広がる直播栽培/雪国直播サミット開催

北海道乾田直播技術向上委員会(新田慎一郎実行委員長)主催の第15回雪国直播サミットが1日、北海道札幌市のホテルポールスター札幌で開かれた。午前中は事務局を務めるスガノ農機(株)の関係者が乾田直播の基礎講座、乾田直播作業機のポイントを説明。午後は道内で実際に乾田直播に取り組んでいる農家の栽培報告、また「乾田直播の実行者(乾直人)100人以上に聞きました」とするアンケート調査結果を基にしたクイズバトルなどを進めた。ここでは同会の概要を振り返る。
「乾田直播基礎講座」は、スガノ農機(株)千歳営業所の齋藤哲也氏が当たり、令和6年度は空知、石狩、胆振、上川における直播面積の伸びが大きいなど道内の直播事情を報告。その理由として、(1)高齢化・後継者不足による農家戸数の減少(2)圃場が乾きやすくなり田畑の輪換が可能(代かきしないので団粒構造を壊さない)(3)労働軽減で高齢者や女性に喜ばれる(4)基盤整備で大区画化が進む(5)乾直人の存在(技術の確立)―をあげた。
乾田直播の作業体系では、(1)排水(溝掘機、サブソイラ)(2)耕起(プラウ)(3)均平(レベラー)を柱に掲げ、圃場の硬盤の位置の確認、地表面の排水対策、植物のいごこちのよい土壌(=団粒構造)の維持や雑草の抑制効果をあげるプラウによる完全反転(参考として、1年に1回、浅いところ深いところのプラウがけを交互に行った圃場の方が雑草抑制効果が高かった実験結果を示した)、反収向上を図るための圃場の高低差をなくす(あるいは傾斜をつくる)レーザーレベラーの効用を説き、また、ほどよい播種深に関しては、表面に播種後、漏水防止のローラーがけで1~1・5センチにもっていくのが安心などと述べた上で、乾田直播では収穫後から播種までの間に、土壌にどのような手立てを尽くしていくのかが重要だと締めた。
乾田直播作業機のポイントは同社開発本部の波多野篤氏が説明。排水対策では、重粘土土壌など心土破砕後に切り裂き部分が閉じるような圃場では、形成した溝に籾殻を充填していく「モミサブロー」が効果的であるとし、高温障害にはプラウによる深耕と天地返しが有効との新聞報道を示しながら、プラウの正しいかけ方(出入口の反対側から口開けを行い、溝をつなぎ、1回目でできた溝に連数分のシェアポイントを入れ最終連のランドサイドを圃場の角に合わせると自然と適正な角度になるなど)を説明。
また、乾田直播では圃場の均平作業は必須と強調。同社のレーザーレべラーによる±2・5センチの均平精度と表層鎮圧効果により播種の精度が向上し発芽率もよくなると指摘し、直播栽培の決め手は(1)圃場の均平(2)メリハリのある水管理(3)タイミングを逃さない除草剤散布で、(1)は高度な水管理を可能にすると話し、農家の要望を受けたのが新製品の本体制御直装レーザーレベラーだとして、同機の特徴(専用コントローラと油圧パッケージでレベラー本体を制御、トラクタの油圧取り出しの必要がない、中山間地などでも使える作業幅2メートルの新規仕様機を追加など)を説明した。
午後の部では、まず新田実行委員長が挨拶。収量アップのために初心に戻り計画と段取りをしっかりと立て、基本技術を励行することが重要としつつ、「5年ごとの水張政策が見直しとなり、乾直を実行している者にとっては選択肢が広がる。土地条件に応じた田畑輪換でさらに経営を良くしていただきたい」と話し、今サミットの内容の活用を呼びかけた。
また、事務局を務めるスガノ農機の渡邊信夫社長は、4年前から推進してきた直播のニーズが高まり、今では新潟県から情報の提供を求められる時代になってきたと報告。時代に合った形で現場が変化することを期待していると述べ、スガノは何よりも直播の成果につながる製品を開発していくと乾直の進展にも期待を寄せた。
「北斗の乾直」と題して事例報告に当たった冨樫孝氏は、5人の家族労働で49・5ヘクタールに水稲(17ヘクタール、乾直)、秋小麦、大豆、子実コーンを作付け。乾直に取り組んだ理由としては、泥の中に入りたくない、家族労働でできる作業体系、農業機械の共用化、他作物を適期に播種したい、雨の中の田植え作業をしたくない、そして2016年に田植機が寿命となったことを契機に全面乾直に切り替えたと話した。
プラウによる秋耕・春耕から、レベラーによる均平、除草剤散布、中干し、基幹防除、収穫に至る作業体系を示し、昨年の収穫結果は最大8・5俵、最小5・5俵、平均7俵(いずれも10アール当たり)になったと報告。1穂の籾数が少なく、分げつが平年より1本少ない年だったなどと背景、条件をあげながら、乾直のメリットについては、(1)水田転作を組み込んだことで共用できる作業機が増え、機械の費用対効果が上がる(2)転作作物から復田することで肥料費を抑制(3)育苗管理の時間を他の作業に使える(4)適期に他の作物の作業ができる(5)ゴミ上げや苗運びなどの重労働が減る(6)家族労働のみで栽培面積を広げられる―を提示。デメリットは1筆が小さく筆数が多いため管理作業に時間がかかる、圃場条件が合わず栽培が難しい箇所がある、除草しきれず雑草が出やすいなどとし、最近困っているのはイヌビエの発生と明かした。
次いで空知農業改良普及センターの図師拓也氏が、岩見沢市における乾直による稲WCSの動きを話題提供。JAいわみざわ管内の乾直実施面積は急増しており、令和6年は1237ヘクタール、ちなみに美唄は1300ヘクタールで、全道6000ヘクタールのうち4割ほどは空知の中央部が占める。用途別では飼料用と稲WCSが多く、品種は「えみまる」が主流などと説明。稲WSC277ヘクタールのうち7割を生産している生産組織・田藁屋の事例をベースに、栽培内容、収穫体系などを紹介。
「乾直圃場は刈り倒しの時期に圃場が乾きやすく硬いため、牧草、麦稈共用のロールベーラが使える」とした上で、従来の乾直と稲WCSの比較では、後者は8月中旬に収穫するため、秋小麦の播種が可能という点が特徴的と、稲WCSのメリットを強調。今後に向けては、(1)直播向け品種の種子不足が懸念される(2)稲WCS専用品種の育種が望まれる(3)オール北海道のサポート体制づくりが必要としつつ、特に畜産側との対等な連携の重要性を掲げた。









