各社の対応:米価高で意欲高まる/福島県特集

昨年6月に就任した三菱農機販売(株)東北支社宮城支店宮城福島担当の成田浩之氏によると、米価高騰の影響により、全体の実績は前年度比で概ね好調に推移しているという。
主要3機種は新型田植機が好調だ。昨年2月にリリースした6条/8条の新型乗用田植機「XPS6」「XPS8」は、高速植え付けに対応した「トランスフォーム植え付けシステム」を新たに開発し、業界最速(1・95メートル/秒)の植え付けスピードを実現。農地の集約化が進む県内農家にマッチしている。
トラクタは小規模圃場で活躍するXSシリーズ(18・2~25PS)が人気だ。ビニールハウス内などあらゆるシーンで活躍でき、小回りが効いて作業性が高い点が評価されている。秋の収穫作業が終わった後の1~3月の受注も増えており、「見通しは明るい。このまま米価が安定してくれれば」と成田氏。
展示会は、大玉村で昨年8月に開催された第22回中古農機フェア(福島県農業機械商業協同組合主催)に参加した。物価高騰の影響で、リーズナブルで購入しやすい中古農機は人気が高い。後継者不足で新品を買うのが難しい人にも提案しやすい。実際に機械を見てもらうことで、「これならば新品を買おう」と考える人もいるといい、展示会は多様な顧客と出会える貴重な機会だ。
修理、メンテナンス事業も堅調。最近の機械は性能が上がっており、トラブルが少ない傾向にあるが、長く大切に扱う人が増えており、計画的にメンテナンスを依頼する人が多い。
スマート農業については、「福島県は他県と比べると普及が遅れがちだが、4月からRTK基地局が県内一円で運用開始されることで、飛躍的に導入が進むのではないか」とみる。
三菱ではスイッチ1つで直進自動操舵ができるSE―Naviの他、乗用田植機「XPS6」「XPS8」などを中心にPRを進め、より一層スマート農業を推進していく方針だ。
各社が様々な新製品を次々にリリースしている。「時代はスマート農業だが、ただ単純に各機種の特徴をアピールして購入を促すだけでなく、他の作業機の提案もしながら、スマート農機の販売をしていきたい」と成田氏。
スマート農機はコストや操作性など導入へのハードルが高いと思っている農家も少なくない。大規模農家だけでなく、小・中規模農家などそれぞれの農家に合わせた柔軟な提案をして、スマート農機の普及を進めていく。
主力商品の国産初のショートディスクハロー「KUSANAGI(クサナギ)」も年々販売台数を伸ばしている。ホームページで実演を受け付けており、問い合わせが相次いでいる。特に若い年齢層の関心が高く、納得して買ってもらえるように今後も実演を続けていく。
浪江町に本社を構える常磐菱農(株)(高野一英社長)は、昨年の実績はまずまず。トラクタとコンバインは伸び悩んでいるものの、新型のナビ付き田植機などは好調だという。スマート農機はナビ付き田植機やドローンに動きがある。
ただ、ドローンは初期コストをかけて終わりではなく、毎年のメンテナンスのためのランニングコストがかかるという課題があり、「そこをクリアしないと普及はなかなか難しいのでは」と慎重だ。
展示会は昨年2回、浪江本社と相馬営業所で開催した。震災の影響で浪江町を離れた人は多い。展示会を開催しても人が来るか不安を感じていたが、2023年に12年ぶりに開催。すると思いのほか多くの人が訪れた。懐かしい仲間と再会し、毎年開催してほしいという声も聞かれた。震災前は120人ほどだった来場者数が、今は150人ほどとなり、売上げも上々だ。
草刈機に注目が集まっている。展示会では手押しの草刈機BULL MOWER(ブルモアー)が売れ筋だ。背の高い雑草も綺麗に粉砕するのが特徴で、年間20台ほど動いているという。「今年はラジコン草刈機スパイダーモアーも実演を交えながら紹介し、アピールしていきたい」と意気込む。今年も3月と7月に展示会を開催する予定。
メンテナンス、修理の依頼はメーカーに関係なく様々な機種が整備工場に入ってくる。震災直後は修理依頼が殺到したが、その時に比べると依頼数はだいぶ落ち着いてきた。
浪江町出身の高野社長は東日本大震災の約10日前に3代目に就任した。2011年3月11日、本社の2階で展示会の準備をしていたときに震度6強の揺れが浪江町を襲った。ガラスがバリバリと大きな音を立てて割れ、ロッカーが倒れたり、書類が散乱したりした。幸いにも従業員の中に怪我人はいなかったが、「もう終わったと思った」と当時を振り返る。
浪江町から離れる人や閉業を決断した会社もあり、浪江町で農機を取り扱う会社は常磐菱農だけとなった。
震災直後は避難の関係で浪江町から100キロ離れた猪苗代町から浪江まで通ってくれた整備士もいた。
現在は浪江町、相馬市、いわき市平、田村市都路の4カ所に営業所を構える。震災前は営業所が7カ所あったが、南相馬市原町を浪江本社に統合し、浪江町津島と富岡町の2カ所は閉鎖した。「営業所が浪江だけなら廃業も考えたが、営業所が複数あったから、なんとか続けなければと気持ちを奮い立たせた」。
2022年7月には浪江本社をリフォームし、従業員がより働きやすい環境を整えた。高野社長は「地域に根付く販売店としてこれからも農家に寄り添い、会社を守り続けていきたい」と力強く語る。
浪江町には、県外から移住してトルコギキョウやストックといった花き栽培を始める人も増えているという。安定した収益の確保や移住者の定着にはまだまだ課題はあるが、震災から約14年が経ち、再注目されつつあるようだ。
ヤンマーアグリジャパン(株)東北支社南東北営業部中浜ブロックエリアマネージャーの吉田昌孝氏によると、昨年9月までは平年並みの実績だったが、米価が高騰した10月以降、コンバインや乾燥機といった秋商品を中心に順調に推移している。3月の決算では計画通りの見通しだという。コロナ禍で買い控えをしていた農家の購買意欲も高まっており、田植機やトラクタなどの春商品の売れ行きも後押ししている。
11月以降は各エリアで実演会を開いた。吉田氏は「購買意欲が高まっているこの時期に訪問を強化し、お客様に納得して買ってもらえるような提案を進めていきたい」と強調した。
今年4月から県内11カ所でRTK基地局が本格運用されることに伴い、人手不足解消の観点からもスマート農機がますます注目されていく。主にドローンや自動操舵に動きがある。特に被災地の浜通りは、営農再開に向けて農地の集積や大区画化を進めており、スマート農機は欠かせない存在になっている。
「ヤンマーのトラクタは直進アシスト仕様の比率が高くなってきている。RTK基地局が運用開始されることで、より具体的にスマート農機の提案ができるようになってきた」と吉田氏。
ラジコン草刈機も人手不足解消やコスト削減、農作業事故防止の観点から需要が増えている。2023年7月にリリースしたYW500RCは最大45度までの急斜面での作業を可能にし、草刈りの負担を大幅に軽減。遠隔操作により不安なく作業でき、作業がしづらい場所でも、送信機画面で機体の傾斜角度を確認できる。
今年3月から販売開始するYW500RC'AEはリコイルロープを引かずにセルスイッチ操作でエンジンを始動できるようになった。「YW500RCは発売以来、安定して売れている。今後も性能をアピールしていく」と吉田氏。
メンテナンスや修理の依頼も増加傾向にある。できるだけ機械を長く使いたい人や、農機のトラブルを少なくするために計画的にメンテナンスする人が多くなっているという。
続いて、大寒波で記録的な大雪となっている会津地方について。会津ブロックエリアマネージャーの島影守宏氏によると、積雪は例年の3倍以上で、雪が少なかった昨年に比べて除雪機の受注が急増している。
ビニールハウスが積雪で倒壊するトラブルが相次いでおり、従業員が総出で対応に当たっている状況だ。従業員はなんとか出社できているものの、道路の渋滞や通行止めなどの影響で通勤時間に通常の3~4倍かかっているという。つい先日も会津若松市内にある事業所の目の前でトラックがスタックし、従業員が手助けした。
主要3機種の動きはコンバインを中心にそれぞれ好調だ。島影氏は「会津コシヒカリの生産がさかんな地域。米価高騰に加えて、今年は夏場の天候が良かった。これにより稲穂の丈が伸びて倒伏が激しくなり、刈り取りがスムーズに進まないケースが増えたことなどが要因ではないか」と分析する。これを受け、会津管内6拠点(うち3拠点は大雪の影響で来月に延期)で倒伏を避けるための稲づくり講習会を今月開催した。計100人以上が集まり、好評を得た。今後も農家の役に立つ講習会を増やしていく。
福島県内では営農面積10ヘクタール以上の担い手層の割合が高くなっており、10年前の2015年と比べて130%ほど増えているという。米価高騰は特に担い手層に大きく影響しており、面積の大きい農家の所得が確実に上がっている。「今後も担い手層は重要な取引先になってくる。様々な提案活動を強化することで福島県の農業を元気づけたい」と島影氏は語った。
(株)ISEKI Japan東北カンパニー福島営業部長の佐々木伸治氏は「昨年は極端な1年だった」と振り返る。天候不順などはなかったものの、上半期はヰセキの主製品の発売がなかったため、苦戦を強いられた。10月以降は米価高騰の影響で各機種にようやく動きが見られた。
主要3機種はトラクタ、田植機は横ばいだが、コンバインは好調だという。特にフロンティアファイターHFR4050の動きがいい。JAの共同購入コンバインなどの対抗馬であり、相乗効果で順調に推移している。
2023年末に発表したフロンティアマスターFMシリーズは反響が多く、実演後すぐに成約に結びついている。長時間作業でも疲れにくい乗り心地の良さや操作のしやすさなどが評価されているようだ。
また、草刈機の関連商品が好調で計画比、前年比どちらもクリアしている。トラクタの後ろに装着するタイプやスパイダーモアーなどが主流になっている。
夏の猛暑で雑草の生育が早くなっており、防虫対策の観点からも注目されている。草刈りは農作業の中で最も労力がかかるため、草刈機は省力化やコスト削減に役立ち、関連商品は値上げ前の駆け込み需要も見られた。
BFトラクタはゼロ金利キャンペーンの影響もあり、売れ行きは好調という。ドイツ製のサスペンションシートを採用した居住性の高さなどが福島県内の農家にも受け入れられている。
佐々木氏は「FMやBFを目的にしているお客様が多い。展示会や実演会でアピールするのみならず、常に営業所に置き、お客様の目につくように工夫している」と話した。
スマート農機は高精度農機用自動操舵システムCHCナビをメーンに据える。4月から県内一円でRTK基地局が運用開始されることもあり、問い合わせが増えているという。今後もCHCナビを重点機種として普及を進め、大規模ユーザーや法人向けの研修も定期的に開催する。
今年注力したいこととして佐々木氏は「アフターサービスの充実」を挙げた。常にアンテナを張り巡らし、情報をキャッチすることで、機械のメンテナンスやアフターフォローを強化していく。
実は最近の機械は故障が少ないという。各機種の性能が向上しており、ユーザーも扱いに慣れている。主要機を複数台持っている人も珍しくない。だからこそ計画的な点検が欠かせない。「メンテナンスをすることでお客様づくりにつなげたい。信頼関係を構築し、継続していくことが大切。地道に訪問活動を続けたい」と狙いを語る。
(株)南東北クボタの実績は計画比、前年比をともにクリアした。第二エリア長の大木勝治氏によると、年始は停滞していたものの、春の需要期から次第に盛り上がりを見せ、10月の米価高騰が後押しした。
主要3機種はトラクタと田植機は例年並みだが、コンバインが好調で、JAの共同購入コンバインの対抗馬として昨年4月に発売した、がんばろう!日本農業応援機・自脱型コンバインER448N Limited(48PS、4条刈)の販売台数を増やしている。
秋商品は乾燥機に動きがあり、今年の受注も増えてきている。各メーカーが4月以降に値上げを予定しており、昨年12月中の駆け込み需要も見られた。
スマート農機は精度の高い直進キープを中心に、自動操舵、ドローンの提案を積極的に行っていく。特にドローンの関心が高く、クボタ主催のドローン講習会への参加者も増えている。
展示会は昨年3月に郡山市の郡山カルチャーパークで「クボタスマートグリーンフェア福島2024」を開催した。ICT農機の展示や営農支援システムKSASなどを紹介。最新機種の試乗体験コーナーも人気だった。「来場者に若い世代が多くなってきており、非常に心強い」と大木氏は語る。
7月には山形県山形市の山形ビッグウイングで「クボタBIGサマーフェア2024」を開いた。モア祭りと題して、各メーカーの草刈り関連機械が一堂に集結。夏場の高温で日中に作業できない分、キャビン付きのトラクタに乗りながら草刈りをする人が増えているという。
今年は3月と6月に展示会を予定しており、RTK関連やドローン、自動操舵などのスマート農機を全面にアピールしていく。
コロナ禍で展示会のスタイルも変わってきた。コロナ流行前は昼食を提供していたこともあり、昼時に来場者が集中していたが、ここ数年は昼食の提供をなくしたことで分散型になった。目的を明確にする人が増え、短時間での滞在で回転率が良くなっている。
メンテナンス、修理は秋の刈り取り後のコンバイン点検整備キャンペーンを実施した影響もあり、受注は例年よりも多い。県北では、果樹栽培が盛んなので、スピードスプレヤーの点検依頼も増えている。県内数カ所のサービスセンターの他、各拠点ごとにも整備工場があり、様々な要望に応えられる体制を整えている。
今年は農作業安全の啓発に力を入れていく。事故防止のために、訪問の際に安全喚起を促している。今後は講習会の開催なども検討。
これからも社員一人ひとりがビジネスの原点に返り、マーケットインの考え方でお客様に寄り添うクボタの「On Your Side」の精神を大事にしていく。









