急速な農業人口の減少に危機感を感じている。このままでは農地の維持も難しくなってくるという実感から、スマート農業機器を活用した省人化や効率化にどうしても取り組んでいかなければならないし、若手農業者にも早く一人前になっていただきたい。その思いが正直なところ」と述べた。
これらの話を聞き、現場の実情や声に対して真摯に向き合い、誠実に対応していることが垣間見えた。このような地に足のついた地道な取り組みが県農業の活性化につながっていくことだろう。









