EIMAが示す農の未来:世界が注目するトラクタオブザイヤー/イタリア・国際農機展レポート

今回は、EIMA2024における表彰についてみる。
既報の通り、EIMAでは1986年以来、農業及び園芸分野のメーカーが発表した革新的な製品を表彰するテクニカル・イノベーション・コンテストを実施してきた。同コンテストは優れた革新性を有する機械・装置に対して最高賞である「技術革新賞」を、また、既存の製品と比較して独自の改良・改善を施した製品に対して「佳作」を授与するもの。農業機械化における技術革新を披露する場を提供することを目的としている。
対象は、EIMAに出展された生産手順や作業品質を向上させる革新的な機械、付属品、部品を開発した全ての企業となっており、30回目を迎えた2024年のアワードでは20の「技術革新賞」、48の「佳作」の合計68の革新的なソリューションが受賞した。
表彰式はEIMA開催前の10月に先立って行われたが、「技術革新賞」受賞製品は、EIMAの開催期間中、会場中央の専用エリアにて常に展示されており、多くの人が受賞製品を実際に見て、触って、確かめていた。
2024年の受賞をみると、技術革新賞を受賞したのは次の20であった(企業名、受賞製品)。
▽ALPEGO SPA、電動ロータリハロー▽ANNOVI ALDO&C.SRL、前後ベール積載グラブ▽ARAG SRL、オリオンプロ(液体肥料散布の調整・測定統合システム)▽ARGO TRACTORS SPA、マコーミックハイパーセーフティビュー(トラクタ用コンピュータビジョンシステム)▽BCS SPA、MC780E(歩行型電動トラクタ)▽CAFFINI SPA、ゼフィーロ(電動の牽引式噴霧器)▽CNH INDUSTRIAL ITALIA SPA、Quadtrac用ヘビーデューティーサスペンション(アイドラーホイールサスペンションシステム)▽同、ニューホランドT4 F/N/V(高度な支援ガイダンス)▽DE MASI INDUSTRIE MECCANICHE SRL、エネルギーボックス(バッテリー駆動油圧システム)▽DIECI SRL、高速アタッチ(テレハンドラーアタッチメント用のクイックカップリングシステム)▽INFACO SAS、DSESコンタクトレス(非接触破損防止装置搭載の剪定鋏・手袋)▽KUHN ITALIA SRL、オプティマスマート土壌技術(独立型ディスクハロー)▽同、VB 7100ベーラーオートメーション(可変チャンバーラウンドベーラー)▽KVERNELAND GROUP ITALIA SRL、クボタBV6160/6190(可変チャンバーラウンドベーラー)▽MASCHIO GASPARDO SPA、ジャンボX(ロータリーハロー)▽OCLL SRL、ゼンエコブリス(牽引式噴霧器)▽ROTER ITALIA SRL、エナジー(土壌作業用の農業用ロボット)▽SAME DEUTZ―FAHR ITALIA SPA、スマートブドウ園トラクタ(自律走行型ナロートラクタ)▽TECOMEC SRL、ソーチェングラインダーMJ10・8(マグネットカップリング付きバッテリー式チェンソーグラインダー)▽ZANON SRL、ムルシエラゴ・レイザー(電動オリーブ・シェーカー)
一部の概要をみると、CNH社はCase IHのQuadtrac主力トラクタ向けヘビーデューティーサスペンション並びに、ニューホランドの特殊トラクタ向け先進ガイダンスシステムの2製品が受賞した。
前者は2025年モデルのQuadtracシリーズで利用可能となっている4輪駆動トラクタ初のフルサスペンション式アンダーキャリッジ技術。足回りのアイドラーホイールが独立して吊り下げられており、不均一な路面条件に対応する。これにより、生産性の向上、オペレータに伝わる垂直振動の低減、土壌圧縮の低減を叶えると高く評価されている。
後者は、ニューホランド特殊トラクタ用に開発された高度なガイダンスシステムで、果樹園やブドウ園での自動誘導などでGPSの代わりにLIDARビジョンテクノロジーを使用して、列内誘導、枕地旋回、知覚ベースの作業機制御を管理する統合システム。同時に3Dキャノピー・モデリング、畝の端の自動旋回、車両との統合による機能の直接制御、一部器具との統合が可能な点などが革新的と評価された。
また、クボタグループ・クバンランド社のクボタBV6160/6190ラウンドベーラーは、TIM機能(インプルメントがトラクタの各機能を自動制御)に基づいて構築された高度なTIM Pack 2・0を特徴としており、ベールチャンバーの給餌を強化し、詰まりを防ぎ、全体的な効率を最適化する。これにより、農家の生産性が向上し、ダウンタイムが短縮され、ベールの品質が向上し、このクラスで最も高度なラウンドベーラーの1つとなっている。生産性の向上ならびに、オペレータの快適性・安全性を実現できると高く評価された。
一方、EIMA初日には2025年トラクター・オブ・ザ・イヤー(TotY)の受賞者の発表及び表彰式も行われた(イタリア雑誌Trattori主催)。これは1998年に創設された農業機械化の卓越性を表彰する国際的に権威のある賞であり、25人の国際審査員団によって審査が行われ、欧州市場における最高の性能を持つトラクタを表彰しているもの。今回は6つの賞のカテゴリーが設けられ、ファイナリストに残った25台のトラクタが競い合い、各カテゴリーの優勝者は次の通りとなった。
(1)TotYハイパワー(300馬力以上)= Case IH Quadtrac 715(2)TotYミッドパワー(150~280馬力)=フェント 620 バリオ DP(3)TotYユーティリティ(70~150馬力の多目的トラクタ専用)=シュタイアー4120プラス
(4)TotYスペシャライズド(ブドウ園、果樹園向けの40馬力以上のトラクタ)=アントニオ カラロ トニー 8900 TRG(5)持続可能なTotY(持続可能性の観点から革新的なトラクタ)=フェントe107バリオ(6)TotYBot(キャビンのないロボットトラクタ)=AgXeed 5・115T2
同コンテストの優勝者発表及び表彰式は、EIMA見本市において毎回必見のイベントとなっており、今回の発表会場も世界各国による多くのジャーナリストや関係者が詰めかけ、非常に混雑していた。壇上では審査員が各カテゴリーの受賞者を順番に発表し、受賞トラクタのパフォーマンスを紹介する動画が上映され、大いに歓声が沸き起こった。日本からも、惜しくも優勝は逃したものの、ヤンマーのトラクタYT359が果樹園やブドウ園向けの40馬力以上のトラクタ部門であるTotYスペシャライズドのファイナリスト5台に選出されていた。
さらに、EIMA開催期間中は毎日、会場内の屋外エリアにおいて受賞トラクタなどがコースを1周する「トラクター・オブ・ザ・イヤー・ショー」が開催され、多くの若者や親子連れがトラクタの行進を憧れのまなざしで見守っていた。









