全国農業システム化研究会から:可変施肥技術を実証/土づくり・トラクタ作業機特集

一般社団法人全国農業改良普及支援協会(岩元明久会長)がこのほど開催した「令和6年度全国農業システム化研究会最終成績検討会」(2月24日付既報)から、福岡県久留米普及指導センター、福岡県農林水産部経営技術支援課が発表した「水稲作におけるザルビオフィールドマネージャーを活用した可変施肥技術の実証」結果をみる。
肥効調節型肥料を用いた基肥の可変施肥では、慣行の2割減肥で収量は同等かつ倒伏軽減効果が得られた。本試験では、所得が約2500円/10アール減少したが、収穫作業の遅延がなくなり作業進捗管理の軽減が期待できるため、普及性は高いと考えられるとした。
実証調査の担当者は、福岡県久留米普及指導センター主任技師の山内崇彰、福岡県農林水産部経営技術支援課専門技術指導員の坪根正雄の両氏。実証調査場所は、福岡県うきは市吉井町。実証実施期間は2024年5~10月。
常時雇用を導入している大規模経営体では、経営の安定が不可欠である。そのため、米麦生産における収量・品質の高位安定化や、計画的な適期作業を行うための栽培技術の確立が求められている。併せて、肥料高騰の情勢下での施肥の効率化が課題となっている。
このため(1)地力マップを活用した可変施肥を実施し、施肥の効率化の他、生育・収量の均一化による収益性や作業性を検証する(2)ザルビオによる生育マップとドローンセンシングによる生育診断との比較検証を行い、衛星画像データを活用した補正追肥による生育・収量の均一化の効果について検討することとした。 実証結果の概要をみると、肥効調節型肥料を用いた基肥において、ザルビオの地力マップに基づいてブロードキャスタで可変施肥した実証区では、慣行区の1割減で設定した量(27キロ/10アール)を散布する計画であったが、実散布量は2割強を減量した23・2キロ/10アールとなった。この要因として、圃場幅と散布幅の調整が不十分であり、一部、無散布箇所が発生したと考えられた。
地力マップで示された各区圃場内の地力に応じた「地力高」、「地力中」、「地力低」の地点別に、それぞれ生育、収量等を調査した。その結果、実証区では各地点の穂数がほぼ同程度となるなど、圃場内の生育ムラの解消が図られた。また、実証区では全体的に軽度の倒伏であったのに対して、慣行区では一部で中~多程度の倒伏が発生した。一方で、収穫作業時間は同等であった。なお、各区圃場の実収量は同等であり、両区ともに穂数、平方メートル当たり籾数が多かったため、登熟歩合が低く、千粒重も軽い傾向であった。この要因として、水稲の生育期間を通じて非常に高い気温で経過したため、緩効性窒素が早く溶出した可能性があると考えられた。
実証区では慣行区と比べて、10アール当たり収量は2%少なかったが、資材費は1768円減少した。また、作業時間は34秒増加し、減価償却費は553円増加。支出は1202円の減少、収入は3700円減少、所得は2498円減少した。
考察としては、本試験では、設定通りの可変施肥とならず慣行区より収量が少なかったため、所得はやや減少した。しかし、大規模経営における可変施肥の導入は、収穫作業や進捗管理の軽減による経営全体への改善効果の方が大きいと考えられる。一方で、減収しない適正な施肥量や、可変施肥の設定方法の検討も必要であるとした。
ザルビオの生育マップとドローンセンシングによる生育診断に基づく補正追肥の比較検証については、結果が判然としなかった。
今後の課題・展望としては、基肥や追肥の適正な施肥量など、複数年度での検証が必要、と考えられた。









