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令和7年2月3日発行 第3538号 掲載

カーボンニュートラルに取り組む九州電力/農業電化研究会から

 農業電化協会(庄子和博代表理事)が1月31日まで配信していたオンデマンドによる第60回農業電化研究会の中から、九州電力(株)エネルギーサービス事業統括本部営業本部の榊原紀孝営業部長が講演した「農業分野のカーボンニュートラル実現~キーワードは電化による付加価値~」の概要をみる(地区研究発表については昨年12月9日付既報)。
 榊原氏は、国内外のカーボンニュートラル(以下CN)の動向、九州電力のCN実現に向けた取り組み、産業部門のCN、厨房のCNなどに触れた後、農業分野でのCNへ向けた取り組みとして、ハウスの加温は現状ではほとんど化石燃料となっており、電化率は約6%だが、同社ではこれを2030年度までに10%まで向上すべく活動を行っていると説明。佐賀県のJA唐津で導入したミカンのハウス栽培におけるハイブリッドの事例「ヒートポンプで一歩先行くハウス栽培(唐津ハウスミカン)」を動画で紹介し、A重油が高騰した平成20年代に経費抑制策として地域でヒートポンプ(以下HP)を導入した成果を示した。
 HPについては、正確な温度管理をしながら光熱費を削減でき、効率的に温めて脱炭素にも貢献するとし、榊原氏は、HPによる夜冷による色つき、糖度向上など付加価値の大きさが分かると解説し、他の事例では湿度管理による害虫発生面での成果を指摘する農家もいたと報告。
 同社総合研究所では、脱炭素化及び電化推進への対応として、九州の施設園芸で栽培が盛んな作物を対象に、農業用HPの導入促進を目指し研究を進めており、具体的には次の取り組みがある。
 ▽ハイブリッド(HP、燃料加温機)=(1)トマトの周年利用技術(2020~2023年度)。実施場所はJAやつしろ管内(熊本県八代市)。検証項目は夜冷による増収、暖房コスト低減(2)ナスの周年利用技術(2022~2025年度)。実施場所は農林業総合試験場筑後分場(福岡県大木町)。検証項目は(1)と同様。
 ▽オール電化ハウス=イチゴの植物工場に関する研究(2019年度~)。実施場所は福岡県内の同社実証施設「上寺いちご園」(朝倉市上寺)。検証項目は、統合環境制御による高度生産技術の確立、収益性のある事業モデルの構築。
 榊原氏は(1)について、既存の重油加温機のみの既存ハウスを対照区として比較し、試験は2020年度~2023年度の3作で実施。HPは冷房もできるため、夜冷の効果がどの程度あるかの検証も併せて行ったと述べ、ハイブリッド運転に関しては、エネルギー効率の良いHPを優先的に運転し、低温時には加温機と併用運転する方法で、加温機の稼働を極力減らすことで重油使用量の削減を図るとともに、光熱費が燃料価格変動に左右されにくくなるメリットがあると説明。加えて加温機のある既存施設にHPを追加設置するため、設備投資を抑制することができるメリットがあり、国の補助対策が充実しているとも。
 CO2排出量の削減効果では、10アール当たり換算でみた場合、HP+重油暖房機のハイブリッド運転は、重油暖房機のみの暖房と比較し25%減という結果が出ている。また、付加価値とみている夜冷による収量の増収効果については、HPで冷やすことができるため、育苗時の夜冷と栽培時の夜冷を行い、育苗時の夜冷では最大15%の収量増となり、根張りの充実で苗の品質向上にも寄与。栽培時の夜冷効果としては10%収量が増加し、通常は20段くらいの栽培がプラス2段の生育ができた。
 暖房コストの削減効果は、重油単価が106円/リットル以上で削減効果が出てくるとみており、今回の実証では、エネルギー使用量が少なかったため、重油単価87円の条件で4万3000円のコスト増となったが、それでも増収による販売の増額で年間の収益増額は10アール当たり13万7000円となった。
 トマト以外のピーマン、マンゴー、キク栽培の実績をみると、CO2の削減効果はハウスの設定温度が高いピーマン、マンゴーは約20%の削減効果があり、他方、キクのように設定温度が低い作物はかなり大きな削減効果がみられる。ただし電気が全部グリーン電気になれば、CO2の削減効果はさらに大きくなる。光熱費の削減では、暖房効果が大きくなるほど削減率は大きくなる。
 九州電力では、地域活性化に向けたプロジェクトを種々進めており、「遊休地への農業法人誘致による地域活性化」では、自治体に遊休地の誘致や補助金の助成などをもらい、農家の支援を行いながら新しい農業法人を誘致する。九州電力はエネルギー面、CNのコンサルを進めるという図式になるが、(株)誠和の力を加え、九州各地にこのプロジェクトを広げていきたい考えている。
 また、榊原氏は、農業者から質問の多い「HPを導入すると高圧電力契約になるのではないか。メリットがなくなるのではないか」に対する回答を示し、使用電力が50キロワット以上になる場合は高圧電力契約が必要で、契約すると電圧が6000ボルトで供給され、利用者側は受電設備(キュービクル)を設置して100ボルト、200ボルトに変圧する必要があると説明。キュービクル設置に関しては、省スペースで設置できる方法があり、HPに必要な動力用の三相の電源だけでなく、電灯用その他の電力も取り出せる便利なキュービクルもある。さらにHP何台まで低圧電力契約でいいのかについては、作物により異なるが、20アールハウスでハイブリッド運用した場合、5キロワット×8台までが1つの目安と説明した。

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